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  • 『追悼文大全』共同通信文化部編 著名文化人を悼む770編 

      【共同通信】

     

     考えてみてほしい。あなたが大切に思っている人、敬愛している人がこの世を去った時、その人に寄せる言葉をあなたはどんなふうにつづるだろうか。故人が世に遺した足跡が大きければ大きいほど、その人への思いが深ければ深いほど、言葉との隔たりは大きい。その隔たりを埋めるべく意を注ぎ、心と技を尽くして刻まれた言葉の束が追悼文である。

     共同通信社が平成の27年間(1989年から2015年まで)に配信した国内外の著名な文化人(作家、俳優、映画監督、音楽家、美術家ら)の追悼文約770編を年代順に収録した。執筆陣は約460人。3段組で864ページ。こうした企画では空前のスケールである。

     順不同に読んでいくと、心衝かれる言葉に幾度も出くわす。それぞれ訃報の直後に書かれているため、悲嘆と無念、感謝と称揚の思いが響き合っている。故人が時代に果たした役割を正確に定めようとする一文もあれば、慟哭に似た生々しい一文もある。

     あらためて知るのは悼む言葉の深さだ。故人の生前の活躍と思い出をつづる筆致は力強く華やぎに満ちながら、全体は喪失の痛みと静けさをたたえている。書き手の粛然たる気構えが伝わって、時に率直な告白のように聞こえることさえある。私はあなたを好きだった、心から尊敬していた、あなたは本当に立派だった。告白の相手はもういない。だからその言葉は宙に浮かんで凍結する。

     いくつも引用したくなる。それも全文を引用したくなる。どうにも読み飛ばすことができない。

     (三省堂 7400円+税)=片岡義博