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  • 『チスル』 社会派映画に宿る詩情とユーモア 


     (C)2012 Japari Film

     現在、ウクライナ情勢が米ソ冷戦時代の再燃を危惧されているけれども、この先クリミア半島で本作のような悲劇が起きないことを願うばかりだ。舞台は、世界遺産にも登録されている韓国の済州島。第2次大戦直後、朝鮮半島が南北に分断される過程で起きた、米軍とその統治下にある韓国軍や警察が島民を無差別虐殺した“済州島4・3事件”の映画化である。

     監督は、済州島出身の新鋭オ・ミヨル。約7年の間に3万人以上が犠牲となった(しかも大半が政治やイデオロギーとは無縁の人々)にもかかわらず、長い間歴史上のタブーとされてきたこの事実を世に広めたいという強いメッセージが、全編にみなぎっている。けれども本作が、サンダンス映画祭などで国際的な評価を勝ち得ている理由は、そのメッセージ性故ではないだろう。背後に当時の米ソ対立や反共産主義問題があるとはいえ、所詮は韓国史上の出来事なのだから。

     注目してほしいのは、本作に宿る詩情とユーモアである。例えば冒頭の、急斜面にある狭い穴に次々と人が加わるシーンの軽妙さと緊張感の相克。あるいは、外をうかがう人物の顔に差し込む日差しの美しさ。霧や煙が生む効果…。確かな技術と芸術性の裏付けがあって初めてメッセージは世界に届く!というお手本のような社会派映画である。★★★★★(外山真也)

     【データ】

    監督・脚本:オ・ミヨル

    出演:ヤン・ジョンウォン、イ・ギョンジュン、ソン・ミンチョル

    3月29日(土)から全国順次公開

      【共同通信】