兄の形見「僕が背負う」 ランドセル、小1弟へランドセルは亡くなったお兄ちゃんから阪神大震災後に生まれた弟に受け継がれた。「僕が背負っていく」。震災で死亡した米津漢之君=当時(7)=の形見を、昨春小学生になった弟凜君(6)が使っている。「会うことのなかった兄弟だけど、漢之はきっと喜んでくれるはず」と父勝之さん(48)は目を細めた。 勝之さん一家4人が暮らしていた兵庫県芦屋市のアパートは全壊し、小学1年の長男漢之君と長女深理ちゃん=当時(5)=が亡くなった。 漢之君の黒いランドセルは、つぶれた自宅から数週間後にほぼ無傷で見つかった。「短い生涯の証しだと思い、懸命に取り出した」と勝之さん。中に入っていたのはきれいに削った鉛筆や、震災当日の時間割にそろえた教科書。そして「せんせいあのね」で始まる日記帳だった。 前日の夕方、家族でカレーを作った話がつづられた最後の日記は「あした、たべるのがたのしみです」と締めくくられていた。「明日も普通の一日が来ると思っていたのに…」と勝之さん。 その後、次女英さん(11)と次男凜君が生まれた。直後は語りたくなかった震災の経験も、時がたつにつれ「伝えたい」と思うようになるなど、勝之さん夫婦には心境の変化もあった。ただ、ランドセルだけはあの日のまま、十数年間棚の奥で眠り続けていた。 小学校入学を控えた凜君に「ランドセルどうする」と勝之さんは尋ねてみた。無理に使わせる気はなかったが、聞かなければならないと思った。 死んだ兄が使ったランドセルと知っていた凜君は「僕が背負っていく」ときっぱり。その言葉が無性にうれしかった。 【共同通信】
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