2013/08/22 ICHIGAYA

市ケ谷/釣り堀

デートで釣り堀にやってきたカップル。「いいねえ、東京のコイ(恋)を釣るってね」とアラーキー

東京のど真ん中、JR市ケ谷駅のホームからも見える「市ケ谷フィッシュセンター」の釣り堀は、街の喧噪がうそのようにゆっくりと時間が流れる。写真家の荒木経惟さんが、都会の「オアシス」を撮った。


 江戸城外堀跡にかかる市ケ谷橋のたもと。平日の夕方にもかかわらず、釣り堀ではお年寄りから学生まで多くの人がのんびり糸を垂れていた。数分おきに行き交う中央線の電車。駅ホームに並ぶサラリーマンの姿も見える。「不思議なとこだよなあ。都会の真ん中でさ。ほら、水面にビルが映ってる」


 狙うは釣り堀ならではの大きな鯉。次々釣る人がいれば、全く当たりがない人も。仕事が休みで彼女とデートに来た男性(22)は「なかなか釣れないんですよね。でもそれもまたよくって」と笑顔。アラーキー「いいね、これぞ市ケ谷のコイ。うまくかかればコイの駆け引き、コイの手ほどき、ってな」。


 初老の男性は「釣れない時はずっと水面を見てる。もう禅の世界、無の境地ですよ」。 アラーキー「でもほら、ふとよぎるんじゃない? 過去のこととか、いろいろさ」と水を向けると苦笑い。そう言えば、どこか哀愁を漂わせる背中が、あちらにも、こちらにも。


 取材を終え、駅のホームから釣り堀を眺めた。スーツ男性の視線の向こうで水面が輝く。

「やっぱりこういう場所が必要なんだよ。都会にはさ」

水面にビルが映る

哀愁漂う背中と鳩

ホームの背中越しに「オアシス」が見える