2010年01月28日
今回の試写は、「鬼平犯科帳」と並ぶ池波正太郎原作の人気時代劇「剣客商売」。近年はスペシャルドラマとしての放送で、今回は2年ぶりの登場。主演の藤田まことをはじめ、山口馬木也、寺島しのぶ、小林綾子、梶芽衣子ら、いつものメンバーが顔を並べる。ゲストに中村梅雀を迎える。
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映画やドラマの人気シリーズは、長寿になればなるほど、主人公の年齢とそれを演じる役者さんの実年齢が開いてきて、ちょっとつらいなと感じることがある。時代劇の場合は、殺陣もあることだし、青年からせいぜい中年というヒーローが多いはず。そういう心配がいらないといえば、いつまでも生き続ける「水戸黄門」とか、現役を引退してしまった「慶次郎縁側日記」とか…。そして、これ。「剣客商売」。
主人公は老剣客の秋山小兵衛。原作ではものすごく長寿なので、年齢は全く気にしなくていいどころか、高齢であるほど、ぴったりはまる。藤田が主演するこのシリーズは、1998年から2004年の第5シリーズまでは連続ドラマとして放送、以後はスペシャルドラマとしてファンの声援に応えている。だから10年余りの時間が経過しているのだが、老境に入ったであろう藤田の姿に何の違和感もない。
周囲の顔触れもおなじみ。うらやましいほど年の離れた女房おはるの小林、息子大治郎の山口、その妻三冬の寺島…。懐かしい面々が次々と登場して喜ばせてくれる。
ゲストは中村梅雀。これがいい。タイトルの「道場破り」とは、この人の演じる剣客・鷲巣見平助。妻子を残し武者修行に出て20年、江戸に戻ってみれば妻は病死し、娘(星野真里)は嫁いだものの病気で寝込んだ夫と赤ん坊を抱えて悪徳医者の借金に苦しむ生活。
神社に住み込んで清貧の生活を送る平助だが、娘の苦境を救うために道場破りを繰り返す。ただ、父親を恨んでいる娘の前に名乗って出て金を差し出すこともできず、ふと知り合った小兵衛に協力を求めることに。
この平助の人間像が、素直でさわやか。周りの人たちからも親しまれて、ある種、人間の生き方の目標ともいえそう。それが一転、刀を握ると、堂々とした存在感。この対比が素晴らしく、それを演じる梅雀の力量を見せつけられた。ドラマでは時として演技過剰を感じることもあるが、ここは抑制も利いて申し分なし。常連の登場人物たちとの絡みも楽しい。
常連の中では、息子の大治郎が注目。まじめな優等生というタイプなので、原作の段階から面白みに欠ける嫌いがあるのだが、今回は別。平助との立ち合いや、大詰めの立ち回りは、圧倒的な気迫で、内面の心情までがあふれんばかりだ。木刀を青眼に構えただけで見ている方がしびれてしまう。登場人物の一人ではなく主演と言っていい。
もう一人、触れておかなければいけないのが、悪徳医者を演じる温水洋一。バラエティー番組にも引っ張りだこで、人の良さが前面に出ている温水サン。それがこの役どころでは、目つきから体の動きまで、憎々しい限り。やっぱりプロだなあと感心してしまう。温水サンのファンは見逃せないでしょ。それだけに、悪徳医者の部分が前半であっさり終わってしまうのは、ちょっと惜しい。
見どころたっぷり、完成度も高いお薦め時代劇なので、欠点も見つけにくいが、あえて細かい部分にこだわれば、ないわけではない。好演というか熱演の星野。両手のきれいな指がアップで映るシーンがあるのだが、あれ?爪が長い。貧乏長屋暮らしのおかみさんでしょ? カメラアングルで何とかならなかったかな。何を重箱の隅をほじくるようなことを、と言われそうだが、これまでも時代劇製作者は、電柱が映らないように、飛行機の爆音が聞こえないように…と、苦労してきたのではなかったか。
(小松美知雄)
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番組公式サイト→「剣客商売スペシャル 道場破り」








