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  •  フィリピンのマニラ首都圏マカティ市で1カ月前、一人の日本人が射殺された。現地で犯罪などに巻き込まれた日本人や日系企業を顧客に「トラブルシューター」(問題解決人)をしていた静岡県出身の山下佳生さん(39)。仕事上のトラブルや交友関係には不明な部分が多く、地元警察の捜査は難航している。 (静岡総局取材班)  幹線道路に銃声が響いたのは5月7日夜。地元警察などによると、ヘルメットに黒いジャケット姿の2人組が、信号待ちしていた乗用車に10数発の銃弾を浴びせ、バイクで逃走。次の瞬間、運転席の山下さんが、助手席の女性に覆いかぶさるように崩れ落ちたという。闘鶏場からの帰りだった。  その後の捜査で、山下さんの遺体には計14カ所の銃創があり、9ミリ口径のサブマシンガンが犯行に使われたことが判明。同乗者は無事で、強盗被害もなかったことから、何者かに雇われたプロのヒットマンによる犯行との見方もあるという。  山下さんは2008年、フィリピン人らとコンサルタント会社を設立。現在は閉じられたホームページには「犯罪に巻き込まれた、罪を犯してしまった、まずは相談を」などと業務内容を説明。日本大使館関係者は「逮捕された日本人への支援や警察との交渉など、トラブル処理をしていた」と証言する。  危険と隣り合わせの仕事柄、山下さんには2人のSPが付き添い、現地警察から発行されたIDカードを持ち歩いていたという。  事件当時は、日系企業によるリストラをめぐり、会社と解雇された従業員の仲裁を引き受けていた。フィリピン人の知人は「一部の従業員と退職金の額で折り合いがついていなかったが、それほど深刻なトラブルではなかった」といぶかしむ。  ほかにも日本人との間で土地取引をめぐるトラブルを抱えていたとみられるが、マカティ警察署のアーネル・ノリエガ捜査官は「交友関係を中心に全部調べているが、今のところ犯人は絞られていない」と明かした。 フィリピン、未解決多く 「日本の警察に捜査を」  フィリピンで日本人が殺害された事件では、真相が闇に埋もれてしまうケースが多い。「あの子はどんな思いで息を引き取ったのか。殺されるなら訳があったはず。理由を知りたい」。県西部に住む山下さんの母親(59)は悔しさをにじませる。  母親が外務省から連絡を受け、現地に到着したのは事件翌日の5月8日深夜。病院の霊安室に横たわる息子の腕や顔にはたくさんの銃創があった。「恨みがあっても、けがくらいで勘弁してほしかった」。遺体を前に泣き崩れるしかなかった。  山下さんがフィリピンに渡ったのは約15年前。フィリピン人タレントのプロモーター会社に勤め「片言じゃ商売にならない」と懸命にタガログ語を習得。やがて現地警察から通訳を頼まれるほどになり、トラブルシューターとして独立した。  母親思いで、頻繁に国際電話も。友人の一人は「事件の3日前にマニラで酒を酌み交わした時も、『早く日本に帰っておふくろを安心させたい』と話していた」と振り返る。  海外で日本人が殺人などの凶悪犯罪に巻き込まれた場合、日本警察が捜査に乗り出す刑法の国外犯規定がある。母親は「国がどこであっても、日本人であることに変わりはない。日本の警察に捜査してほしい」と訴える。  外務省海外邦人安全課によると、昨年までの5年間にフィリピンで殺害された日本人は計27人に上る。このうち何件で犯人が検挙されたかという統計はないが、現地で取材する邦字新聞記者は「ほとんどが未解決」と指摘。「警察の捜査力の低さや人手不足、目撃情報重視の裁判制度などから、捜査は数日で終わってしまう。これを逆手に、殺人や詐欺の実行場所にフィリピンを選ぶ日本人も多い」と続けた。  刑法の国外犯規定 殺人、誘拐、強制わいせつなどの凶悪犯罪に限り、日本の警察が海外の捜査機関に協力要請し、事件捜査できることを定めた規定。海外で日本人が事件に巻き込まれるケースが増加したのを背景に、2003年の刑法改正で盛り込まれた。イラクで同年発生した外交官殺害事件や、07年にフィリピンの捜査当局が日本人男性の死亡を自殺と判断した事件などで、警視庁が同規定を適用し捜査員を派遣した。静岡県警でも08年、アフガニスタンで伊藤和也さんが殺害された事件で誘拐・殺人事件捜査対策室を設置し捜査している。
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      【中日新聞】