川崎/旅芝居一座(下)
劇団颯(はやて)の開演まで間もなく。でも、外はあいにくの雨降り。座長の颯馬一気さんの次男、一斗さんも客足が気になる。舞台の袖から客席の様子をそっとうかがうと、開演を待つお客さん同士が世間話に花を咲かせている。ひいきの客の顔も見つけた。一斗さんもひと安心。気持ちは舞台へとはやる。
アラーキーが写真機を向ける。
よし決めろ
一斗さんの表情が役者の顔に切り替わる。
いいぞ、決まってる。グッ、オッケー
幕の向こうから客席のさざめきが伝わってくる。
行こう、客席に
アラーキーも、はやる気持ちを抑えきれない。



