![]() 遺影とともに 10年ぶりの開会式 第九十回の記念大会となる全国高校野球選手権大会(二日開幕)に、大会歌「栄冠は君に輝く」の作詞者、故加賀大介さんの妻道子さん(83)=能美市=が、十年ぶりに甲子園を訪れ、開会式を見守る。 先日、道子さんの元に三重県のある男性から一通のはがきが届いた。「大会歌 作詞の夫(つま)の 還る夏」。そこには二〇〇二年に道子さんがある公募に投句した詩と、球児たちの熱い夏を心待ちにするファンの思いが添えられていた。 半世紀にわたり、名勝負を見届けてきた大会歌。一九四八(昭和二十三)年に主催者が歌詞を全国公募し、五千二百五十二通の中から加賀さんの作品が選ばれた。 故古関裕而さんの作曲で、翌年から採用された。歌のタイトルに込められたフレーズは、けががもとで右足のひざ下を切断した加賀さんが「いつかスポーツの詩を書きたい」と、ずっと温めていたものだった。 道子さんは毎年、テレビやラジオから流れる歌を聴いている。「夫が亡くなって三十六年目。歌は六十年たった今も新しい感覚がするし、深みも出てきた」。一ファンとして、趣味のカラオケではいつも口ずさんでいる。 甲子園を訪ねるのは八十回大会以来、十年ぶり。年を取り、足を運ぶのは記念大会にと、心に決めていた。「夏になったら、いつも詩を思い出して元気づけ、ここまで長生きできた。足腰はどうもないけど、行くのはこれが最後かも」 同行する長女の新川淑恵さん(53)も「母はずっと前から楽しみにしていました」。甲子園では古関さんの長男正裕さんらと会う予定だ。 歌がきっかけで多くの人と知り合い、歌は「夫からのすてきなプレゼント」という道子さん。大会を前に、自らの思いを大学ノートにつづった。 亡き夫の 遺(のこ)せし歌と共に生き ここに迎えし 九十回大会 道子さんは今回もまた、夫の遺影をバッグに入れ、加賀さんが一度も訪れることのなかった甲子園を訪れる。 (田嶋豊) 加賀大介(かが・だいすけ) 本名・中村義雄。1914(大正3)年10月、根上町(現能美市)生まれ。小松製作所(コマツ)に就職し、仕事の傍ら大好きな野球を続けたが、はだしでプレーしたことが原因で骨髄炎になり、16歳の時に足を切断した。会社を辞め、加賀大介のペンネームで文芸活動を始めた。「栄冠は君に輝く」は当時婚約者だった道子さんの名で応募し、加賀さん本人のものと公表したのは50回の記念大会の時だった。73年、がんのため58歳で死去。
[記事全文] 【中日新聞】
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