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未来を育む アニメの森から

夏公開 2作品の監督対談 「人間や自然に迫る」 「理想そのまま形に」 対談する杉井ギサブロー監督と細田守監督=東京都内
  • (c)2012「おおかみこどもの雨と雪」制作委員会
  • (c)2012「グスコープドリの伝記」制作委員会/ますむら・ひろし

アニメの魅力と可能性

今夏公開のアニメ映画「グスコーブドリの伝記」の 杉井 (すぎい) ギサブロー監督と、「おおかみこどもの雨と雪」の 細田守(ほそだ・まもる) 監督が対談し、実写とは違った方法で理想を描き、現実の問題に迫るアニメ表現の魅力と可能性を語り合った。

現実に向き合う

杉井 ギサブロー 二つの作品に共通しているのは、子育てや 飢饉 (ききん) という現実的な題材をファンタジーとして描いていることです。

細田 守 現実の子育てには大変な事がたくさんある。「おおかみこどもの雨と雪」では、「お母さんっていいな」と憧れてもらえるように、子育てを徹底して理想的に描きたいと思いました。

子育て

杉井 「グスコーブドリの伝記」でも、そこは真剣勝負。東日本大震災があり、今の時代はもう一度本気で、自然の中で人間がどう生きていくのかを考えないといけない。「おおかみこども」では、母親が命懸けで命をつなぐ姿を描いていますね。

細田 主人公の 花 (はな)が隠れて一人で子育てをするため、新しい土地に移り住む場面があります。でも一人では子育ても生きることもできず、みんなで協力して寄り添って生きる。そのことが今、とても大事だとあらためて気付かされました。震災前には、一人で生きていける社会だという気がしていたのです。アニメ映画の可能性はとても大きく、まだ何も表現されてないぐらいですよね。

杉井 アニメならではの現実の問題の伝え方がある。「グスコーブドリ」でいうと、飢饉で何カ月も食べていない主人公は、もっとやせていないといけない。でも、そうい

おおかみこどもの雨と雪
©「おおかみこどもの雨と雪」制作委員会

う表現はアニメ的だと思わない。リアリティーだけを求めるのでなく、もっと違う伝え方に挑戦していかないと。

命って?

「グスコープドリの伝説」
©2012「グスコープドリの伝説」制作委員会/
ますむら・ひろし

細田 飢饉をドキュメンタリーで描く手法もあるが、幻想的なアニメの世界で過酷さを描くからこそ、その怖さが恐ろしいまでに表現されている。調べたことをそのまま写実的に描くのでなく「表現」にまで力強く飛躍しないと、真実に到達できないと思います。

杉井 「おおかみこども」では、子どもたちが人からオオカミに変身する場面がある。

実写の合成でなく手で描くことで、生っぽさが出ずに違和感なく見せている。

細田 理想をそのまま形にでき、その理想が本当にあるかもと思わせてくれるのがアニメの魅力。ただ、その中に真実を見つけてもらうのは相当難しい。ぎりぎりのところを通ってやっていて、一歩間違うと「ばかばかしい」だけになってしまいますから。

杉井 アニメは、そこが一番難しい。技法はアニメだけど「人間、命、自然って何?」ということに迫れるかどうか。分かりやすいだけの作品ではなく、若い観客を信じて、見終わった後に「どういうことなんだ」と考えてもらえる作品を届けていきたいですね。(敬称略)

杉井監督経歴と作品紹介

すぎい・ぎさぶろー 1940年、静岡県生まれ。代表作にテレビ「タッチ」、映画「銀河鉄道の夜」。 宮沢賢治 (みやざわ・けんじ)
原作「グスコーブドリの伝記」は、冷害による 飢饉 (ききん) で家族を失ったブドリ(声・ 小栗旬)が主人公。火山局で働くようになるが、冷害が再び発生し、ブドリはイーハトーブに暮らす人々を守るため、ある決意をする。

杉井ギサブロー監督

細田監督経歴と作品紹介

ほそだ・まもる 1967年、富山県生まれ。代表作に映画「時をかける少女」「サマーウォーズ」。最新作「おおかみこどもの雨と雪」は女子大学生の花 (はな) (声・ 宮崎あおい)をめぐる物語。おおかみおとこと出会い、おおかみこどもの「雪」「雨」を授かる。周囲に助けられ大自然の中でたくましく子育てをする花と、2人の子どもの成長と自立を描く。

細田守監督