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  • 人種でプレーする競技に偏り 米国のプロスポーツ事情


     本塁打競争に出場したドジャースのケンプ=カウフマン・スタジアム(共同)

     ロサンゼルスで、メジャーリーグのドジャース対エンジェルスの「フリーウェイ・シリーズ」を取材してきた。

     両軍ともにポストシーズンへの視界は良好、ロサンゼルスでは「ワールドシリーズでの再戦を!」と期待が膨らんでいた。

     ドジャースにはメジャーを代表する左腕クレイトン・カーショーがいて、エンジェルスでは22歳でオールスターのMVPを獲得したマイク・トラウトがプレーし、千両役者には事欠かない。

     もしも、ワールドシリーズでの対決が実現したとしたら、大いに盛り上がることだろう。

     今回、興味深かったのは、ドジャースの主砲マット・ケンプの高校時代の話だった。

     オクラホマ州出身のケンプが野球でずば抜けた能力を持っていたのは当然だが、高校のバスケットボールチームは一時、全国で3位にランクされるほどの強豪校だった。ケンプは1試合平均20点ほどマークするポイントゲッターだった。

     実は、野球をプレーすることは友人たちから「ダサい」と言われていたという。

     「オクラホマは基本的にフットボールの州。ただ、俺の中学から高校時代にかけてはNBAではマイケル・ジョーダンの全盛期で、バスケットボールをプレーするのが“クール”だった。野球なんて、退屈だというのがみんなの言い分でね。でも、俺は野球の方で成功する可能性の方が高かった」

     昨今、メジャーリーグでは黒人選手の割合が激減している。そのかわり、ドミニカ、ベネズエラ、そしてここ2、3年はキューバ出身の選手たちの活躍が目立っている。

     アメリカで生まれ育った黒人選手たちは、瞬発力、パワーといった身体的な特性をより効果的に生かせるバスケットボール、アメリカンフットボールに流れる傾向がはっきりしている。

     アジア系アメリカ人に目を移すと、NBAではハーバード大学出身で台湾系アメリカ人のジェレミー・リンの活躍が話題になったが、彼にしても大学進学時には有力大学から奨学金のオファーがなかった。

     アメリカのメディアでは、「アジア系ということで大学のコーチには偏見があった」と分析されている。

     アジア系の選手たちは、バスケットだけでなく、アメリカンフットボールでも競技を続けるために並々ならぬ努力を強いられる。

     その点、メジャーではハンク・コンガー(エンジェルス)、カート・スズキ(ツインズ)のように、アジア系の捕手が活躍している。

     アメリカのプロスポーツでは人種の融和がいち早く進み、それが社会的にも大きな意味を持った。しかし、皮肉なことに21世紀に入ってからは、人種ごとにプレーする競技に偏りが見られつつある。

     ケンプは言う。「それでも、みんなに流されずに野球をやって良かったよ。ドジャースで成功することができたしね」

     今後、アメリカでどんな変化が起きていくのか注視していきたいと思う。

    生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル

     1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBSのスポーツ番組ではキャスターを務めている。

      【共同通信】