「私のお墓の前で泣かないでください…」。昨年、この歌を何度テレビや街頭で耳にしたことだろう。秋川雅史さんがテノールで朗々と歌う「千の風になって」は、大切な人を亡くし、傷ついた日本中の人々の心を癒やした。
クラシック歌手として史上初のミリオンセラーを記録し、「地上の星」「見上げてごらん夜の星を」などの名曲をカバーした新作アルバム「千の風になって~一期一会~」を発表した〝アキ様〟が、歌やファッション、尊敬する父への熱い思いを語った。(聞き手・田澤穂高、写真・藤原実、映像ディレクター・東野聡)
―新作のタイトルにある「一期一会」という言葉に込めた思いは。
秋川:一瞬一瞬を大切にしたいと。今起きていることは2度とない。コンサートで、同じホールで同じお客さんであったとしても、2回やったら2回とも違うものになるし。
―昨年は「千の風になって」がものすごいインパクトで社会に浸透していったんですが…。
秋川:涙を流しながら聴いてくださる方が非常に多かった。この曲を歌う責任を強く感じるようになってきましたね。
―秋川さんの、あの声がなければ、歌がここまで広がらなかったんじゃなかったのでは。
秋川:あの曲と秋川の声との相性がすごく良かったということはあると思います。前向きなエネルギーになる曲ですよね。ほんとに壮絶な経験をされた方から「この曲を聴いて、生きていく勇気がわいてきた」っていうお手紙をいただくと、歌で社会貢献できてるなって、実感がわきました。
―歌う秋川さんの歌でもあり、聴く方それぞれの歌でもあり、と。
秋川:聴く人の目線で音楽を表現していこうと思っているんです。「千の風―」を歌うときは、どういう風に表現すると歌詞がストレートに人の心の中に入っていくだろうかっていうことをすごく考えましたね。この曲の、この詞のあるべき姿っていうものを届けていく。で、聴いてくださる方がそれぞれの解釈をしてほしい、というのが、自分のスタイルだと思っています。

―アルバム収録曲「ワインレッドの心」を、なぜ選んだんですか?
秋川:この曲をオペラティックによみがえらせてみたかったんですよね。「ワインレッドの心」は安全地帯の玉置浩二さんが歌ってるイメージが強いので、テノールの秋川とのイメージのギャップはあると思うんですよ。だけど、この曲のメロディーや詞の内容は、実はすごくオペラティックと自分は感じてて。オーケストラをバックに、どんどん後半に向けて情熱を燃やしていくと、すごくかっこよくなるんじゃないかなと思いました。
―オペラティックなものとは?
秋川:そうですね。情熱とか、男の色気とか、セクシーさみたいなもの。オペラっていうのは一つのドラマなので、ドラマのある詞は歌い手にとって表現する幅がある。このアルバムは曲順にもこだわりました。聴いてくださる方は、まず聴く前にトイレに行き終えて、コンサートを聴くようなつもりで通して聴いてほしいなと思いますね。
―つまり、このCDはライブのような展開になっていると。
秋川:はい。起承転結があって、どんどんドラマが進んでいって、最後に結末を聴いて「ああ、よかった!」と思えるものですね。




