―イタリア留学時代は、どうでしたか。
秋川:イタリアという国にあこがれて「イタリア人になりたい」ぐらいの気持ちで行ったんですよね。日本人コンプレックスを持っていたわけですよ。でも、4年間住んで帰国して思ったのは「自分は日本人で良かったな」と。イタリアのいい所はいっぱい見たんですけれども、日本人に生まれて良かった、日本って素晴らしい国だと感じられたのが1番の収穫。留学がなかったら、今でもイタリアにあこがれながら音楽をやってたかな。
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―現地で生活をして、イタリア人と自分との違いを感じたと?
秋川:そうですね。物の見方、考え方はやっぱり違うし。自分がイタリア人の感覚でイタリア人と仲良くなろうとしても、なかなか仲良くなれないんですよね。だけど、自分は日本人だという感覚で接すると、すごくフレンドリーになれる。まあ「イタリアの良さも十分勉強したので、日本でいろんな歌を歌っていこう」と、気持ちが切り替わったかな。
―秋川さんは、日本のスタンダードになった曲をテノールという手法で伝えていこうとする。それは新しいけど、勇気のいることじゃないかな。
秋川:割と自然にやってきた感じなんです。パバロッティら3大テノールと言われる人はオペラの世界では世界トップ級と言われ、純粋なクラシックも歌いながらも、そうじゃないコンサートを開いたりしているので。
―お父さんの秋川暢宏さんもクラシック畑の方で、声楽をされています。その影響は…。
秋川:おっきいです。3大テノールのような人たちを追っかけながら勉強してきたけども、自分の中での世界一のテノールは、やっぱり父親なんですよね。物心がつく前から父親の歌声をずっと聞いてる。父親の背中はパバロッティほど大きくはないけれど、テノールとしての存在というのはパバロッティ以上、世界一かなと思います。
―幼いながらに、お父さんの歌う姿を記憶していると。
あきかわ・まさふみ 1967年生まれ、愛媛県出身。国立音大、同大学院で声楽を学び、イタリア留学。2001年デビュー。米国に伝わる詩に作家新井満さんが訳とメロディーを施した「千の風になって」を歌い、同曲は昨年最も売れたシングルCDになった。NHK紅白歌合戦2回出場。
秋川:うーん、ほんとにうまいなあ、って思ってましたね。家でよく、世界のオペラ歌手のレコードを父親が聴いたんですよ。そこから流れてくる声と父親が歌う声とを聴いて「レコードの方がうまい」とは思わなかったですよ。
―そうすると、常に父が目標であったと。
秋川:歌を始めたときに、どうやったら父親みたいにうまく歌えるだろうって思った。それが知らず知らずのうちに、父に追いつこうとか、追い抜いたとかいう感覚もなく、父は父の音楽で、自分は自分の音楽となった。音楽面で父親から自立したんでしょうね。父親は親に反対されながら音楽の道に進んだ人なんですよ。そういう情熱をずっと見てて、自分も音楽が好きになっていったんだろうなあと思います。


