![]() 「正月の風物詩」と言われる東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)に、雪辱を懸ける県人がいる。城西大男子駅伝部3年の石田亮選手(21)=東北町出身、青森山田出=だ。石田選手は1年前のレースで途中棄権し、チームは順位・記録ともなしに終わった。目まいと転倒、そして涙。当時の光景はいまだ頭から離れない。「今度こそ、仲間にたすきを」と張り切る石田選手。途切れた思いをつなぐため、再び晴れ舞台に立つ。 「一日たりとも、あの棄権した日を忘れたことがない。練習でも休んでいるときでも、何かの弾みに頭をよぎってきた」。石田選手は1年前の「悪夢」をそう振り返る。 今年1月3日、復路の第8区。テレビの生中継、沿道に鈴なりの観客。今まで感じたことのない緊張の中で、14位で入ってきた走者からたすきを受け取り、スタートを切った。 「マイペースで走ろう」。自らにそう言い聞かせたが、後ろから名門・駒沢大の高林祐介選手が追い上げ、並ばれた。負けず嫌いな石田選手は当初のプランを忘れ、ペースをぐんぐん上げた。 16キロをすぎ、残りはあと5キロ。急な上り坂に差し掛かったとき、それまでの無理がたたったせいか、体調に異変が起きた。「急に視点が合わなくなり、応援の人が二重、三重に見えた」。 両脚がもつれて一気にスピードダウンし、転倒を繰り返す。給水したものの意識が次第に遠のき、記憶がぷっつり切れた。気がついたのは、当時の監督から「もう大丈夫だよ」とコース上で抱きしめられたときだった。 医師の診断は、血糖値が下がり、動悸(どうき)や震えを引き起こしてしまう「低血糖」。「あこがれの箱根が、まさか完走できずに終わってしまうなんて」。 石田選手は中継所控室に横たわり「すいません」を繰り返した。仲間の「謝らなくていいから」との声に申し訳ない思いがよけいにこみ上げ、大粒の涙が止まらなかった。 あのアクシデントから約1年。石田選手は「あらゆる面で変わった気がする」と話す。春からの厳しい練習にも率先して臨んだ。夏場の1カ月合宿でも1200キロ以上走り、スタミナを付けた。 「つらいと思ったときに、倒れたあのシーンが頭に浮かぶ。『このまま、あきらめていいのか』と自問し、限界まで自分を追い込めるようになった」 学業や私生活も一変。授業は欠かさず出席し、汚かった部屋も整理整とん。あいさつの声も自然と大きくなった。櫛部静二監督は「この1年で心身ともかなり成長した。今度はやってくれるはず」と期待を寄せる。 11月の記録会では5000メートル、1万メートルとも自己新記録を出し、調子は上向きだ。今月10日にはエントリー発表があり、メンバー入り。29日には区間登録選手の発表がある。 「絶対たすきを次につなげたい。そして、みんなでゴールの喜びを分かち合いたい」と石田選手。挫折を乗り越え、ひと回りたくましくなった駅伝の町出身の県人ランナーは、力強く言い切った。
[記事全文] 【東奥日報】
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