親子2代の肖像。「僕が息子ぐらいの歳のころは夢中でやってましたよ」と先代の柳井利和さん(左)

フローリングが主流の今も、人々の暮らしの中に確かに息づいている日本独自の文化。写真家の荒木経惟さんが、伝統的な作りを続ける職人の仕事ぶりを撮った。

 東京・池上の一角にある創業90年以上の柳井店。作業場のガラスドアは全て開け放たれ、イ草の香りが通りに漂う。

「いいねえ。俺の少年時代と似てる。職人さんが道端でを縫ってて、そばで見て、針を持たせてもらってさ。格好良かったなあ」

 「今も子供たちが入ってきますよ。『おやつまだ~』って」と笑うのは3代目の柳井博さん。機械化が進む中、ほとんどの工程で針による縫い付けを行い、床も昔ながらの稲わらにこだわる。タコだらけの指に気付いたアラーキー

「いい指してるよ。それに職人さんの顔になってる。指と顔、撮ろうよ」
 

 東日本大震災では、各地の職人たちが組合を通じ、避難所に身を寄せる人々の元にたくさんのを届けた。博さんもその一人。

「柔らかさとか、香りとか、は心が安らぐものだから」

 先代の父利和さんも顔を出した。まだまだ現役の職人。「おやじでなきゃだめってお客さんも多いんです。僕なんかまだ小僧だって」と博さん。

「よし、親子のポートレートだな。ビシッと決めよう。オッケー、グッ!」

代々受け継がれてきた文化は、いつだって人々の暮らしとともにある。

柳井畳店の畳を使っているご近所の親子。「やっぱりゴローンが気持ちいい!」

3代目の柳井博さん。畳の縫い付けも表情もキリリと締まる

通りに開かれた作業場。自転車の少年も興味津々