公民館の屋根の放射線量を計測する作業員=2011年12月、福島県川俣町
計画的避難区域の福島県川俣町山木屋地区。昨年12月、国による除染モデル事業が行われ、公民館の屋根の高圧洗浄作業を約20人の住民が見守った。「なんだ、効果がないじゃないか」。積もった雪がなくなり屋根がむき出しになったためか、空間線量は作業前の毎時2・04マイクロシーベルトから2・56マイクロシーベルトに上がっていた。
昨年11月に始まった警戒区域と計画的避難区域での除染モデル事業。土壌のはぎ取りは高線量地域でも効果が出るが、雪の影響など一筋縄ではいかないケースがあることや、森林では難しいことが明らかになってきた。
DBの翻訳
除染は1986年のチェルノブイリ原発事故で注目され始め、翌年の原子力安全委員会の事故調査報告書も「除染技術の調査研究」の必要性に触れていた。だが福島第1原発事故に至るまで、国や研究機関が研究を真剣に進めた形跡はない。
学者や電力会社、原子力メーカー関係者らでつくる日本原子力学会は昨年5月、「クリーンアップ分科会」を発足させ、除染技術の紹介を始めた。だが、分科会主査で電力中央研究所研究顧問の井上正は「あれだけの放射性物質が原発敷地外に飛び散るとは誰も思わず、研究の蓄積はなかった」と明かす。
分科会は欧州の知見に頼らざるを得なかった。チェルノブイリの経験を基に、欧州連合(EU)の欧州委員会などが除染技術の膨大なデータベース(DB)を構築していた。分科会はこれを翻訳。環境省が除染ガイドラインを策定する上での資料になった。
DBには「建物の屋根や壁の高圧洗浄」「樹木の剪定」「土壌の掘り起こし」などがあり、福島で実際に行われている方法も多い。だが、日本と欧州とは地理的条件が異なる。井上は「そのまま日本に使えるとは限らない」と話す。
巨大ビジネス
国はモデル事業を独立行政法人「日本原子力研究開発機構」に委託した。機構はゼネコンからなる三つの共同企業体に事業を再委託している。
「中抜き、ピンハネそのもの」。昨年11月、みんなの党代表渡辺喜美は国会で追及した。予算額約118億円のうち、機構職員の人件費など約37億円が余計な費用と指摘。機構は「支出は必要な経費のみ」と反論した。
「もんじゅで失敗続きの機構は、除染で生き残りを図っている」と渡辺。機構の前身の一つ旧動力炉・核燃料開発事業団は、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の開発を長年手掛けた。1兆円以上を費やしたがいまだ稼働せず、福島の事故後、在り方が問われる。
2012年度予算案だけで約3700億円が計上された放射性物質の除染。巨大ビジネスに多数の業者が参入をもくろむ。あるゼネコン幹部は「広範囲の除染には計画力と調整力が必要。それができるのはゼネコンだけ」と力を込める。
渡辺は「除染を新たな利権にしてはいけない」と強調。住民や自治体が主体となって除染を進めるべきだと主張する。
膨大な手間
井上は「除染とは基本的に集めるか薄めるか。放射性物質を消し去る方法はない」と説明。屋根の雨どいや側溝の泥にこびりついた物質を取り除くのは結局、人海戦術。汚染された広大な土地の除染に掛かる手間は膨大だ。
福島では集めた汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設や一時保管のための仮置き場確保が難航。福島以外でも焼却灰の処理に苦慮する自治体は多い。環境省幹部は「未経験の事態。本当にやり切れるか誰にも分からないが、やるしかない」とため息をついた。(西村誠、敬称略)=2012年04月20日
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「日本を創る―原発と国家」は今回で終了します。


