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  • 子育てさがし 近藤博子さん 商店街で「ワンコイン寺子屋」


     八百屋店主の近藤博子さん

    ◎子どもの学び地域で見守る

     東京都大田区の商店街で無農薬野菜を販売する八百屋「だんだん」の店主近藤博子さん(50)は、毎週土曜日の夕方、店の一角を子どもたちの学習の場として提供している。1時間500円の授業料で、ボランティアの講師に見守られながら勉強するユニークな「ワンコイン寺子屋」。「勉強だけでなく、子どもたちと地域がつながる場にしたい」と考えている。

     ▽八百屋で勉強?

     「だんだん」は奇妙な空間だ。店のつくりは数年前に閉店した居酒屋のままだが、カウンター席には新鮮な野菜や自然食品が並び、6畳ほどの小上がりでは、子どもたちがノートや参考書を広げる。それをのぞきこむ4人の講師のうち、プロの塾講師はリーダーの河合良治さんだけ。そのほかは20代の派遣社員から70代の元音大講師まで、年齢も職業もさまざまだ。

     「寺子屋を始めたのは、昨年の夏休み、高1の娘の勉強について河合さんに相談したのがきっかけ。ちょうどいい空間だからと、ここで教えてもらうことになりました。肝心の娘はほとんど参加しませんでしたが、地域の子どもたちに好評で、夏休み後も続けることになり、うわさをきいてボランティアが集まってくれました」

     子どもたちは、それぞれが自分で決めた勉強に取り組み、アドバイスがほしい時に講師に質問する。

     「受け身の勉強ではなく、自分がわからないことを人に伝えるのも大事だと思います。学力低下と言われる中、高額の授業料を払って遠くの学習塾に行かないと勉強できないなんておかしい。地域の大人にもできることがあります」

     ▽大人も子どもも

     寺子屋に来るのは小学生から高校生まで8人前後。子どもたちに混じって、分数の計算問題に向かう73歳の女性の姿もあった。

     「子ども時代、戦争や家の手伝いで勉強できなかったことを悔やんでいて、ここにいらっしゃるようになりました。さまざまな年齢が一緒に勉強するのも寺子屋の魅力です」

     4月からは平日も週3日、子どもたちが学校の宿題などをする「みちくさ寺子屋」として、小あがりを無料で開放。勉強に飽きた子どもたちは、店の前の路地で、ごっこ遊びやプランターで育てた野菜の収穫を楽しむ。

     「わたしも子育てをしながら仕事をしていたので放課後の子どもの居場所の必要性はよくわかります。最近は寺子屋を開いていない時にも『おばちゃん、お茶ちょうだい』と入ってくる子がいる。昔は地域にこういう場所がたくさんあったんでしょうね」

     ▽おやつはキュウリ

     そんな「寺子屋のおばちゃん」の本業は、意外にも、歯科衛生士。大手企業の診療所に20年以上勤務した経験もあり、現在も月に数回は保健所の歯科健診や保育園児の歯磨きボランティアを行う。

     「長年口の中を見てきて、食生活の乱れが気になっていました。歯のためには、歯磨きよりも、夜中に甘い物を食べるような習慣を改めるほうが大切。でも、例えば、保育園で『おやつは甘くなく、かみごたえがあるものを』と言っても、お母さんたちは何をあげたらいいか悩んでしまうんです」

     「正しい食生活に気づいてほしい」という思いが募り、2008年に企業を退職、産直野菜の販売を始めた。当初は注文を受けて配達するだけだったが、店頭でも買いたいという地域住民の要望を受けて昨年4月に開店したのが「八百屋・だんだん」だった。新鮮なキュウリやトマトは、たらいで冷やし、寺子屋に来る子どもたちのおやつにも振る舞う。

     「取り合うようにして食べてくれます。アイスやお菓子にはない野菜のうまみを知ってもらえるのが嬉しいです」

     「だんだん」は、出身地島根県の方言で「ありがとう」の意味。すべての人や物への感謝とともに「ここからだんだん人と人の温かいつながりが広がるように」との願いがこめられている。

     近藤博子(こんどう・ひろこ)さん 1959年島根県生まれ。高校卒業後に上京、歯科医宅に下宿しながら専門学校に通って歯科衛生士の資格を取得した。企業の診療所勤務などを経て、09年4月に商店街の空き店舗で「八百屋・だんだん」を開店。長男(22)を筆頭に1男2女の母。今年3月に初孫が誕生した。

      【共同通信】