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○…市民ランナーという言葉は、すっかり定着した感がある。早朝や夜間など犬の散歩よりも、ランニングに興じる姿が多いような気がする。健康志向やダイエットなどきっかけは身近であっても、走り込めば込むほど持久力やスピードを試したくなるもの。以前は東京・青梅マラソンや米ニューヨーク・マラソンなど、道路を埋め尽くす市民ランナーの“じゅうたん”に驚きもしたが、いまや静岡県内の大会でも珍しい光景ではなくなった。最近の例を振り返っても、掛川・新茶マラソン7000人、浜名湖マラソン1000人、富士裾野高原マラソン2800人、袋井クラウンマラソン4300人、ジュビロ磐田メモリアルマラソン4150人と、地域にかかわらず「集客」の良さは明らかだ。 ○…気軽なスポーツとなったとはいえ、人生をマラソンにたとえる表現は昔から一般的だ。ジュビロマラソンの静岡新聞記事にスターター役も務めた中山雅史選手が「『皆さん、死ぬまで走り続けましょう』と渇を入れた」とあったが、現役続行のために今季で磐田を去る中山選手がホーム最終戦後、惜別のサポーターに「まだまだ(自分は)走り続けたいんだな」と語り掛けた姿を重ね合わせた。スターター役といえば、今年で10回目の節目を迎えた「しずおか市町村対抗駅伝競走大会」(県市町村駅伝)は、川勝平太知事が就任後、最初の大会に臨んだ。 ○…開催前日の開会式あいさつで川勝知事は、静岡文化芸術大の前学長らしく「諸君」と呼び掛け、駅伝の由来にも触れて健脚を期待した。県市町村対抗駅伝はプレ東海道400年祭の一環イベントとして、30回の歴史を刻んだ県駅伝などを統廃合してスタートした。川勝知事は「駅伝は東海道五十三次の伝馬制に由来するといわれる」と紹介し、静岡県内に22宿を持つ東海道の開通400年記念がきっかけとなった大会との関連を強調した。 ○…10年連続エントリー選手30人の特別表彰が行われるなど、記念大会らしい開会式だった。回を重ねる度に市町村合併が進み、県内自治体数も第1回大会の74市町村から今年は37市町に減った。「村」は第5回大会の豊岡村(現磐田市)、賀茂村(現西伊豆町)、龍山村(現浜松市)を最後に消滅し、大会名にこそ「市町村」を残しながら「市の部」と「町の部」で競ってきた。10回を区切りに大会名称は、来年12月4日開催の第11回大会から「県市町駅伝」に変わる。芝川町と新居町は今年が最後の大会だった。それぞれ富士宮市と湖西市と合併する。町名とともに富士郡と浜名郡の歴史にも幕を閉じる。 ○…石川嘉延前知事は9回を重ねた開会式のあいさつで、「かつて静岡県は陸上王国だった。この大会が王国復活の起爆剤に」と期待し続けた。今年の開会式で大会名誉会長の松井純静岡新聞社・静岡放送社長は「この大会を走った選手が全国規模で活躍する姿を見るにつけ、10年の年月に感無量なものがある」とあいさつした。清水町代表(清水南中3年)で出場した第2回9区(現10区)の区間最高が今も破られない男子長距離界のホープ佐藤悠基選手(日清食品)のほか、第10回大会の1週間後に開かれた全日本実業団女子駅伝で、スズキ、ユタカ技研以外の県外チームの一員として出場した県勢6選手も、全員が市町村駅伝の経験者だ。 ○…谷奈美選手(ユニバーサルエンターテインメント、沼津西高出)は長泉町代表で10年連続エントリー表彰も受け、今年を含む6度の区間賞をマークした。勝又美咲選手(第一生命、御殿場市出身)は御殿場中3年の第1回7区と日大2年の第6回5区で区間賞。森町代表の平田裕美選手(資生堂、磐田北高出)の第4回6区記録は、いまだ町の部の区間最高記録だ。中村仁美選手(パナソニック、浜松日体高出)は浜松市浜松代表で第6回1区で区間賞、林奈々子選手(ヤマダ電機、富士東高出)は富士市代表で第7回1区2位。西尾千沙選手(スターツ、沼津西高出)は伊豆の国市の代表経験があり、スズキの松岡範子選手は第1回5区の区間賞で、富士市の初代王者に貢献し、高橋紀衣選手は静岡市静岡の代表経験がある。 ○…来年1月2、3日の箱根駅伝にも市町村駅伝経験者が多く顔をそろえる。明大の北条尚選手と小林優太選手(ともに浜松日体高出)は浜松市と湖西市の代表、中央大の大石港与選手(富士東高出)は富士市代表、帝京大の板垣辰矢選手(加藤学園高出)と杉山功選手(御殿場西高出)は三島市と御殿場市、青山学院大の小川恭生選手(加藤学園高出)は沼津市、関東学連選抜の佐野広明選手(駒沢大、浜北西高出)は浜松市細江の代表経験をそれぞれ持つ。 ○…箱根駅伝といえば佐藤悠基選手が東海大時代に記録した3年連続区間賞が有名だが、浜岡町(現御前崎市)代表経験のある山下拓郎選手(富士通、常葉菊川高出)も亜細亜大時代に4年連続で走り、3年時には9区区間賞で初優勝に貢献するなど、“市町村駅伝OB”が全国の注目を集めた。2001年の東海道400年祭記念や03年の静岡国体に向けた強化育成、発掘を主目的に始まった市町村駅伝。所期の目的を果たしつつ、中長距離陣の底辺拡大に寄与する役割は終わらない。郷土の声援と生まれ育った誇りを巻き込み、スポーツをキーワードにした社会行事に育った。町の部が総合優勝する日だって、遠くないのかもしれない。(12/16 掛井 一也)
[記事全文] 【静岡新聞】
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