05/21 13:10更新 【速報】米ヤフーが中国企業株を売却(12:04)

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▼47全国の社説
□1.「社説」【北海道新聞】
欧州債務危機の再燃を何としても回避する—。そうした危機意識がまったく伝わってこないのはどうしたわけか。米国で開かれた主要国首脳会議(G8サミット)は債務問題への対応策として財政健全化と成長を追求するとの声明を発表した。震源になっているギリシャについても、ユーロ圏に残るべきだという認識で各国が一致した。だが合意したのはそこまでだ。再燃を回避する具体策は何も示されていない。足元の問題にしっかり対応できないようでは、G8の結束と危機管理能力に疑問符が付く。G8はこれまで、ギリシャに対して厳しい緊縮財政を求める欧州連合(EU)の方針を追認してきた。しかし今回のサミットでは、フランスのオランド大統領が緊縮一辺倒だけではなく雇用増をもたらす成長戦略の重要性を強調した。ドイツのメルケル首相も、財政健全化の路線を維持しながらも、景気刺激策の必要性を指摘した。欧州経済を主導する仏独両国が、成長を重視する路線に軌道修正を図りつつあるとみるべきだろう。問題はその中身だ。「財政健全化と成長の両立」というスローガンだけでは説得力に欠ける。G8に求められるのは、財政規律を維持しながら、どのように経済を活性化させるのか、その道筋をはっきりと示すことである。とりわけ当事国の仏独は新たな成長戦略の構築を急ぎ、危機封じ込め策を責任をもって打ち出すべきだ。ギリシャでは連立政権の樹立が失敗し、6月中旬の再選挙が予定されている。選挙結果によってはユーロ圏の離脱も現実になりかねない。こうしたギリシャ国民に向けて、G8としての明確なメッセージを発する必要もあったはずだ。ところがサミットでは、厳しい緊縮策にあえぐギリシャに配慮した議論がまったく聞かれなかった。ギリシャ国民が納得し実行できる具体策を示さないまま、ユーロ圏に残ってほしいと期待するだけでは、先進国として無責任すぎる。ギリシャ政局の混迷で世界経済は大きく揺れている。市場ではスペインなどの国債価格が暴落し、世界的な株安やユーロ安が進んでいる。危機が経済規模の大きい南欧に波及すれば、世界経済はさらに深刻な打撃を被る懸念も募っている。サミットで日本は、安全網整備のため国際通貨基金(IMF)に資金を拠出したことを説明し、欧米と連携していく姿勢を強調した。政府・日銀は市場動向を注視し、ユーロ安に伴う急激な円高への備えを怠ってはならない。
□2.「社説」【河北新報】
津波が原発の敷地内を覆ったら、一体どうなるのか。6年ほど前、東電と原子力安全・保安院などが具体的に検討していたことが明らかになった。タービン建屋が水浸しになって電源を喪失し、原子炉の命綱である緊急炉心冷却装置(ECCS)が機能しなくなるという結果だった。福島第1原発事故はその通りの経過をたどって、核燃料の溶融という重大局面に陥った。電源喪失の危険性が分かっていたのに、なぜ根本的な対策を講じなかったのか。長年、福島県の浜通りで10基もの原子炉を稼働させながら、東電は結局、安全性を無視し続けたのではないか。怠慢と不作為によって、原子力災害を防ぐ機会を逃したとしか思えない。電源喪失の可能性を指摘したのは「外部溢水(いっすい)勉強会」と呼ばれる組織。保安院の公開資料によると、「あくまで仮定という位置付けで、想定外津波に対するプラントの耐力」を検討したという。何もないのに、いきなり始めたわけではない。2004年のスマトラ沖地震(マグニチュード9.1)の津波によって、インドの原発が浸水被害を受けたことなどがきっかけになった。勉強会では電力各社の代表プラントを選び検討した。東電は福島第1原発5号機で、津波が海面より10メートルの高さなら何の影響もないが、14メートルでは敷地内に深さ1メートルの海水が浸入し、電源とECCSの機能を失う。4メートルの差で全く状況が異なるのは、5号機の敷地がそもそも海面より13メートル高いからだ。タービン建屋のどこから浸水するのかも、具体的に示した。福島第1原発では現地調査まで行っている。勉強会ではこのほか、東北電力女川原発などでも電源喪失に陥ると指摘された。東電は結果をどう受け止めているのか。「現実の津波の可能性や蓋然(がいぜん)性を考慮せず、勉強として影響を確認したものにすぎない」という。取るに足らない結果だったとでも言いたげだが、とんでもないことだ。決してそんなことはなかったはずだ。仮定だろうが想定外だろうが、出てきた結果は冷却機能喪失という、これ以上はない深刻な内容だった。対策に乗り出すのが、原子力を扱う企業の最低限の務めではないか。浸入口の気密性を高めたり、設備の移動やかさ上げなどを行えば済むことだ。何も原子炉を移転させるわけではない。電力各社と保安院は、外部溢水と同時に「内部溢水」の影響も検討していた。建屋内の配管や弁からの水漏れによって浸水することを指す。これもフランスの原発で実例があった。数年前、浸水と電源喪失は「原子力ムラ」の関心事だったと思われる。なのに何の教訓も得ないまま放置した。こんな体たらくの揚げ句の事故だった。東電も保安院も、原子力に関わることの適格性を問われるしかないだろう。
□3.「社説」【東奥日報】
与野党協議が難航する衆院選挙制度改革をめぐり、各党の幹事長会談が今週にも開かれる見通しだ。2009年衆院選小選挙区の「1票の格差」最大2.30倍を最高裁が「違憲状態」と断じてから1年2カ月。法で定められた選挙区画定審議会の勧告期限を過ぎ「違法状態」を招いてから3カ月近く。立法府である国会が自らの問題で違憲・違法な状態脱却へ答えを出せない異常事態が続く。あきれるばかりの機能不全だ。1票の格差是正に加え、現行の小選挙区比例代表並立制の見直し、消費税増税を前に「身を切る」ための議員定数削減−。改革は政党の消長にかかわるだけに各党の思惑が先行、一向に合意へ向かう気配はない。終盤国会は、野田佳彦首相が成立に政治生命を懸ける消費税増税関連法案をめぐり、解散・総選挙含みだ。だが、違憲状態を放置したまま総選挙となれば、「選挙無効」の司法判断が下る可能性がある。違憲状態は早急に解消しなければならない。与野党の幹事長会談では、1票の格差是正を最優先し、改革へ道筋を付ける糸口を見いだす必要がある。問題は、肝心の民主党執行部に格差是正を優先する意識が薄いことだ。改革をめぐって民主党の樽床伸二幹事長代行が4月に与野党協議で示した2度目の私案も拒否された。私案は、小選挙区を5減とし、比例代表は現行の全国11ブロックを廃止して定数を180から75削減、残る105のうち35に連用制を導入する内容だ。連用制は中小政党が比例で議席を得やすく公明党などへの配慮だが、並立制との混在は複雑すぎて各党が批判するのは当然だ。私案は「次期衆院選に限った緊急措置」とし、抜本改革を先送りする考えを示しながら比例定数削減幅も依然と大きい。これでは不利になる中小政党の理解は得られない。改革をめぐり野田首相と民主党執行部に食い違いもある。首相が1票の格差是正を優先したい意向を示しているのに対し、輿石東幹事長は格差是正、抜本改革、定数削減の「同時決着」を目指す考えだ。違憲状態を解消し憂いなく衆院解散の主導権を握りたい首相と、選挙情勢の不安などから解散を先送りしたい輿石幹事長の思惑の違いが見える。改革協議に進展がないことを重く見たか、与野党幹事長会談は野田首相が開催を指示したものだ。打開へ向け首相はさらに指導力を発揮する必要がある。一方、自民党は格差是正へもともと小選挙区「5減」を主張しており、関連法案の月内単独提出へ準備を進める。違憲状態を解消し、同党が野田政権に迫る早期衆院解散へ環境を整えるのが狙いだ。思惑は別にして「5減」で民主、自民両党は同じだ。両党主導で格差是正を抜本改革や定数削減と切り離し、先行して実現すべきだ。違憲状態を続ける国会に立法府の資格はない。
□4.「時評」【デーリー東北】
厚生労働省は三沢市への委託事業として本年度から、雇用創造推進事業を始める。各種セミナーで求職者の職業能力開発、地元事業者や起業者の事業拡大、創業を支援。来年度までの2年で計140人の雇用創出を目指すという。運営主体は、市や市内経済団体など9団体で組織する市雇用創造推進協議会(会長・種市一正市長)。事業構想によると、米軍三沢基地が所在することによる国際色を地域資源とし、国際色を生かした商品の開発に加え、農水産物を活用した商品開発に取り組む事業者を育成することで、地域振興や雇用創出につなげる。滞在型観光の確立などで観光産業の振興も図ることとしている。事業計画では▽アメリカ企業の経営戦略と輸入ビジネス▽観光土産品など商品開発のノウハウ▽パソコン技術研修▽ビジネス英会話▽イベントコーディネーター育成—など、各年度12のセミナーを実施。今後、市内の食肉加工場拡充などで、新たな雇用が見込まれることから、衛生や品質管理といった即戦力を育てるセミナーも計画。年度末には合同就職面接会も予定する。これらへの参加目標数を事業者80社、求職者600人とし、うち、本年度は66人、来年度は74人の新規就職者、新規創業者を目指すという。同じ事業に2010年度から取り組んでいる十和田市では、商業、観光、介護の三つの重点分野でセミナーを企画。受講者のうち、新規就職したのは初年度で102人、11年度で91人と、目標を10〜20人程度上回り、上々の成果を見せているという。ただ、事務局の市商工労政課によると、セミナーのテーマによって人数にばらつきがあるといい、人集めを最大の課題に挙げる。5月8日に開いた三沢市の協議会でも、委員から受講者数を心配する声が上がった。十和田市では商工会議所や商店街を一軒一軒回って受講を呼び掛けたり、企業などへの喚起などで一定数の受講者を確保しており、三沢市でも同様の努力が求められよう。一方、同市の有効求人倍率は昨年7月時点で0・27倍、今年3月時点でも0・46倍と、依然として厳しい状況だ。ハローワーク三沢管内では、今春時点での新規学卒者の未就職者数は16人おり、若年者も含めた雇用対策は急務だ。実効性のある事業にするためには、求職者の能力開発への自助努力だけではなく、受け皿となる事業者側の理解も重要になってくる。事業拡大や新規参入を後押しする手厚いサポートも必要だろう。地域の雇用改善の突破口となるような実のある事業となることを期待したい。
□5.「社説」【秋田魁新報】
□6.「論説」【岩手日報】
2009年の政権交代に際して、民主党が掲げたマニフェスト(政権公約)の基である政策インデックスに「『終身刑』の検討を含む刑罰の見直し」という項目がある。死刑存廃の国民的議論を喚起するのが眼目だ。死刑制度は「先進国中では日本と米国のみ」として「当面の執行停止や死刑の告知、執行方法などをも含めて国会内外で幅広く議論を継続」などと記されている。死刑廃止は国際的な流れとした上で、その方向へ踏み込んだ議論の可能性が読み取れる。野田改造内閣の小川敏夫法相は今年3月、死刑囚3人の刑を執行した。菅内閣当時の千葉景子法相が在任中の10年7月以来、1年8カ月ぶりの執行だ。その後、小川法相は死刑の存廃を議論するため法務省内で検討されていた有識者会議の設置計画を、死刑執行前に打ち切っていたことが明らかになった。野田佳彦首相は、死刑執行直後の記者会見で「直ちに死刑を廃止するのは困難」と、法相の姿勢を追認した。内閣府が10年に公表した世論調査によると、85%以上が死刑制度を支持している。「直ちに廃止」の雰囲気にないのは確かだが、議論喚起に前向きだった当初の政治方針に照らせば違和感が否めない。「法相の義務」を理由に民主党政権で初の死刑執行に踏み切った千葉元法相は、執行に法相として初めて立ち会ったほか、マスコミに刑場を公開するなど、「議論の喚起」に努めたのは、党の当初方針に合致するだろう。「法相の義務」という認識は、自民党の宮沢改造内閣で法相を務めた故後藤田正晴氏が1993年3月に死刑を執行して世上に流布した。この時は実に3年4カ月ぶりの死刑執行。「義務」と思うのは一つの見識に違いないが、現実的には旧政権から現在に至るまで、死刑執行の決断は命令権がある法相の思想信条に左右される例は数多い。今、裁判員裁判で一般市民が、ある時は死刑を選択しなければならない状況がある。苦渋を極める市民の決断が、時々の政治家や政権の考え方で、もてあそばれるに等しい状況が続くのが好ましいとは思えない。裁判員制度は、きょう21日で施行から丸3年。法律の規定により見直しの時期に当たる。死刑存廃そのものは、制度改善をめぐる議論にそぐわないにせよ、国民が、刑事司法に一層当事者意識を高める好機とは言えるだろう。マニフェストそのものに、死刑存廃に関する記述は見当たらない。しかし「国民的議論」を蚊帳の外に置いて、政治家の独断でなし崩し的に現状を追認するのは、これも一種の公約違反ではないか。(2012.5.21)
□7.「論説」【福島民報】
東日本大震災で損壊した県内の指定文化財の修復に格差が出てきた。国などの補助を受けて建造物を元の姿に戻す取り組みが進む一方で、解体される例がある。民間所有ほど支援の手が届きにくい。現状を放置したままでは地域の顔、さらに観光資源でもある建物が消えていく。公的支援の拡充、寄付の活用など幅広い対策が求められる。県教委の調査で、国や県指定の被災文化財は140件を超えた。桑折町の旧伊達郡役所、いわき市の専称寺、猪苗代町の天鏡閣本館など15件は平成23年度以降、国の補助事業に順次採択された。補助率は震災後引き上げられた。ただ、いずれも国の重要文化財、史跡、名勝、重要伝統的建造物群保存地区だ。同じ国指定でも登録有形文化財への支援は貧弱だ。国の補助は修復設計費の半分にすぎず、震災後も追加措置はない。本県は指定129件のうち33件(3月1日現在)が被災した。旅館や蔵など民間所有の建物が多く、費用確保が負担となっている。福島市の日本基督[きりすと]教団福島教会会堂は安全が保てない、として昨年3月に取り壊され、登録抹消された。同市の竹屋旅館も解体される。所有者にお任せでは、文化財消失を止めることができない。指定者の国は保存のため、より充実した施策を打ち出すべきだ。その上で、所在自治体、所有者らを交え保存策を検討するのが望ましい。県教委は独自の補助事業を24年度に設け、国登録有形文化財の修復に乗り出した。応募は16件あり、6月にも交付先を決める。とはいえ、予算は約2千万円で、1件当たりの上限は150万円にとどまる。十分とは言えない。本来、国が担うべき仕事だ。県教委は財政支援を国に強く求めてほしい。県、市町村指定の修復は所管する自治体の責任となる。国が費用の80%を負う特別交付税措置はあるものの、災害時には迅速に対応できない。必要な資金を用意する手法として寄付がある。白河市は市小峰城城郭復元基金に寄せられた善意を国史跡小峰城石垣の修復に充てる考えだ。23年度は平年の6倍に相当する約760万円が市内外から集まった。郡山市の旧県尋常中学校本館修復に当たる安積歴史博物館には、米国の慈善団体からも届いた。自治体や団体が基金を設けるなどして寄付を集め、修復に役立てる仕組みは有効ではないか。運営が公平、透明であれば協力を得られよう。文化財再生は復興の象徴ともなるはずだ。(鞍田炎)
□8.「社説」【福島民友新聞】
□9.「論説」【茨城新聞】
varamp_med='32';varamp_site='38';varamp_frame='11132';varamp_iframe='0';varamp_height='60';varamp_width='468';varamp_type='0';varamp_rurl=document.referrer;varamp_send=location.protocol+'//ads.adjust-net.jp/adserver/ad/ads.js';document.write("");論説2012年5月21日(月)G8首脳会議ギリシャ危機、軟着陸をギリシャ発の欧州債務危機拡大を国際協調により阻止できるかが問われる中で、主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)が開かれた。首脳宣言は「財政健全化と成長・雇用促進の両立」をうたった。緊縮財政が続き国民が疲弊しているギリシャと、同国の改革を主導する欧州連合(EU)は歩み寄って、現実的な解決策を探るよう促すメッセージと受け止めたい。EUのリーダーであるドイツとフランスは結束して、成長策を含む持続可能なギリシャ改革の道筋を示し、事態を軟着陸に導く責任を果たしてほしい。今日の事態は対応を誤れば、2008年のリーマン・ショックか、それを上回る甚大な破局に世界経済を陥れかねないと認識すべきだ。ギリシャは、反緊縮財政を掲げた政党が躍進した総選挙の結果、新政権を樹立できず、6月の再選挙へと追い込まれた。EUと合意した緊縮策の撤回を求める勢力が勝てば、同国に対するEUなどの支援が取り消され、同国のユーロ圏離脱という最悪の事態に突入しかねない。ギリシャ支援の枠組み崩壊やユーロ離脱が現実のものとなれば、財政再建が道半ばのイタリアやスペインなどにも危機が波及し、欧州経済は大混乱に陥るだろう。欧州向け輸出の比率が高い中国など新興国の景気は低迷し、世界経済への打撃は計り知れない。日本にとっては、ユーロが信用を失うとユーロ安円高が進み、アジアからの逃避マネーも日本市場に流入し、これも円高の要因となって日本の輸出企業の業績を直撃する。このため、各国首脳は危機感を共有している。野田佳彦首相はG8で、危機が他の地域の不安要因にならないよう欧州の努力を重ねて要請。危機拡大に備え国際通貨基金(IMF)の資金基盤強化などを通じ、日本が国際協調に努める方針をあらためて説明した。オバマ米大統領もG8閉幕後、「ギリシャがユーロにとどまる重要性の認識を共有することができた」と強調した。秋に大統領選を控え、欧州危機が米経済に波及し、雇用などに悪影響が与えれば再選戦略が狂いかねないためだ。もっとも、欧州各国は別次元の危機感に襲われているに違いない。第2次大戦で欧州が戦場となり、平和の実現と荒廃からの復興を誓って欧州統合の歴史が始まった。1999年には基軸通貨の米ドルに対抗するため、単一通貨ユーロを誕生させ、いまやドルに次ぐ地位を占める。まさにユーロは統合欧州の象徴だ。もし、ギリシャが本当にユーロを離脱してしまう事態に立ち至れば、EU建設の政治的な挫折をも意味する。統合を後退させないために、独仏以外の各国にも強く結束を促したい。経済危機では、世界の国内総生産(GDP)の約9割を占めるG20に討議の主体が移っている。今回のG8は具体策を打ち出せなかったが、一定の存在感を示した。市場にノーを突きつけられると立ち行かない財政の健全化の重要性を確認しつつ、ギリシャの民意を尊重し成長策の必要性を同時にアピールした。自由経済と民主主義を志向し、率直に意見交換できるG8だからこその役割は、まだ残されているといっていいだろう。HOME
□10.「社説」【千葉日報】
裁判員裁判制度の施行から21日で3年。司法に市民感覚を取り入れる改革として制度が始まり、千葉地裁では補充を含め3200人以上が裁判員を経験(4月末)、県民の司法参加が身近になってきている。最高裁は全国的に性犯罪や傷害致死罪の厳罰化傾向が見られる一方、強盗傷害罪では裁判官だけの審理より執行猶予付き判決の割合が高かったことなどを公表した。判決や量刑に市民感覚が反映され、司法に変化が表れていることがよく分かる。それでも司法の判断は、同じ罪を犯した被告には一定の公平な量刑を科す整合性も求められる。裁判員裁判制度は2009年5月21日に施行。9月には千葉地裁でも始まった。12年4月末まで千葉地裁で判決を受けた被告は409人。成田空港を抱え、密輸入による覚せい剤取締法違反の罪が多いのが特徴で、406人に有罪、3人に無罪が言い渡された。最高裁によると、全国では3月末までに裁判員裁判で3601人の被告に判決があった。強姦(ごうかん)致傷罪・準強姦致傷罪の204人はすべて有罪、傷害致死罪310人のうち無罪は2人。公表した裁判官だけの過去のデータ(06〜08年)比較では、無罪率はわずかながら減少し、量刑でも重い傾向が示された。大阪地裁の傷害致死罪では、求刑懲役10年に対し15年という異例の判決もあり、悪質とみた市民感情が端的に量刑に表れた形になった。一方、最多の強盗致傷罪838人は無罪1人で無罪率は微減で同じ傾向だが、有罪でも社会の中で立ち直ることを求める執行猶予が付く割合が増えた。制度導入前に「市民は被害者感情が強く犯罪を重くみる」としてすべて厳罰化が進むと危惧した予想には反した。市民感覚による判断は、裁判官だけの審理よりも厳罰と温情と幅が大きく変化したということ。それでも同じ罪なのに公平性がない判決は許されず、一定の整合性は必要だ。裁判員法に施行3年後に制度の見直しをする規定が盛り込まれている。裁判員の守秘義務や死刑判断の心の負担といった課題の他、覚せい剤密輸など対象事犯の見直しや控訴審の在り方の問題も浮上している。裁判員を経験した声を入れて十分に検討されなければならない。ツイート
□11.「社説」【神奈川新聞】
東京電力が申請した家庭向け電気料金の値上げについて、経済産業省の専門委員会による審査が始まった。初会合では、「燃料費増加による経営圧迫のつけを利用者に回すな」といった批判が相次いだ。福島第1原発事故以降、東電に対する信頼は根本から失われている。消費者が料金改定に反発するのも当然といえよう。専門委員会や公聴会などを通じ、国民目線での徹底した査定を行ってもらいたい。東電が申請した値上げは平均10・28%。標準的な家庭の月額は、現在より480円(値上げ率は6・9%)上がり、7453円となる。電力会社が電気料金を決める際の算定に用いている手法は、総括原価方式と呼ばれる。燃料費や人件費など電力供給に必要な費用を積み上げて原価を計算し、料金に転嫁できる仕組みだ。値上げ申請に当たり、東電が示した原価は総額5兆7231億円。経費削減に努力するものの、原発事故後に火力発電の燃料費が膨らみ、値上げしない場合、原価に対して収入が6763億円不足すると説明している。ただ、電力会社は一般企業と違い、利用者が自由に選択できない独占状態に置かれている。そのため、経費削減への意欲が湧きにくく、合理化が進まなかったという指摘もある。料金算定に使っている人件費の削減は十分か、燃料調達が割高ではないかなど、検討すべき論点は幅広い。審査を通じて料金改定の根拠とした原価に切り込み、値上げ幅を圧縮できるかどうかが問われよう。また、停止中の柏崎刈羽原発(新潟県)を順次再稼働させることを前提に値上げ幅を決めた点も疑問だ。周辺の複数の活断層が連動する地震を検証した結果、場合によっては、地震の揺れが想定より強くなる可能性が指摘されている。原価算定に同原発を盛り込んだ理由や、再稼働しない場合の値上げ幅を東電にただしてもらいたい。東電は7月1日の料金改定を見込んでいるが、消費者の不信感を払(ふっ)拭(しょく)し、理解を得るには時間をかける必要があろう。日程にとらわれず、拙速な議論は避けるべきだ。節電に協力し、東電救済のために税を負担している利用者の抵抗感をしっかり受け止めた上で、徹底した情報公開と丁寧な説明を求めたい。
□12.「社説」【信濃毎日新聞】
関西電力大飯原発3、4号機の再稼働の是非をめぐり、野田佳彦首相が近く最終判断する意向を表明した。安全性についてさまざまな問題点が指摘されているうえ、滋賀県や大阪市などが疑問を呈している。そうしたなかで、なぜ近い時期に最終的な判断ができるのか、疑問と言わざるを得ない。今夏の電力不足を理由に再稼働を急いでいるとすれば、福島第1原発事故の教訓が生かされない恐れがある。首相は「立地自治体を含めて一定のご理解をいただいたと判断するなら、責任を持ってそういう意思決定をしたい。判断の時期は近い」と述べた。「(再稼働を)判断した暁には安全性に万全を期した体制を先頭に立ってつくる」とも訴えている。17日のNHK番組である。立地自治体のおおい町議会が全員協議会で再稼働に同意したものの、同町や福井県は意思表示をしていない。首相は、町議会の同意などから「地元」の理解が得られると判断したのだろうか。前のめりの姿勢が際だつ発言だ。政府は原発ゼロを想定した今夏の電力需給対策を打ち出している。原発依存度が高い関電管内に対しては、2010年に比べ15%以上の節電を求めている。経済界から再稼働を望む声が高まっているのは理解できるが、だからといって首相が結論を急ぐのは疑問だ。第一に、地震や津波対策が十分とはいえない。防潮堤のかさ上げや免震事務棟の建設などが済んでいないことに加え、若狭湾一帯で「破砕帯」と呼ばれる軟弱な断層の問題が浮上している。とくに敦賀原発は立地が不適格の恐れがある、と経済産業省原子力安全・保安院が指摘したばかりだ。破砕帯は大飯原発でも確認されている。原子炉建屋近くの最も大きな破砕帯については、3、4号機の増設申請時に関電が調査し問題はないとしているが、敦賀原発問題を受け、再調査を求める声が高まっている。疑問の第二は、滋賀県、京都府、大阪市など周辺自治体の首長らが再稼働に慎重な姿勢を崩していないことだ。電力消費地である関西圏の理解が得られないままでは、判断できないだろう。これまでの政府の方針に一貫性が見られないところが問題だ。今夏は原発ゼロで乗り切る覚悟を決め、腰を据えてエネルギー政策を根本から見直す必要がある。
□13.「社説」【新潟日報】
米国で開かれていた主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)が、財政再建と経済成長の両立を目指す首脳宣言を採択して閉幕した。宣言では「成長と雇用の促進が不可欠だ」と強調した。最大の焦点である欧州債務危機を克服するため、緊縮策一辺倒だった財政政策の軌道修正を図ったといえる。宣言を単なるスローガンとせず、「必要なあらゆる措置」を、どう具体的な政策として素早く実現させていくのか。G8の協調と実行力が問われている。欧州債務危機の発端となったギリシャでは、反緊縮財政の民意を受けて再選挙を行うことが決まった。ユーロ圏から離脱する可能性が現実味を帯びてきている。離脱すれば、欧州はもとより世界経済が大混乱に陥りかねない。そうした危機連鎖の懸念は既に金融市場に広がりつつある。フランスでは成長路線を掲げるオランド政権が発足した。ドイツの地方議会選挙では、財政規律を訴えるメルケル首相率いるキリスト教民主同盟が惨敗した。緊縮策への反発は欧州全域に拡大している。宣言で経済成長に軸足を移す姿勢をにじませ、同時にギリシャがユーロ圏にとどまることへ期待感を示したのは、世界経済の安定にユーロ圏の結束が不可欠との判断からだ。だが、財政再建と経済成長の両立という総論で賛成とはいえ、どちらを重視するかは各国で温度差があるのが実情だ。むしろ11月の大統領選を控え、景気回復と雇用の改善が最重要課題となっているオバマ米大統領の意向が強く反映されたとの見方が強い。いったん財政規律を緩めれば、国債の価値が下落するなど、欧州の信用不安が一層深刻化する恐れもある。各国とも難しいかじ取りを迫られるのは間違いないだろう。宣言ではまた、北朝鮮が核実験や弾道ミサイルの再発射を強行すれば「国連安全保障理事会に行動を求める意思がある」と警告し、拉致問題にも言及した。G8として毅然(きぜん)とした対応を求めた野田佳彦首相の主張をくんだといえる。中国にどこまで影響力を発揮できるかが問われよう。イラン核開発疑惑では軍事施設への立ち入り受け入れを、反体制派との衝突が続くシリア問題ではアサド政権に即時停戦を求めた。両国に近いロシアも共同歩調を取った形だ。だが、プーチン露大統領の欠席で議論は深まらなかった。米国が欧州で配備を進めるミサイル防衛(MD)について、ロシアの反発は強い。プーチン大統領が欠席したのもMDが理由とされる。両国の溝を埋めるのは容易ではない。G8は中国などの新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会合に押され、存在感が薄れつつある。何より求められているのは国際社会をリードする指導力と、実効性の担保である。それがない限り、形骸化が進むだけだろう。
□14.「社説」【中日新聞】
裁判員制度開始から三年がたち、二万人以上の市民が判決にかかわった。「民主主義の学校」として、司法への市民参加が、さらに育まれるのを望む。「刑事裁判が国民に近いものになり、関心が高まったことは大きなことです」と、元裁判官である木谷明さんは語った。「裁判がビジュアル化され、口頭でのやりとりが徹底されたことで、誰が見ても理解されるようになったことも良い点でしょう」もともと日本の刑事裁判は、99%以上の有罪率で、「検察官が事実上の裁判官だ」とも、「裁判所は有罪であることを確認するところだ」とも批判されてきた。二重の不正義を防ぐだが、木谷さんは違った。裁判官時代に数多くの無罪判決を出し、すべて無罪確定させた稀有(けう)な存在だ。一件の例外を除いて、検察側の控訴を許す余地を残さないほど緻密な判決を書いた。たった一件の例外である検察官控訴も「控訴棄却」となったほどだ。あえて無罪を出そうとしたのではない。捜査機関が証拠物に作為を加えるケースがあったり、任意になされたはずの自白が虚偽だったりする−。この信じ難い事実に忠実に向き合った結果なのだ。強い信念もあった。無実の人を罰することは何を意味するか。木谷さんはこう考えた。「無実の人を罰することは、不正義である。無実の人を罰すれば真犯人を取り逃がすことにもなり、二重の意味で不正義となる」市民が入ることで刑事裁判に風穴があくのではないか。多様な価値観で事実を見極めることが望ましいのではないか。これが制度の大きな眼目であったはずだ。確かに法廷の様子は激変した。木谷さんは、そのことを評価しながらも「裁判官が本当の意味で謙虚になったといえるかが問題」と問いを投げかけている。市民に誤判させぬため「裁判員の都合を考慮するあまり、審理を急ぎすぎていないか。評議にもっと時間をかけるべき事件があるのではないか。争点を絞り込む公判前整理手続きで予備知識を得た裁判官が筋書きを立てて、裁判員を誘導しているように見える事件も散見される」何よりも無実の人を罰しないことを実践するには、まだ課題が山積しているのだ。例えば、取り調べ過程の全面録画だ。やってもいない犯罪を自ら認めてしまうことがある。密室で長時間、自白を強要されると、その場から逃れたい、裁判で疑いが晴れるだろう、そんな心境になるようだ。冤罪(えんざい)事件は取り調べ自体に問題があったケースが多い。全面可視化は今後の刑事司法を改革するうえで、避けては通れないテーマだ。同時に全面的な証拠開示も求めたい。被告に有利な証拠、あるいは被告が犯人でないことを示す証拠を検察側が意図的に隠す場合がある。せめて全証拠のリストを弁護側が手にすれば、被告が無実である証拠を探り出す手掛かりになるのは間違いない。裁判員に誤判をさせないためにも、争点整理の段階で、それらの全証拠をオープンにするのは基本でないか。被害者や遺族が裁判に参加する仕組みにも欠陥がある。犯人かどうか分からない段階で、むき出しの遺族感情を述べると、被告が犯人である印象を持たれかねない。有罪の評決をしたうえで、遺族の意見陳述をする「中間判決」の方法でも採用しない限り、無罪判決を受けうる人に反省を求める矛盾状態が生じる。裁判員に過度な守秘義務を背負わせているのも疑問だ。自由な評議を妨げない範囲で、むしろ適切な情報開示をする仕組みをつくった方が社会の蓄積財産となる。三年を経て、裁判員制度が社会に定着してきた。法曹界や学識者、市民らで検証機関を設け、制度をよりよく育みたい。十九世紀のフランスの政治思想家トクヴィルは「アメリカの民主政治」(講談社学術文庫)で、陪審制度を「人民の審判力を育成し、その自然的叡智(えいち)をふやすように役立つ(中略)無料の、そして常に公開されている学校のようなものである」と看破した。民主主義の学校−。確かに市民の司法参加は、もっと潜在力を秘めている。トクヴィルは陪審が民事にも拡大されるとき、生活の慣習にまで入り込み、「正義の理念と結合する」とも述べた。民事にも拡大すると刑事裁判に限らず、民事訴訟や行政訴訟にも、市民が加わることを検討してはどうか。原発の稼働問題や一票の格差問題…。国民生活や民主政治に直結する、さまざまな難題が裁判所に持ち込まれる。ここに市民の良識を活用すれば、お互いに公共心が培われ、民主主義の基盤をつくる「みんなの学校」となろう。
□15.「論説」【中部経済新聞】
経済産業省がこのほど取りまとめた「第41回海外事業活動基本調査」をみると、事業所の海外移転が一段と進行している。昨年7月時点の調査で2011年度の動向を把握したものだが、製造業の海外生産比率は18・1%になり、なかでも輸送機械は4割に達している。企業の海外投資が増えており、海外生産比率が統計上からも加速している。海外投資の狙いは、円高に加え、現地の需要を取り込むこと。特に、アジア地区でこの傾向が顕著であり、同地区の現地生産法人の現地販売比率が増加している。大企業に加え、中小も海外進出を考える状況になった。中小企業経営者から「円高で苦しい。現地の需要も取り込みたいので、どこに進出したらいいのか」と、筆者も相談を受けることがあるので、多くの経営者が焦っているのだろう。しかし、ここは落ち着いて考えた方がよい。中小企業の海外進出ラッシュは過去にもあった。1990年代前半、陶磁器など地場産業の中小企メーカーが円高対策のため、アジア各地に相次いで進出。ところが、その多くが現在、現地で稼働していない。現地の提携先とのトラブルに巻き込まれるなどして海外投資が失敗し、その損失で国内事業も撤退したケースもある。そもそも、現在のレートは円の過剰評価であり、いずれ適正レートに修正されていくと考えられる。現地の制度も整い、当時よりは中小企業の進出が容易になった。日本企業向けの工業団地が整備されるなど、サポート体制も整っている。それでも、国内投資よりはリスクが大きい。数年前に中国進出し、早々と撤退した企業も実際にある。円高対策が海外進出の主目的であるならば、まず国内でやれることをもう一度検討するべきだ。中小企業の円高対策は、製品の付加価値を上げることからまず取り組もう。コスト削減による価格競争は終りのない競争になる。製品の付加価値向上は、日本国内の分厚い蓄積を利用することが有効だ。1社の力には限界がある。地域内の他社との連携、優秀な人材を活用するなど、「地域資源」を活用しながら、製品づくりをしていきたい。特に、中部地域は多様な製造業が活動しており、地域の力を借りながら、企業が競争力を高めやすい地域だ。また、中部をそうした魅力ある地域に育成していかなければならない。
□16.「論壇」【伊勢新聞】
休日の振り替えまでして拡大したゴールデンウイークも終了して、日本列島は「さあ、働こう」列島に戻った。国民の一人一人がその気になったまさにその時、国内の原発稼働がゼロになるという事態が5日起こり、関係機関はどこもその収拾に追われている。一方、政局は民主党が週明けに、政治資金規正法違反事件で無罪判決を受けた小沢一郎元代表の党員資格停止処分の解除手続きに着手する。処分期間は「判決確定まで」となっているが、指定弁護士が控訴すれば元代表は被告人の状況が続くことになるので、党としては10日の控訴期限を待たず、党役員会、党常任幹事会で8日、処分解除手続きを行った。しかし、小沢氏の処分時の幹事長だった岡田副総理や小沢氏と距離を置く前原政調会長らは「判決確定を待つべきだ」との態度を取っており、明らかに党執行部とは意見を異にしている。輿石幹事長は「民主党は今、全党心を合わせて力を結集することが求められている」と、あくまで処分解除によって党の結束を図りたいとの意向を示している。野田首相としても、こうした党執行部の意向は無視できない。政府としては、新たな態勢づくりは小沢氏の処理が決定後とみており、やや状況待ちの状態である。◇原発停止4月5日夜、北海道電力柏原原発3号機(北海道柏村)が定期検査のため運転を停止し、国内の原発50基の全てが止まった。全面停止は、商業用原発のスタート以来42年ぶり。このため今後の原発の扱いは、関西電力大飯原発3、4号機が再稼働するための手続きを進めているが、地元の同意は得られておらず、全国的に「この際、日本から原発をなくしてしまえ」といった意見が日増しに強まってきており、政府の対応が注目されている。日本原子力発電の東海原発(茨城県東海村)が初の営業発電を始めたのが1966年だが、70年代に入ると、東京電力と関西電力が次々に原発を建設、原発依存度は急速に高まり2010年度には全電力量の26・4%を54基の原発でまかなうほどになった。しかし、昨年の福島第一原発の事故以来、国内の原発は事故や定期検査などのため停止が相次ぎ、一方では安全確認の遅れなどを理由に検査後の再稼働ができない状態が続いた。政府は昨年7月、全原発を対象に安全性の確認のための安全評価(ストレステスト)を指示、これまでに全国の原発50基のうち19基についてストレステストの一時評価が提出された。政府はこれらのデータに基づいて、大飯原発が十分な安全対策を取ったとして地元に再稼働を求めた。しかし、地元の安全性への懸念は根強く、再稼働の見通しは立っていない。もし大飯の再稼働が遅れれば、後に続く原発の再稼働のハードルが一層高まるのは確実。関西電力管内では今夏、最大15%程度の電力不足を見込んでいる。このため、全国規模で計画停電の実施が避けられない模様で、他地域でも大幅な節電が求められよう。原発が再稼働しない場合、電力9社の13年3月期決算の最終損益は全社赤字で、赤字額は2兆6765億円に達する見込みである。これは、前期の約1・8倍に当たるという。こういう事態を前にして、今、国内では原発の存続か否かで激しい論議が展開されている。つまり、ゼロから考えるべきだという意見である。コストを優先するあまり、安全が軽視されたという意見。もっとさかのぼり、唯一の被爆国でありながら核の平和利用に踏み切り、原発50基体制に至ったことへの反省等々。原発の今後については、安全性を確保した上で何とか存続を願う現実派。これに対して、安全を成長の犠牲にするなという理想派。この対立は当分の間、この国の論壇で活発に続くことであろう。だが、その一方で膨大な使用済み核燃料の処理をどうするかという問題をまず解決しなければならない。残念ながらその見通しは全然立っていないのが現状なのである。◇消費税増税さて、野田内閣はもう一つ、消費税増税という大問題を抱えている。消費税増税関連法案は大型連休明けの8日に審議入りするが、成立阻止を呼号する小沢一郎元代表が無罪判決を勝ち取り増税反対派はこのところ勢いづいている。小沢氏のグループは衆参で120人規模とされ、民主党内で最大規模を誇っている。衆院の同党会派は291人で、53人が反対票を投じれば、同党単独の法案可決は不可能になる。このため小沢氏は数の力を背景に首相に法案採決の先送りを迫る作戦に出ることが予想される。もし首相がこれに同調するようなら、政権の威信は地に落ちる。そこで持ち上がっているのが、自民党の協力である。それには、自民党主導で問責決議を受けた前田武志国土交通省と田中直紀防衛相の更迭が必須となってこよう。こういう順序で事態が進展していけば話は簡単だが、自民党は民主党の公約である最低保障年金についても撤回を要求している。もし首相がこの要求を受け入れれば、民主党の分裂につながりかねない。こんな野党案の丸飲みでは、選挙に生き残れないといった若手議員の声も無視できないのである。消費増税法案などの実質審議は16日にスタートするが、今国会の会期末6月21日まで残り1カ月余りしかない。野党案の丸飲みでは、とても選挙で生き残れないとの懸念が若手議員から起こっている。首相にとっても頭の痛い話ではあるが、1日1日と決断の時は迫っている。さて、どうするのか。そこで考えられているのが年末までの会期延長である。延長幅は年末まで。こうすれば、衆院解散や党分裂の危機を回避することができるし、首相と増税で足並みがそろいそうな谷垣自民党総裁の息の根を止めることができるとしている。確かに妙案といえよう。消費税増税法案の採決を9月以降に先送りすれば、それまでに谷垣氏の任期が切れるので同氏の再選の可能性が低くなるというもの。輿石幹事長の最優先課題は党分裂と解散の回避である。もし、小沢系の議員が党に造反して法案が否決されれば、首相は解散を選ぶだろう。だから解散が遠のけば遠のくほど時間稼ぎができる。そこで党執行部が考えているのが、年末までの大幅会期延長であった。会期を延長してでも法案が通れば首相のメンツは保たれる。小沢氏側の動きをもにらみながら今首相も必死で最善の策を練っているのであろう。◇きれいごとさて、北海道電力の泊原子力発電所3号機が5日定期検査に入り、日本国内の全原発50基が運転を停止する「原発ゼロ」の事態となった。誠に前例のない異常さである。しかも、定期検査を受けて再稼働を待つ関西電力の大飯原電の3、4号機の復帰の見通しは立っていないままだ。早速問題なのは今夏の電力供給の見通しである。東北、東京各電力管内は多少の余裕を見込んでいるが、全国的には厳しい節電が必至の情勢である。しかし、今国内では「原発なしでもやっていける」といった安易な認識が横行している。原発がなくなれば、それだけ天然ガスなど火力発電用の燃料輸入が増大し、年間3兆円の国富が流出し、突然の大停電にも見舞われることになる。脱原発の流れの一環として今、既存の原発の建て替えが進行中であるが、今後認められない事態も起こりうるだろう。原子力産業は巨大な複合企業の集合体であり多数の技術者、研究者によって成り立っている。その蓄積の集合体が原子力産業なのである。それを一切無視して原発無用論などを主張することは、自らの首に縄を巻くのと同じだ。まず原発無用論のきれいごとからの脱却から始めなくてはならない。事態は切迫しているのである。
□17.「社説」【岐阜新聞】
ギリシャ発の欧州債務危機拡大を国際協調により阻止できるかが問われる中で、主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)が開かれた。首脳宣言は「財政健全化と成長・雇用促進の両立」をうたった。緊縮財政が続き国民が疲弊しているギリシャと、同国の改革を主導する欧州連合(EU)は歩み寄って、現実的な解決策を探るよう促すメッセージと受け止めたい。EUのリーダーであるドイツとフランスは結束して、成長策を含む持続可能なギリシャ改革の道筋を示し、事態を軟着陸に導く責任を果たしてほしい。今日の事態は対応を誤れば、2008年のリーマン・ショックか、それを上回る甚大な破局に世界経済を陥れかねないと認識すべきだ。ギリシャは、反緊縮財政を掲げた政党が躍進した総選挙の結果、新政権を樹立できず、6月の再選挙へと追い込まれた。EUと合意した緊縮策の撤回を求める勢力が勝てば、同国に対するEUなどの支援が取り消され、同国のユーロ圏離脱という最悪の事態に突入しかねない。ギリシャ支援の枠組み崩壊やユーロ離脱が現実のものとなれば、財政再建が道半ばのイタリアやスペインなどにも危機が波及し、欧州経済は大混乱に陥るだろう。欧州向け輸出の比率が高い中国など新興国の景気は低迷し、世界経済への打撃は計り知れない。日本にとっては、ユーロが信用を失うとユーロ安円高が進み、アジアからの逃避マネーも日本市場に流入し、これも円高の要因となって日本の輸出企業の業績を直撃する。このため、各国首脳は危機感を共有している。野田佳彦首相はG8で、危機が他の地域の不安要因にならないよう欧州の努力を重ねて要請。危機拡大に備え国際通貨基金(IMF)の資金基盤強化などを通じ、日本が国際協調に努める方針をあらためて説明した。オバマ米大統領もG8閉幕後、「ギリシャがユーロにとどまる重要性の認識を共有することができた」と強調した。秋に大統領選を控え、欧州危機が米経済に波及し、雇用などに悪影響が与えれば再選戦略が狂いかねないためだ。もっとも、欧州各国は別次元の危機感に襲われているに違いない。第2次大戦で欧州が戦場となり、平和の実現と荒廃からの復興を誓って欧州統合の歴史が始まった。1999年には基軸通貨の米ドルに対抗するため、単一通貨ユーロを誕生させ、いまやドルに次ぐ地位を占める。まさにユーロは統合欧州の象徴だ。もし、ギリシャが本当にユーロを離脱してしまう事態に立ち至れば、EU建設の政治的な挫折をも意味する。統合を後退させないために、独仏以外の各国にも強く結束を促したい。経済危機では、世界の国内総生産(GDP)の約9割を占めるG20に討議の主体が移っている。今回のG8は具体策を打ち出せなかったが、一定の存在感を示した。市場にノーを突きつけられると立ち行かない財政の健全化の重要性を確認しつつ、ギリシャの民意を尊重し成長策の必要性を同時にアピールした。自由経済と民主主義を志向し、率直に意見交換できるG8だからこその役割は、まだ残されているといっていいだろう。
□18.「社説」【北國新聞】
北陸電力が企業や家庭に対して夏の節電を求めた。政府が北電管内に2010年夏と比べて5%以上の節電目標を設定したのに対応した要請である。北電は昨年の夏も節電を求めている。2年続きの要請は異常といえる事態である。北電は豊富な水を使って発電できるため、産業用の電気料金が他社より安い。石川、富山両県は企業を誘致する際に安価な電力を売り物にしてきた。東日本大震災後は関東や関西のような電力不足の不安がないこともセールスポイントになっていた。節電要請が出た今は進出企業から「北陸に工場を移した意味がなくなる」との声が聞かれる。強制でないとはいえ、節電要請が重なれば北陸の競争力を削(そ)ぐことになりかねない。供給力に余裕が残っている北電が管内に節電を求めるのは、関西、九州に電力を回すためである。原発を再稼働できないため、夏に電力不足が深刻になるのは予想されていた。有効な手だてを打たずに広い範囲に節電を求める事態を招いた政府の責任は重い。電力危機を目前にして、野田佳彦首相は大飯原発の再稼働について「判断の時期は近い」と述べた。しかし、大飯原発の電力を消費する大阪市の市長が声高に再稼働を批判し、滋賀と京都の知事が慎重姿勢を崩さない中で再稼働に踏み切れば、同意を求められた福井県とおおい町が悪者になってしまうのは目に見えている。電力不足を回避するには、首相が腹を決めてエネルギー政策の方針を示す必要がある。原発をエネルギー政策の中でどう位置付けていくのかを明確にしないまま再稼働すれば、地元が持たない。2年続きの電力不足を招いたのは野田政権の無策である。企業や家庭に協力を求める役割を電力会社に任せるのは筋が違うのではないだろうか。政府には、いつまで節電が必要で、いつから安定供給を実現するのかを説明する覚悟がいる。場当たり的な対応を続ければ今冬も深刻な電力不足に陥りかねない。各電力会社の供給力が安定しない中で、電力の融通と節電要請を重ねることは、景気減速を全国に拡散させることと同じであると肝に銘じるべきである。
□19.「論説」【福井新聞】
原子力政策をめぐる自民党の取り組みが希薄だ。国会では社会保障と税の一体改革審議に応じたものの、喫緊の課題である原子力規制庁設置の議論に応じようとしない。一体改革を衆院解散・総選挙の駆け引き材料に利用し、原発も小道具としているようにみえる。安全規制の要となる規制庁の形が見えずして、関西電力大飯原発3、4号機の再稼働を急いでも到底、国民の理解は得られないだろう。規制庁設置をめぐり、民主党は国会対策委員長会談で自民党側に18日から衆院本会議での法案審議に入るよう提案。自民党はこれを拒否した。「参院で問責決議を受けた2閣僚の交代がない」というのが理由だ。政府提出法案の審議は消費税関連法案だけが唯一の例外。強硬戦術により、先行き不透明な同法案審議が長引けば規制庁設置は入り口にたどり着けない。東京電力福島第1原発事故を教訓に、安全の復興を果たさなければならない時だ。原子力政策を抜本的に見直し、もし安全確保ができないならば、撤退しかない。その分岐点にある象徴が規制庁ではないか。環境省の外局として環境相が人事や予算を決定する民主党案に対し、自民党案は同じ外局でも国会行政組織法三条で定める独立行政委員会を主張する。安全規制の制定権や原発の設置・廃止の許認可権を持つものだ。消費税増税関連法案を最優先に位置づける民主党は、自公対案を丸のみする姿勢を見せるが、国民に分かりやすく、内容を詰めるのが国会の役目だ。重要なのは平時、緊急時の規制権限をどう確保するかであろう。首相や大臣に任せられないのは福島原発事故時の対応で露呈したはずだ。先進組織の米原子力規制委員会(NRC)でさえ、高い独立性、専門性、情報収集・分析力を有しながらも、電力側の抵抗に遭っている。斑目春樹原子力安全委員長が自ら「人災」と称した福島原発事故は経済産業省原子力・保安院にも重大な責任がある。規制体制の再構築は最優先の課題だ。政策の定まらない民主党政権を責め立てるのは簡単だが、自民党こそ原子力政策再構築の最大責任がある。わが国に原発を導入し、結党以来一貫して原発を推進。政官財学による「原子力ムラ」を形成し、健全な安全思想の醸成を怠った一因は長期政権の自民党にある。自民党は昨年7月に総合エネルギー政策特命委員会を設け、2月に中間報告した。だが肝心の原子力政策は「向こう10年で結論を出す」として先送り。内外の批判を受け慌てて「脱原発は不可避」と修正したが、党内の原発推進、脱原発派の対立は依然抱え込んだままだ。報告全体も明確な理念を示されず、方策を羅列したにすぎない。歴史的には「安全神話に依拠した結果、惨禍を招いた」として「深く反省」しているが、その自己検証は不十分であり、国民の不信感は根強い。今夏めどとした最終報告がこうした過失を教訓に、実効性ある内容になるのか。政治の信頼回復は、自民党が一番背負っていることを自覚する必要がある。
□20.「社説」【京都新聞】
米ワシントン郊外であった主要国(G8)首脳会議が閉幕した。共同宣言では、欧州債務危機の脱却に向け財政健全化と同時に成長・雇用の促進を求めた。イラン核開発疑惑やシリア情勢に関しても強い態度で臨む姿勢を示した。世界を取り巻くリスクへの認識では一致したが、具体的な対応策が打ち出せたわけではない。それでも、欧州債務問題では、財政緊縮一辺倒だった政策からの修正に言及するなど、フランス大統領選やギリシャ総選挙の結果をふまえた路線にかじを切った。ギリシャに対しては、財政緊縮策を履行してユーロ圏にとどまることに強い期待感を示した。注目のフランス新大統領オランド氏はオバマ米大統領との会談で「経済成長が優先課題」との認識で一致。ギリシャなどに厳しい財政緊縮策を求めるドイツのメルケル首相との違いが際立った。議会選や大統領選を控えて成長戦略を志向する仏米と、財政出動による景気対策に否定的な英独との足並みの乱れを印象づけた。欧州経済をリードする独仏の考え方の違いは、これまで進めてきた債務危機対策の根幹にもかかわる。23日からのEU首脳会議でも十分に議論を尽くしてほしい。地域情勢への対応に関しても、G8各国の温度差が目立った。イランに対しては軍事施設への立ち入りの受け入れを、シリアへは反体制勢力との衝突を続けるアサド政権へ即時停戦を迫った。核実験をちらつかせる北朝鮮には「強行すれば国連安保理に行動を求める」と強く警告した。野田佳彦首相は北朝鮮のミサイル発射を批判して口火を切ったが、議題の大半はイランとシリアに費やされたという。そのシリア・アサド政権と友好関係にあるロシアのプーチン大統領は今回の首脳会議を欠席した。北朝鮮に強い影響力を持つ中国はG8のメンバーではない。「関係国」不在の議論から生まれた宣言がどれだけ実効性を持つのか、不透明だ。中国なども加わる20カ国・地域(G20)首脳会合の存在感が高まる中、G8だけで国際社会の重要課題を引っ張る難しさを、あらためて感じさせた。首脳宣言には、国際エネルギー機関(IEA)に対し、備蓄石油の放出を求める用意があるとする声明も盛り込んだ。中東情勢の不安定化によるガソリン価格高騰が大統領選に影響するのを避けたい米国の思惑が透けてみえる。G8初出席の野田首相は、消費増税法案成立への意欲と2%以上の成長率達成を表明するにとどまった。首相が毎年のように代わっていては、日本の存在感は薄れるばかりだ。
□21.「社説」【神戸新聞】
東日本大震災を受けて、政府が災害対策基本法の改正案を閣議決定した。今国会での成立を目指す。複数の自治体が同時に被災する大規模広域災害への対策を盛り込んだ点が大きな特徴だ。被災地から避難者の受け入れを打診された市町村に公共施設の提供を義務付け、県境を越えた避難は都道府県や国が調整を担うとした。救援物資は、被災市町村の要請を待たずに都道府県や国が独自判断で供給できると規定した。東海・東南海・南海地震など広域災害への備えが喫緊の課題となっている今、必要な改正だ。ただ、今できる範囲でほんの一部を見直したにすぎない。基本法を含めた災害対策法制全体の再構築を、早急に進めなければならない。災害対策基本法は、5千人を超える死者・行方不明者を出した1959年の伊勢湾台風を機に制定された。阪神・淡路大震災後も、自衛隊への派遣要請の権限を都道府県知事だけでなく市町村長に広げるなど、さまざまな見直しが行われた。今回は、そのとき以来の大幅な改正となる。東日本大震災では、基本法の不備が再び浮き彫りになった。一次的な災害対応を担うとされる市町村が庁舎や職員を失い、機能不全に陥ったからだ。そのため、改正案は国や都道府県の権限を強化している。自治体同士の応援態勢についても、都道府県や国が調整する規定を設けた。基本法は国や自治体の権限を定める一方で、住民や企業などとの協働を含めた総合的な災害対策を示していない。改正案では、地方防災会議の委員として自主防災組織のメンバーらを追加したが、「公助」に偏った対策を根本的に見直す必要がある。そのほかにも、現在の基本法は「復興」の規定がないなど、多くの問題点が指摘されている。災害救助法などの関連法制も、大規模広域災害に耐えうる内容となっていない。残された課題について、政府はさらに議論を重ね、次回以降の国会で改正する方針という。しかし、大災害は待ってくれない。長々と議論ばかりしている場合ではないだろう。日本では大災害のたびに新たな制度ができ、災害対策法制がつぎはぎ状態になっている。法の不備がいつも被災者を苦しめてきた。災害列島の日本では、法制度の構築が国の将来に関わる重要な課題であることを、忘れてはならない。
□22.「金曜時評」【奈良新聞】
今月5日深夜、国内の商業用原子力発電所で唯一稼働していた北海道電力泊原発3号機(北海道泊村)が停止。これで42年ぶりに全原発が停止した。「原発ゼロ」の日々が静かに続く。今も予断を許さない状況下にある東京電力福島第1原発事故から1年以上が経過し、焦点は停止した原発の「再稼働」だ。これからのエネルギー政策の方向を示し、原発を推進するか、やめるかを決断するのが政策担当者(政府)の仕事。だが政府の対応は遅く、「決められない」民主党政権の体質をまたも露呈した格好だ。例えば、つい最近の事で言えば、国の原子力委員会・小委員会が16日、原発の使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」について、使用済み核燃料の処理に関して再処理、地中廃棄、両者並存の三つの方法を比較して、原発依存度が不透明な場合は、並存が最も優れているという総合評価を下した。この玉虫色の総合評価なるものを、どう理解すればいいのか。「原発依存度は低下してゆくだろうが、原発ゼロになることはありません」と言っているのだろうか。原発依存度が不透明の場合、という言い方は、何も判断していないのと同じではないのか。原子力委員会は、国の原子力開発の方向を決める計画「原子力政策大綱」を定める中核の機関。その小委員会が今ごろこんなことを言うのでは頼りなくて仕方がない。では、県関係の国会議員は原発についてどう発言してきたか。自民党の高市早苗衆院議員などが自らのホームページで発言したりしているが、まとまったものとしては民主党の馬淵澄夫衆院議員の言及に注目せざるを得ない。馬淵氏を会長とする同党有志の「原子力バックエンド問題勉強会」はこの2月、第1次提言をまとめ、公表した。昨年3月26日から94日間にわたって、首相補佐官として福島第1原発事故の対応に当たってきたと自負する馬淵氏の取り組みの成果が問われる。馬淵氏率いる勉強会の取り組みはまさに、先に挙げた原子力委員会・小委員会が評価を下した使用済み核燃料の処理に関わる問題を含む。原子力の「バックエンド」とは「原子炉の廃炉や放射性廃棄物の処理、核燃料サイクルにかかわる事業の総体」を指し、馬淵氏らの“政策提言”が加わることで、事態をさらに混乱させないかと懸念する。勉強会の第1次提言からは「ゼロからの見直し」「複線的・複眼的視点に立った現実的な政策判断」という抽象的な言葉ぐらいしか印象に残らない。他は「勉強してきました」というだけのことではないか。現状では、見直されるという原子力政策大綱やエネルギー基本計画、革新的エネルギー・環境戦略などの整合性さえはっきりしないのだ。国内総発電量に占める原発依存度は平成22年度で約26%。これを上げるのか、下げるのか、ゼロにするのか。それを言わなければ馬淵氏の政治判断にはならない。
□23.「論」【紀伊民報】
21日朝の天体ショーに日本中が注目している。太陽が月に隠されてリング状に輝く「金環食」が観測できるからだ。和歌山県で観測できるのは282年ぶり。朝の間だけでも晴れてくれよと、期待が高まる。金環食が見える地域は九州から四国、近畿、中部、関東にかけて帯状に広がる。その中でも、金環食の継続時間が長く、よりきれいな光の輪を見ることができるという「中心線」付近に、串本町など紀南地方が位置する。そんな「特等席」から見る天体ショーを地域で盛り上げようと、紀南各地で、イベントや観察会が計画されている。串本町では、飲食店が特産のキンカンを使った菓子やパン、シャーベットなどを販売する「スタンプラリー」があるし、観光関係者は記念Tシャツを作ったり、町内にのぼりやてるてる坊主を設置したりしている。新宮市、那智勝浦町、白浜町なども観察会を開く予定。すでに、各地で観察に向けた講習会も開かれている。5日には、国内外で9回の金環食や皆既食の観測歴があるという和歌山大学の尾久土正己教授による講座が田辺市内であり、親子連れら450人が集まった。尾久土さんは「日食を見るとびっくりするくらい感動する」と語り掛け、その魅力を伝えた。しかし、観測には十分な注意が必要だ。日食は太陽の前を月が横切る時に、太陽を隠す現象だから周囲が暗くなるというイメージを持つ人がいるかもしれない。しかし、横切る時の月の見かけの大きさが太陽より大きく、すべてを隠す皆既食と違い、金環食はリングのように太陽が残る。照度は通常の晴れているときの十数分の1になるが、通常ではその変化に気付かないほど明るいという。もともと、太陽の光は非常に強く、そのまま目にしたり、双眼鏡や下敷き、サングラスなどを使った不適切な観察をするのは非常に危険だ。視野の一部が暗くなったりひずんだりする「日食網膜症」になる危険性もある。日本眼科学会などは「日食中でも、太陽を直接見ることは非常に危険です。適切な方法で安全に観察を」と呼び掛ける。とくに子どもは眼球の光透過性が高く、注意が必要という。尾久土さんも講座で、何度も注意を促した。必ず専用の「日食眼鏡」を使い、周囲から光が入らないように両手で持って見ること、日食眼鏡による観察でも、長時間は見続けないこと、子どもは必ず大人と一緒に観察すること。そんなふうに強調した。撮影にも注意が必要。写真で目にするリング状に輝く太陽は、特殊なフィルターを使って撮影している。フィルターなしで撮影することは極めて危険だ。紀南地方で、太陽がリング状に見えるのは午前7時25分ごろから7時半ごろにかけて。子どもの通学時間とも重なる。学校や保護者は観察する子どもの安全には十分注意してもらいたい。金環食は、宇宙への関心を深める素晴らしい教材である。安全を確保した上で、世紀の天体ショーを楽しんでいただきたい。(Y)
□24.「社説」【山陽新聞】
米大統領の山荘キャンプデービッドで開かれていた主要国(G8)首脳会議が閉幕した。主要議題の欧州債務危機への対応については、財政健全化と同時に成長・雇用の促進を求める首脳宣言を採択し、再選挙を控えたギリシャにもユーロ圏にとどまるよう強い期待を示した。欧州債務危機を受け先進各国は財政健全化を最優先課題に据えてきたが、軌道修正を図ったともいえる。フランスで成長路線を掲げるオランド政権が発足するなど欧州全域で広がる緊縮財政への反発が影響を及ぼしたのは間違いあるまい。宣言は中長期的な経済強化に向け「必要なあらゆる措置を取る」と明記し、構造改革や民間資金を活用したインフラ投資の推進などを掲げた。ただ、成長重視の米仏と財政出動に慎重な英独の間では温度差がある上、各国とも財政事情が厳しい中での景気刺激策には限界もある。市場の信頼をどれだけ得られるかは不透明といえよう。日本が強く求めていた北朝鮮への対応では、弾道ミサイル再発射や核実験を強行すれば「国連安全保障理事会に行動を求める意思がある」との警告が盛り込まれた。評価したいが、議論に割かれた時間は短かったようだ。G8に中国が入っていないこともあり、北朝鮮に対する圧力の効果は限定的とみられる。緊迫するシリア情勢やイラン核開発の問題についても、ロシアのプーチン大統領が欠席したため議論が深まらず、大きな進展はみられなかった。今回、G8が諸課題の解決に向けて明確な道筋を示せたとは言い難いだろう。各国の立場の違いも目立った。新興国を加えた20カ国・地域(G20)首脳会議の存在感が増す中、今後、どういう役割を果たしていくのかも大きく問われそうだ。
□25.「社説」【中国新聞】
このところ「仲良しクラブ」や「親睦会」と称される。形骸化が指摘されて久しい主要国(G8)首脳会議(サミット)である。経済成長に行き詰まり借金にあえぐ大国が目立ち、国内総生産(GDP)で世界2位の中国は入っていない。米ワシントン郊外で開かれた今年のサミットも、さほどの成果はなかったというほかない。欧州の債務危機、北朝鮮やイランの核問題、シリア情勢など懸案はめじろ押しだが、踏み込んだ提案は乏しく、消化不良感が残ったからだ。議長国である米国のオバマ大統領は、秋の再選を目指し、いっそうのリーダーシップを示したかったはずである。水を差したのがロシアのプーチン大統領だ。「組閣に専念する」という理由で欠席した。ロシアがG8の全日程に参加するようになった2003年以降で、大統領の欠席は初めてという。G8の求心力の低下を如実に物語っている。もちろん緊迫した世界情勢下で主要国首脳が率直に意見を出し合い、結束を強めること自体に一定の意義もあろう。最大の焦点となった欧州危機では「ギリシャはユーロ圏にとどまるべきだ」との認識で一致した。当然である。ユーロ圏から離脱する事態を迎えれば、金融システムが大混乱し、世界経済に打撃を与えかねない。危機からの脱却には、財政再建だけでなく経済成長も同時に追求するほかない—。そうした考えを各国首脳が再確認したことこそ、今サミットの最大の収穫といえそうだ。ただ、主要国がほぼ共通して頭を抱える難題である。スローガンにとどめず、各国がどう協働して解決するかが問われている。この点で、国際社会はもっと具体的な行動計画を期待していたはずだ。日本も例外ではない。野田佳彦首相は、昨年11月にフランス・カンヌであった20カ国・地域(G20)首脳会合に続き、今サミットでも消費増税を国際公約に掲げた。しかし、増税と経済成長をどう両立させていくのか。各国首脳も、そこが聞きたかったに違いない。理念ばかりで行動が伴わないいらだたしさは、3度目の核実験が懸念される北朝鮮問題への対応でも浮かび上がった。野田首相は「悪行に対価を与えない意思を明確に示すべきだ」と述べ、協議をリードしたとされる。だが今月半ばの日中韓首脳会談でも、北朝鮮のお目付け役である中国に影響力を及ぼすことはできなかった。核実験阻止に向けた3国連携に合意したが、中国の反発で共同宣言には盛り込まれなかった経緯がある。サミットでいくら主要国が合意に至っても、実行力を伴わなければ意味がない。世界から、ますますそっぽを向かれてしまうだろう。今や経済分野を中心に、世界を動かす主要な役回りは中国やインドなど新興国を交えたG20に移行したとの指摘も根強い。サミットの必要性も含め、G8メンバー各国は自ら、その存在意義を問い直す時にきているといえよう。いかに国際社会に貢献できるか。「仲良しクラブ」から脱却する鍵は、その原点に立ち返ることにほかなるまい。
□27.「社説」【日本海新聞】
鳥取県の平井伸治知事の2期目がスタートし、1年が過ぎた。相変わらず東奔西走の毎日で、その姿を知る県民から高い支持を集める。情報発信しながら「県のセールスマン」を演じる知事の役者ぶりが光る半面、第2幕の役柄にやや違和感を感じる場面もある。自らのスタイル築く「パートナー県政」「みんなでやらいや未来づくり」。平井知事の1、2期目のテーマだ。県民と一緒になって新しい鳥取県の姿をつくっていく。柱となるのが経済であり産業の振興。そのため自らが先頭に立ってパフォーマンスをする。意識する前知事との違いだ。「食のみやこ鳥取県」に代表される発信事業に県民は呼応。北東アジアとの交流や観光振興、企業誘致などでも実績を重ね、1期目で平井流県政のスタイルを築いた。知事の考えはこうだ。鳥取県のような小さな県は何もしないとしぼんでしまう、情報を常に発信することで動かしていく。ことしの目玉の「マンガ」もそうだろう。半面、その内容に物足りなさを感じることもある。例えば漫画一つとっても、コンテンツ産業としてのアニメや漫画に対する知事の考えが事務方や市町村と共有化されていないのでないか。準備期間が短いこともあるが、まだまだ住民を巻き込んだ動きになっておらず、一過性のイベントに終わらせない方法が見えてこない。住民ニーズはどこに一方、第2幕は変化も期待した。県政課題への政策面での深化。つまり「現場実態」に手を突っ込むことだ。県には、働く場がない↓人口が流出する↓地域が疲弊する、という負のスパイラルが依然として存在する。農業、福祉・介護、教育、中山間地振興、いずれをとっても重たい課題が横たわる。きゅうきゅうとする県民生活の実態もある。それら諸課題に対し、どのように将来への道筋をつけ、鳥取県版のモデルを作り上げていくか。もちろん、やっていないわけではないが、県の取り組み以上に生身の話は深刻だ。県職員は現場の声を吸い上げ、その声は知事に伝わっているのか。政策として反映されているか。漫画は活性化への切り口の一つであって、地域に目をやると、解決が急がれる問題が多々ある。住民ニーズはどこにあるのか。難しいことに手を付けると、場合によっては批判を受けるかもしれないが、そうでないと県政に「たくましさ」が付いてこない。ギアチェンジも必要平井県政の方向は間違っていない。知事自らが走り回って種をまき、県を盛り立てるためあえてパフォーマー役も務めてきた。ただ、もうそろそろイベントや会合への出席などの役回りは部下に任せ、“別の顔”を印象づけてもよい。これまでの5年間を見ても、知事は困難な場面にぶつかったときほど本領を発揮している。多くの県民が知事の姿勢を高く評価する一方、鳥取県の将来像が具体的につかめない人もいよう。ある面、知事人気が現場実態との緩衝材的な役割を果たしてきたのかもしれない。しかし、仮に第3幕があり「完成形」とするなら、ギアチェンジするときではないか。
□28.「論説」【山陰中央新報】
山陰両県に本店を置く山陰合同、鳥取、島根の地元銀行3行の2012年3月期(11年4月〜12年3月)決算が出そろった。低金利が続いているため、各行とも売り上げに相当する経常収益が減少する一方、取引先の倒産が減るなど損失発生に備えた費用が減った結果、山陰合銀と島根銀が純利益を増やした。前期は岡山市にあるバイオ関連企業、林原グループ倒産のあおりを受けて山陰合銀と鳥取銀が多額の不良債権処理を迫られたが、今年3月期は大型の経営破綻は影を潜め、直接的な影響は少なかった。山陰両県の企業倒産は表面的には小康状態を保っている。しかしそれは、中小企業の資金繰りを支援する「中小企業金融円滑化法」によって支えられている側面が大きい。リーマン・ショック後の経済対策として09年に施行された円滑化法は、再延長されて来年3月末で期限を迎える。返済期限の延長などに柔軟に応じるよう金融機関に求め、中小企業の資金繰りを支援している。しかし期限切れ以降、金融支援を打ち切られて資金繰りに行き詰まる企業が出る恐れがある。地元金融機関としてどう対応していくか。不良債権を抑えて健全経営を保とうとすれば、業績が悪化している取引先企業を整理する判断を迫られる。しかしそれを徹底すると、企業倒産が増えて地域経済を冷え込ませる恐れがある。円滑化法の期限切れに向けて問題を抱える取引先企業とどう向き合っていくか。金融機関としての健全経営と地域経済の振興を図るバランス感覚が問われている。12年3月期決算によると、銀行本体と子会社を合わせた連結ベースでは、3行とも経常収益は前期比マイナスとなった。低金利で銀行収益の柱となる金利収入が減ったことが大きい。貸出金利が下がれば預金金利も下がるが、貸出金利の下げ幅が預金金利の下げ幅を上回ったことが収益を圧迫した。その一方で取引先企業の倒産が減るなどで不良債権処理費用が減少し、利益を押し上げた。損益では山陰合銀と島根銀が税引き後の純利益で増益となったのに対し、鳥取銀は減益となった。鳥取銀が減益となったのは法人税率引き下げに伴い、繰り延べ税金資産を取り崩したためであり、業績そのものにかかわる要因ではない。返済が滞っている不良債権(単体ベース)は山陰合銀が763億円(貸出金など総与信に占める割合3・35%)、鳥取銀147億円(同2・27%)、島根銀138億円(同5・71%)。いずれも経営に影響を与えるような水準ではないが、円滑化法による金融機関への指導がなくなる来春以降増える恐れがある。これについて各行とも期限が切れたとたんに経営破綻が急増するようなことはない、とみている。ただ期限切れに備えて支援を継続するかどうか、取引先ごとに見極めをつける時期に来ているという。見極めは避けられないが、企業の将来性を見限る拙速な判断は避けたい。リスクのなかで企業の潜在的な成長力を引き出す目利きの力が問われている。
□29.「社説」【愛媛新聞】
裁判員制度は施行丸3年を迎え、裁判員法が定める制度見直しの時期に入った。最高裁のまとめでは、裁判員裁判の対象事件で一審判決が控訴審で破棄される割合は制度導入後、大幅に下がった。市民感覚を反映した一審判断を尊重する運用の流れとして一定評価されよう。一方で、対象事件の範囲や死刑判断の在り方、裁判員の守秘義務範囲の明確化など多くの課題を抱えている。裁判員の負担をできるだけ軽減し、司法が市民により開かれた場となる方向へと見直し論議を深めたい。見直しの焦点のひとつが審理対象の範囲だ。現行では最高刑が死刑か無期懲役、または故意に被害者を死亡させた重大事件に限られている。日弁連は3月、起訴内容を争う被告が希望すれば、すべて裁判員裁判の対象とするよう国に提言した。冤罪(えんざい)が問題となっている痴漢事件や汚職事件などを想定したものだ。市民がわが身に置き換えられる身近な事件に対象を広げる意味は大きい。逆に、死刑求刑事件は対象から外す、あるいは死刑判決に全員一致ルールを求める意見がある。確かに、本来職業裁判官が担うべき究極の死刑判断に、素人が関与することには抵抗があろう。だが、重い判断に直接、主体的に関わり自らの問題としてとらえることが主権行使につながることにも着目したい。むしろ、裁判員経験者の心のケア対策の充実を図らねばならない。死刑判決の多数決原理も検討を要しよう。裁判員には守秘義務が課せられる。非公開の評議での意見や評決の内訳、評議経過、事件関係者のプライバシーなどは話せない。罰則を伴う。記者会見などで認められる感想などは裁判の断片情報でしかない。秘密の範囲は曖昧で、裁判員がどんな役割を果たしたかなどの検証をしづらいのが現状だ。守秘義務の範囲を被害者や裁判員の個人情報に限定し、情報をもっと積極的に開示すべきだ。経験を生かすことこそ制度改善に不可欠と心得たい。裁判員候補者の6割近くの辞退率にも留意しておかねばならない。よりよい判断のために、できるだけ多様な人に裁判に参加させることが法の要請であるはずだ。趣旨に沿っているとは言い難い。裁判員の選任手続きは非公開で、検察官や弁護人の請求で不選任となる基準も不明瞭だ。否認事件の拘束時間が増える一方、審理の理解度も年々低下傾向にある。迅速でわかりやすい審理への見直しが必要だ。ただし、裁判員の負担軽減と称して公判前整理手続きや裁判運営にプロ側が介入し過ぎると、審理が有名無実化する恐れがあることも忘れてはならない。
□30.「社説」【徳島新聞】
米国で開かれた主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)は、欧州債務危機の克服に向けて財政健全化と経済成長との両立を目指すとした首脳宣言を採択し、閉幕した。欧州危機への対応で各国がこれまで最優先にしてきたのは、財政健全化である。市場からの信頼を確保するためだが、緊縮策が行きすぎると景気後退や雇用の悪化を招き、財政がさらに厳しくなるという負の循環を引き起こす。ギリシャの総選挙で緊縮路線を取ってきた与党が敗れ、フランス大統領選で経済成長の重要性を訴えたオランド氏が当選したのは、緊縮策への反発が欧州で強まっていることを示したものだ。そうした状況を考えれば、緊縮だけではなく経済成長も重視するとしたのは理解できる。ギリシャの政局が混迷し、世界経済に深刻な打撃を与えるユーロ圏離脱という最悪のシナリオも予想される中、先進各国は結束して事態の打開に当たってもらいたい。と同時に、放漫財政で債務を膨らませ市場から見放されたギリシャには、あらためて自らの立場を直視するよう求めたい。ユーロ圏離脱となればギリシャは急激なインフレに見舞われ、経済が崩壊するのは必至だ。時間がかかろうとも、地道に緊縮策を進めなければならない。G8が財政健全化とともに成長を目指すとしたが、問題はいかに両立させるかである。首脳宣言は経済成長の方法として、民間資金を活用したインフラ投資や自由貿易の拡大など「必要なあらゆる措置を取る」としたが、具体策は示せなかった。日本をはじめ欧州、米国とも財政は苦しく、新たな財政出動は難しい。新エネルギーや環境など、各国が得意な分野を生かした産業を育成していくことが肝心だろう。緊縮策と成長策とのバランスも重要だ。市場関係者の間では、緊縮最優先からの転換に懸念の声が出始めているという。巨額債務を抱えるイタリアやスペインに対する不信感が高まり、国債が買われなくなれば世界的な景気後退につながる恐れがある。財政規律の緩みへの警戒を怠ってはならない。サミットでは、3回目の核実験強行の構えを見せる北朝鮮や、核兵器開発疑惑が深まるイランへの対応も協議した。北朝鮮に対しては、再び挑発を行えば国連安全保障理事会に対抗措置を求めると警告した。挑発行為で対価を得られず、孤立を深めるだけだということを、北朝鮮は理解しなければならない。同国の伝統的な友好国であるロシアも今回の議論に積極的に関わったとされ、北朝鮮に影響力を持つ中国への強いメッセージになると期待できる。イランをめぐっては、軍事施設への立ち入り検査を認めるなど、同国が早急に具体的な行動を取る必要があるとの認識で一致した。23日には、国連安保理常任理事国にドイツを加えた6カ国とイランとの協議が予定されている。産油国であるイランの問題は日本にも大きな影響がある。平和的な解決が図られるよう望みたい。
□31.「社説」【高知新聞】
米国で開かれていた主要国(G8)首脳会議は欧州債務危機を克服するため、財政健全化と経済成長の両立を求める首脳宣言を採択し閉幕した。欧州危機への懸念を主要国が共有できた意義はある。しかし、どうやって両立させていくのか、具体策に欠けていると言わざるを得ない。G8の半数は欧州危機の当事国であり、日米などにとっても「対岸の火事」ではない。宣言にとどまらず、両立へ向けた実行力が求められる。欧州危機が表面化して以降、先進各国は市場の信頼を確保するため財政緊縮策を優先させた。ところが、それだけではかえって景気後退と税収減を招く悪循環に陥る国もあるなど、世界経済は回復基調になっていない。G8が財政再建に加えて成長重視を打ち出した背景には、こうした事情がある。とはいえ、言うはやすく行うは難しだ。日本でも野田政権が両立を目指しているが、財政健全化に向けた消費税増税法案は成立のめどが立っていない。一方で、政府が2010年に策定した「新成長戦略」計409項目のうち、約9割は成果が上がっていない。環境・福祉分野での新産業の創出や観光振興など、中長期的な目標が多いこともあるが、成長路線がいかに険しいかも示していよう。景気浮揚のための財政出動も考えられる。ただ、財政余力が限られる中では効果も限定的となる恐れは拭えない。G8の中でも英独はこれに慎重で、国政選挙を控えた米仏との温度差も指摘されている。だが、首脳宣言で両立路線を掲げたにもかかわらず、国内事情を理由に各国の危機対応の基本線が揺らいでしまっては、市場の動揺も増幅し危機がさらに深刻化しかねない。経済成長を促す「特効薬」はない。各国は構造改革や民間投資の促進、自由貿易の拡大などに地道に取り組む必要がある。財政事情の範囲内で適宜、景気刺激策を実施することが必要なケースもあるだろう。あらゆる手立てを組み合わせて、各国が財政再建と経済成長の実績を積み上げていくしかない。中国など新興国の台頭で、国際社会では20カ国・地域(G20)首脳会合の影響力が増している。G8が結束して行動しなければ、その存在感はますます失われていく。
□32.「社説」【西日本新聞】
裁判所から違憲状態と指摘され、選挙区の「1票の格差」是正を迫られているのに、衆参両院の選挙制度改革をめぐる与野党協議が一向に前に進まない。衆院小選挙区の1票の格差については違憲状態を放置したまま、法が定める格差是正案の勧告期限も無視して、違憲・違法の状態にある。国会の怠慢というより、立法府が自らつくった法律を守らないという前代未聞の異常な状況である。衆院は今週にも、与野党幹事長が打開に向けた協議に入るというが、是正措置をめぐって早期合意のめどがあるわけではない。参院も同様である。議席の増減に直結する選挙制度の改変は、各党の利害が絡んで妥協点を見いだすのは容易でない。合意に時間がかかるのは理解できるが、現在の協議難航の裏には衆院解散・総選挙をにらんだ与野党の政局的な思惑が交錯している。違憲・違法状態の早急な是正を迫られているのに、解散をめぐる駆け引きを絡めて、意図的に結論を先送りしているようにしか見えない。議会制民主主義が公正・平等な選挙制度に支えられていることを、国会は忘れているのではないか。違憲状態を脱するための当面の是正措置さえ決められない政治状況を私たちは憂慮する。来年7月には参院通常選挙がある。衆院は解散しなくても来年8月には任期満了となる。衆院、参院とも、次期選挙を憲法違反としないために、それまでには格差を是正しておかねばならない。怠れば、次の選挙は最高裁から「選挙無効」とされる可能性がある。そうなれば、選ばれた国会議員はもとより、国会自体の正統性が失われる。そうした事態を避けるためには、1票の格差が違憲・違法とされない範囲(衆院は2倍未満)に是正する法案を今国会中に提出しておく必要がある。6月21日の今国会会期末まで1カ月しかない。幹事長協議でも与野党が法案提出合意に至らないようなら、両院議長が与野党に党首会談を呼びかけ、違憲状態打開に乗り出すべきである。国会の機能不全の回復や混乱の収拾は議長の役割である。「三権の長」としての権威と責任もそこにある。もちろん、選挙制度改革は数年後に再見直しが必要となるような、その場しのぎであってはならない。公約した定数削減や両院の役割を考慮した抜本見直しが求められているのは言うまでもない。とはいえ、いま最優先すべきは違憲状態の解消であり、問われているのは、それを放置している政治の無責任である。緊急避難的な措置ではあっても、ここは抜本改革協議を継続することを前提に、格差是正案の合意を先行させたい。参院にブロック制選挙を導入する大胆な改革を提言した西岡武夫・前参院議長亡き後、衆参両院とも議長に、その気概と存在感が乏しいのが残念である。
□33.「社説」【宮崎日日新聞】
節電と省エネ一層進めよう政府は、7月から約3カ月間の節電を求める夏の電力需給対策を決めた。電力不足に陥る可能性がある電力会社だけでなく、供給に余裕のある電力会社にも節電目標を定め、業界が協力して苦境を乗り切るよう提唱している。猛暑だった2010年夏に比べて九州電力は10%、関西は15%、北海道と四国は7%、中部、北陸、中国にも5%の節電を要請。厳しい夏になりそうだ。しかし、昨年から今年にかけて宮崎日日新聞社をはじめ全国で実施された各種世論調査では「脱原発」の方向が主流になっている。国民も原発に頼らず、節電を心がけてこの夏を乗り切ろうと考えているはずだ。■「計画停電」の準備も■本県が関係する九電に限ってみると、節電期間は7月2日〜9月7日。平日午前9時〜午後8時に、7%の節電を達成した昨年夏並みか、それ以上の節電を要請。ピーク時間帯の午後1〜5時は、さらに3%以上を求めた。九電は企業向けの需要抑制策として、需要増加が予想される際、使用抑制を事前通知した上で、抑えた電力量に応じて料金を割り引く制度を導入。また家庭向けには、電気料金を日中のピーク時に高くし、夜間に安くする時間帯別料金を採用する方針。さらに緊急時に節電を要請するメール配信システムへの登録を促す。ただ、フル稼働によって発電所が故障して停止するようなことがあれば、突然の大停電といった不測の事態も起きかねない。このため九電は、地域ごとに輪番制で一定時間電気を止める「計画停電」の準備も進める。対策は万全ではなく、危うい綱渡り状態であることを示唆したといえる。■中長期的見通し示せ■東日本大震災からの復興が進む東北、東京管内には、数値目標を伴わない節電を要請する。火力発電増強などで需給が比較的安定していることもあるが、不便を強いられている被災地のことを考えると納得できる。また需給が最も厳しいとされる関西については当初、法律で強制的に電気の使用を制限する「電力使用制限令」の発動も検討するとされた。しかし他電力からの融通拡大が見込めるとして見送った。昨年夏に発動された東京では、産業活動に大きな障害が生じただけに、妥当な判断といえる。原発がすべて稼働停止した影響は決して小さくはない。当然、電力不足は夏場以降も続きそうで、随分と浸透してきたとはいえ、利用者の一層の意識改革も必要だ。家庭では無駄な電気は使わない生活を、企業は省エネを一段と進める仕事の仕方を工夫したい。さらに政府には、中長期的な需給見通しを明確に示すよう求めたい。「原発の再稼働問題にどう対応するのか」「再生可能エネルギーによる発電の工程表は」などの疑問にきちんと応え、不安解消に全力を注ぐべきだ。
□34.「論説」【長崎新聞】
隣県協力「競争と協調」で新時代を新聞の顔といわれる1面の「長崎新聞」と記した題字の下に、2万人に近い死者・行方不明者数が並ぶ一覧表を掲載し続けて、新しい年を迎えた(新年は4日付から)。大津波を伴った東日本大震災、そして東京電力福島第1原子力発電所のメルトダウン(炉心溶融)事故。途方もない犠牲者を出した大震災からの復旧・復興は政治の混乱もあって遅れている。原発事故では政府の冷温停止宣言にもかかわらず、今なお、ふるさとへの帰還のめどが立たない数万の人々がいる。変革と激動の予感世界では、ギリシャで表面化した欧州の財政危機がスペイン、イタリアなどに拡大、各国で交代が相次ぎ、チュニジアの政変をきっかけに中東全域に民主化運動が広がり、独裁政権の崩壊が続いた。昨年末の北朝鮮の金正日総書記の急死は世界に波紋を広げたが、今年はアメリカ、ロシア、フランス、韓国で大統領選挙があり、中国では党大会で総書記が交代する。大震災の後遺症と円高に苦しむ日本経済、そこに劣化する一方の日本の政治状況が出口の見えない閉塞(へいそく)状況を生み出している。世界のトップが相次いで交代する変革と激動の時代。年は明けても将来への不安感は消えそうにないが、だからこそ新年にあたり、郷土の明日を考える意義がある。こぎだせ上海航路県内に目を移せば、昨年11月、第1便が就航したハウステンボス(HTB)の上海航路(長崎−中国・上海市)が2月29日から営業運航することになった。同社の発表では、中国人の大量集客が見込める旧正月の1月下旬就航を目指していたが、日中両国の安全検査、航路などの許認可が遅れており、延期を決めた。HTB子会社のHTBクルーズが運航する旅客船オーシャンローズ号(約3万トン、定員千人)は、現在、中国で改修工事をしており、営業第1便は2月29日午後6時に長崎発、復路は3月3日午前10時、上海発となる。船は3月14日まで週1往復で不定期運航し、同16日以降は週2便の定期運航となる。1月下旬の営業運航開始が迫っても運航計画や料金体系が一向に明らかにされず、県議会や旅行関連業界から不安やいら立ちの声が出ていたが、予定より約1カ月遅れたとはいえ営業運航日程が明示されたことで、関係者は一様に安堵(あんど)の声を上げた。就航日程や料金の公表がこれだけ注目を集めるのは、上海航路への県民の期待の大きさを物語っている。大正から昭和初期に上海−長崎に定期就航した日華連絡船は明治以降、下降線をたどっていた長崎市の市勢を復活させる原動力となり、日本初の国立公園に指定された雲仙の発展を含め、一時代を画した。航空機の発達など交通体系の劇的な変化はあるものの、まだ「昇竜」の勢いを持つ巨大市場の中国をターゲットにした定期航路の開設に本県の経済浮揚の起爆剤としての期待は膨らんでいる。一度は経営破綻したHTBを、傘下に入れてわずか2年目で1992年の開業以来初めての通期営業黒字に導いた澤田秀雄社長の手腕が問われるが、上海航路復活の背景には、長崎と中国の固い絆を築いてきた歴代の関係者の努力や県民の熱い期待があることを忘れてはならない。空路と競合しての日中での集客など困難な課題はまだ山積している。澤田社長自身も「当面は試行錯誤が続く」と話しており、航路定着には一企業の努力だけではなく、広く情報を公開して行政、民間、さらに県民が一体となれる緊密な推進態勢構築が不可欠である。弾みつける新幹線県は本県の活性化策として「アジアに向け開かれたゲートウエー(玄関口)に」との戦略を描いている。その構想に弾みをつける朗報が届いた。昨年末、政府は九州新幹線長崎ルートの諫早−長崎間の着工の方針を決めた。これで長崎ルートは既に着工されている武雄温泉−諫早間に続いて全線開通の見通しとなった。3月までには着工が認可され、10年後の2022年度に開業の見込み。時間差はかなりあるが、上海航路と新幹線がドッキングすると観光ルートは関西圏まで広がり、本県は中国と日本の結節点として飛躍する可能性が広がる。隣県との絆を強くここで重要となってくるのが、本県が陸部で唯一隣接する佐賀県との協調、協力関係だ。新幹線長崎ルートが1973年の整備計画決定から全線開通の見通しが立つまで38年を要したのも財源問題を除けば佐賀県との調整が鍵を握った。県北地域が強烈に反発した佐世保を通らない短絡ルートの採用など互いに協調し、決断を重ねてきた歴史がある。東アジア全体を市場として人、物の流れを展望するとき、本県だけでの取り組みはおのずと限界がある。広域連携、特に佐賀県との協力関係強化は不可欠だ。新年から佐賀空港と上海浦東空港間に格安便が就航し、上海航路との競合を懸念する声もあるが、船旅の魅力を磨き、海、空を組み合わせた商品を開発することで新たな需要の開拓は十分に可能だ。互いの利点を高め、競い合いながらも全体のパイを増やす「競争と協調」の態勢を築かねばならない。諫早湾干拓事業の潮受け堤防排水門の常時開門をめぐってあつれきが続く両県だが、知恵を絞り合って困難な時代を切り開きたい。(馬場宣房)
□35.「論説」【佐賀新聞】
武雄市が市図書館の運営に指定管理者制度を導入し、レンタルソフト店「TSUTAYA(ツタヤ)」を展開するカルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)に運営委託する計画を明らかにした。図書館への同制度導入については、これまでもさまざまな議論がなされている。利便性や質の維持向上などについて、利用者側に立った長期的視点での論議が欠かせない。市の説明によると、運営委託は来年4月からで、開館時間を1日4時間延長し、無休で365日開館する。雑誌や文具を販売するスペース、蔵書を持ち込めるカフェも設ける。貸し出しカードはCCCの「Tカード」を導入。本を借りてポイントがつく。施設の改築、併設している歴史資料館の移転も検討する。日本図書館協会は指定管理者制度導入には否定的だ。理由として(1)入館料がない図書館事業は収益が見込みにくい(2)運営委託期間が限られるため専門性の蓄積や長期的視点での蔵書、資料収集が保証されない−などを挙げる。2008年の参院委員会では当時の文部科学相が「公立図書館への指定管理者制度導入はなじまない」と発言している。具体的に言えば、入場料があるスポーツ施設などは運営努力で入場者が増えれば収入も増えるが、図書館は逆にコスト増になる。採算割れで撤退したケースもあったという。10年以上先の需要や必要性を見越した蔵書選びなど、表には見えにくい専門性が不可欠だが、そうしたノウハウを持つ企業はないという。民間の専門性を生かして運営を改善し、経費節減にもつなげる指定管理者制度の発想と図書館は相いれないとする。ただ一方で、運営委託で開館時間が延長され、利用者に好評な事例などを挙げ「図書館もさらなる運営努力が必要」とする。武雄市の今回の計画は、これまでの運営委託とは違った面も持つ。ひとつは雑誌や文具販売を許可することで収益が得られる点。もうひとつは個人情報管理の問題だ。指定管理者が本を販売するケースは日比谷図書文化館(東京)などであるが、「収益というよりサービス程度」(同館)。CCCがどの程度の雑誌や文具を扱うのかは分かっていないが、本格的なら例がないという。この構想には地元同業者から反発もある。個人情報の問題は、貸し出しカードにCCCが運営管理する「Tカード」を使う点だ。本を借りてポイントが得られ、貸し出し履歴に合った新刊情報などが提供されるという。魅力的にも映るが、現状では本を返却すれば消去されている情報を、民間企業が保存、活用することに疑問を示す意見は多い。日本図書館協会は1979年の「図書館の自由に関する宣言」で「利用者の読書事実を外部に漏らさない」とうたった。背景には戦中、戦後に閲覧履歴が思想調査に使われたことがある。ICT社会の進展で情報の活用方法は進化しているが、閲覧履歴が重要な個人情報であることを踏まえて考えることは不可欠だ。武雄市図書館の運営問題は6月市議会から議論が始まる。要は将来にわたって質の高いサービスを提供することが担保できるか。目先の利便性向上だけに目を奪われず、事例を調べて問題点を把握し、運営の本質に目を向けた協議が必要だ。(小野靖久)
□36.「社説」【熊本日日新聞】
米ワシントン郊外で開かれていた主要国(G8)首脳会議(キャンプデービッド・サミット)は、欧州債務危機克服を最大の焦点に「財政健全化と景気対策の両立」を目指すとする声明を採択した。ただ、その冒頭で「成長と雇用の促進が不可欠」と強調。「両立」を掲げながらも、「財政健全化」重視の従来路線から軸足を「成長」に移す姿勢をにじませた。微妙な軌道修正といえる。欧州危機の震源地ギリシャでは、総選挙で反緊縮財政を唱える急進左派連合が躍進。連立協議の決裂で再選挙が控える。フランス大統領選でも、財政緊縮策を批判したオランド氏が当選、新大統領に就任した。こうした動きに折り合いを付ける意味で、G8は路線の微修正を迫られた格好だ。欧州危機拡大を国際協調で阻止できるかが問われる中、現実的な解決策を促すメッセージを選択したとも受け止められる。「総論」で一致を見たG8だが、どの国だろうと歳出削減と景気対策のバランスをとるのは至難の業。さまざまな国内事情から、各国の路線には違いもある。英国とドイツは景気対策の財政出動に慎重だが、大統領選や総選挙を控える米国、フランスは成長重視にシフトしている。中でも、欧州危機脱却に“二人三脚”で対応してきた独仏の関係には注目が集まる。サルコジ前大統領の路線から修正を図るオランド氏の登場で、これまでの蜜月にひびが入りかねないとの懸念も広がっている。今後、G8各国の足並みの乱れが露呈すれば市場の動揺を増幅し、危機が深刻化する危うさをはらむ。市場が各国の“懐具合”を注視する以上、財政健全化の手綱は緩められない。成長戦略はそれぞれの財政事情の中から探っていくしかないだろう。難しいかじ取りの「両立」に向け、結束して対応できるか。G8の真価が問われよう。一方、ドイツとフランスはギリシャ問題を軟着陸に導くことを最優先にもう一度協調して、欧州を主導する2大国としての責任を果たしてほしい。今回のG8声明はそのまま、日本の内政問題を映したかのようでもある。サミット初参加の野田佳彦首相は消費税増税方針や震災からの復興を通じた経済活性化をアピールしたかったところだが、増税関連法案成立への道のりは不透明であり、景気は復興需要の息切れが懸念されている。政局絡みで前に進まない政治が、財政健全化と成長の「両立」を阻んでいるのが現状ではないか。
□37.「社説」【南日本新聞】
政府が迷走気味だった今夏の電力需給対策をようやく決定した。猛暑だった2010年夏に比べて関西電力は15%、九州電力も10%以上の節電を求めている。九電管内は、7月2日から9月7日までの2カ月余り、平日の午前9時〜午後8時の時間帯が対象になる。とりわけ電力需要がピークとなる午後1〜5時は10%以上の節電に努めてほしいという。九電は、利用者の節電の取り組みに加え、中国、四国、中部、北陸など他電力会社からの電力融通で危機を乗り切る構えだ。それでも予定通りいかず、供給余力が3%を切るような緊急事態になったら、計画停電の実施も視野に入れている。昨年夏、東京電力管内で実施された計画停電でも分かるように、電力不足が決定的になれば、家庭生活や企業活動に支障をきたしかねない。東京での失敗を反面教師とし、実施に追い込まれても悪影響を最小限にとどめたい。その際、万全を期さなければならないのは、医療機関などで手術や治療行為に重大な影響が出ないよう配慮することだ。鉄道など公共交通機関、生産拠点への影響もできる限り抑える必要がある。早くから電力危機が叫ばれていたにもかかわらず、利用者に負担を強いることで急場をしのごうとする政府の対応は怠慢というほかない。原発抜きで電力確保に全力を尽くそうとしない電力会社の責任も免れない。こうした政府と電力会社の姿勢には、「原発再稼働」ありきの思惑が見て取れる。再稼働さえすれば電力不足は解消するとの安易な考えで、電力供給の計画を立てたとしたのなら、誤算というほかない。ともに反省すべきだ。現時点では原発再稼働が見込める可能性は極めて低い。関電大飯原発の再稼働について、たとえ野田佳彦首相が「判断時期は近い」と、早期の再稼働に意欲を示したとしても、直ちに実現できる状況にはない。こう言い切れるのは、再稼働の前提条件となる安全性の確保が見通せないからだ。安全審査を担う原子力規制庁の設置が先送りされて、いつになるかめどすら立たない。こんな状況では、再稼働を見込んだ電力需給策を認めるわけにはいくまい。家庭や企業など利用者に求められるのは、節電意識を高め、省エネ対策に取り組む心構えである。利用者の努力によって、この夏の電力危機を乗り切ることができれば「脱原発社会」実現の期待も高まる。原発依存から抜け出す最大の契機にしなければならない。
□38.「社説」【琉球新報】
そこまで言うのなら、首相在任中になぜもっと頑張らなかったのか。何をいまさらとの思いも残る。鳩山由紀夫元首相の発言のことだ。5月15日の「復帰40周年記念式典」出席のため来県し、講演や本紙とのインタビューで、あらためて米軍普天間飛行場の名護市辺野古への移設は困難との認識を示した。県外移設に向け日米両政府は仕切り直しすべきだと主張した。「最低でも県外」の公約を捨て、辺野古移設に回帰した判断は裏切り行為と、多くの県民から批判された。しかしまた、このことも契機に、「県内移設ノー」が沖縄の民意として確固としたものになったのも事実だ。鳩山氏の今回の言動については、好意的とは言わないまでも、氏の主張を再検証するきっかけにしても良いと受け止めた県民も少なくないだろう。それに比べ本土メディアは、発言を非難する冷ややかな報道が目立った。テレビのワイドショーでは、再び沖縄県民に幻想を抱かして罪深いといった趣旨の発言があった。「相変わらずの宇宙人ぶり」と書いた新聞もあった。普天間問題を鳩山氏だけの責任に矮小(わいしょう)化し、「県外移設」などできっこないという世論が当たり前のように醸成されていないか。そうした風潮に違和感を禁じ得ない。普天間の県外・国外移設はもはや、沖縄にとって幻想ではない。党派を超え県民の誇りや自己決定権にかかわる要求だ。2000年の沖縄サミットで外務省から県に出向してサミット推進事務局長を務め、今年3月に外務省を正式に辞め、東京外国語大教授専任となった山田文比古氏は、一枚岩になった沖縄の民意を「化学変化」と、最近の論考で表現した。まさに「不可逆的」ということだ。鳩山氏はその化学変化で、触媒の役割を果たしとも言えるが、今後には注文を付けたい。鳩山氏は本紙インタビューで、県外移設が頓挫した要因として「防衛、外務官僚はいかに辺野古に戻すかに腐心していた。政治主導で、オバマ大統領との直接対話など、官僚を飛び越えた議論ができなかった」と述べた。ならば今度こそ、政治主導で民主党内でも化学変化が起こるように、普天間問題解決への本気度を、言葉だけでなく行動で示してほしい。そうして初めて、政治家としての歴史的評価が定まると、自覚してもらいたい。
□39.「社説」【沖縄タイムス】
子どもの権利を守るために活動する国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」が、ことしも母の日に合わせて「お母さんに優しい国ランキング」を発表した。世界165カ国を対象に、母親を取り巻く状況や子どもの成育環境を総合的に考察した結果、1位になったのはノルウェー。上位は高福祉で知られる北欧諸国など先進国が占め、下位にはアフリカを中心とする開発途上国が並んだ。日本はというと、前年より順位を二つ下げ30位。働く母親へのサポート体制が整っていないこともあって、先進国の中では見劣りする位置だ。この順位なのだから、少子化が進むのも無理はない。出生数の減少は、合計特殊出生率が戦後最低となった1989年の「1・57ショック」をきっかけにクローズアップされた。以来、じりじりと下がり続け、最近は1・3台で低迷している。一方、保育所に入れない待機児童は、昨年10月時点で4万6千人を超えた。子どもを授かった後も親たちは「保活」に追われるなど、生み育てにくい社会が進行する。その流れを押しとどめようと、政府が打ち出したのが2013年度から段階的に始まる「子ども・子育て新システム」。幼稚園と保育所の垣根を取り払った一体化施設「総合こども園」の創設を柱とした新子育て施策関連3法案が、衆院社会保障と税の一体改革特別委員会で審議されている。新施策の第一の論点は、総合こども園が待機児童解消の切り札になるかどうか。実施されれば15年からの3年間で、保育所の大半がこども園に移行する。しかし関係団体の反発から幼稚園の移行は任意。保育所に比べ比較的空きのある幼稚園の活用は見えないままだ。こども園に待機児童の8割を占める3歳児未満の受け入れを義務づけなかったことも限定的な効果となるのではとの懸念につながっている。施設利用の方法や民間参入も焦点。新しい制度では、市町村を介して入所する方式から、親が通いたい施設を探して直接契約する方式に変わる。受け皿を増やすため株式会社やNPOの参入も可能とした。保育サービス拡充という考え方に異論はないが、公の責務が後退しないか、保育・教育の質をどう担保するのか、疑問が残る。全国に約2万3千カ所ある保育所が総合こども園となる18年、育児をめぐる環境はがらりと変わる。幼保一体化という世紀の改革を前に、保育現場では先の見えない不安が広がっている。仕組みが変わるだけに保護者の戸惑いも大きい。新しい時代にあった制度づくりは急務だが、議論は尽くされていない。乳幼児期は人格の基礎をつくる、とても大切な時である。社会全体で子どもの育ちを保障する「保育の質の向上」が示されなければ、エンゼルプラン以降、効果が上がらなかった子育て支援策の失敗を繰り返すだけだ。
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