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 ロシアの女性テレビ司会者で、プーチン政権批判を続けてきたクセーニヤ・サプチャクさん(35)が18日、テレビ番組で、来年3月の大統領選への出馬を表明した。クセーニヤさんと言えば、サンクトペテルブルク市長時代にプーチン大統領を第1副市長に起用し政界進出のきっかけをつくった故アナトリー・サプチャク氏の愛娘で、著名な父を持ちながら若いころは数々のトークショーやバラエティー番組に出演、ロシアのパリス・ヒルトンとも称されるなど、そのセレブぶりを発揮してきた。

 ロシアでは著名な人物だけにそれなりの話題を集めるだろうが、はっきり言ってプーチン氏の再選が確実視される大統領選での当選の可能性はゼロ。むしろ、選挙を茶番としないための「当て馬」として、クレムリンが出馬を促していたとの報道すらあり、結果的にプーチン氏の選挙戦略を利するだけに終わりそうだ。

 ▽男性遍歴

 クセーニヤさんは改革派として初のサンクトペテルブルク市長となったサプチャク氏と、社会活動家のナルソワさんの間に生まれ、外交官などのエリート養成校であるモスクワ国際関係大学を卒業し将来が約束されていたが、なぜか芸能界に転向。リアリティーショーに出演し「やらせ」を指摘されたり、数多くの男性遍歴を語ったりするなど「尻軽」との評判がつきまとい、法律家出身でエリツィン元大統領らと共に旧ソ連体制と戦い、大学でプーチン氏を教えていたこともあるサプチャク氏を信奉する人々を嘆かせた経歴を持つ。

 2011~12年には、下院選不正疑惑をきっかけに始まった大規模な反政府集会に参加。プーチン氏を激怒させ、圧倒的な影響力を持つ政府系テレビから出入り禁止を食らい、以後、野党系のメディアにしか出演できなくなったとされる。12年には同せい相手の野党指導者をかくまっていた疑いでモスクワの自宅を捜索され、100万ユーロ(約1億3000万円)以上の現金を押収されるなど、「庶民の味方」とはほど遠い姿も浮き彫りになった。

 ▽スパーリングパートナー

 今年9月1日付主要紙ベドモスチによると、ロシア大統領府は結果が決まっている大統領選への関心を高め、茶番劇だとの批判を招かないように、「プーチン氏のスパーリングパートナーとして」世間で名の知れた女性の立候補を促すことを計画。その一人としてクセーニヤさんの名前が挙がった。当時、クセーニヤさんは「今の政治は退屈な、くそ。面白くないしおぞましい」と、出馬の噂を完全に否定。プーチン政権批判を続け大統領選出馬を目指したが今年2月に横領罪などで有罪判決を受け、中央選管から被選挙権がないと認定された著名な野党活動家のナワリヌイ氏も「おぞましいクレムリンのゲームに乗せられないよう」、出馬しないよう呼び掛けていた。

 それが、急に出馬の意向に傾いた理由は不明だが、反体制の雑誌「ニュー・タイムズ」ウエブ版は、クセーニヤさんの出馬をいち早く伝えた上で、「当て馬として出馬することの見返りに、政府系テレビへの出演再開、さらには国営通信社グループ『今日のロシア』の経営への参画を打診された」と報じた。

 ▽蟻塚

 反政権のニュースサイト「メドゥーザ」などによると、セレブとしての「軽い」イメージが選挙戦に悪い影響を及ぼさないかとの質問にクセーニヤさんは「私は(幾層にも生地が重なったロシアで有名なケーキ)『蟻塚』みたいなもの。(良いこと、悪いこと)いくつもの層からなっているが、これが私」と強調。一方で、政治綱領や公約などは発表しておらず、出馬の理由について「プーチン氏や共産党のジュガーノフ候補などすべての政治勢力に反対する」と述べるのみ。過去にも「権利のための闘いは面白いかもしれない」として、若年層を対象とした政治運動組織「全てが自由」を立ち上げると発表しながら、何の行動も起こさなかった。世論調査の「反感を持つ人物」指数でも常に高得点をマーク。「選挙への参加は彼女にとり、政治ショーにすぎない」(友人)との声もある。実際に出馬のための手続きを取るかどうかも疑わしい。

 ロシアでは9月10日、統一地方選が行われ、直接投票の知事・首長選が行われた15地域全てで、政権与党「統一ロシア」の候補が勝利するなど、政権側への支持は揺るぎそうもない。出馬したとしても、富裕層、中間層が多く比較的リベラルなモスクワなど大都市では一定の票を獲得する可能性はあるものの、近く大統領選への出馬を正式に表明するとみられるプーチン氏の相手となる玉ではない。 (47NEWS編集部 太田清)

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