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多重派遣で人かき集め 除染作業、中間搾取も横行

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多重派遣で人かき集め 除染作業、中間搾取も横行

 除染廃棄物の仮置き場が広がる福島県楢葉町=10月

 東京電力福島第1原発事故に伴う除染に絡み、2~6次下請け業者の社長ら計10人が次々に青森県警に逮捕された労働者違法派遣事件。多重下請け構造の中で賃金の中間搾取(ピンハネ)や除染手当の不払いが横行する実態が明らかになった。

 ▽ピンハネ
 「1カ月分の給料が支払われない」。事件の端緒は昨年5月、福島県楢葉町の除染現場で働いた作業員が、青森県のむつ労働基準監督署に寄せた相談だった。除染現場を実質的に指揮した2次下請け業者「ジェイテック」(東京都品川区)が3次下請けに支払った日当は1万7千円だが、男性の会社は6次下請けで、日当は8千円。何重にもわたる違法派遣でピンハネされていた。環境省が支給する当時1日1万円の特殊勤務手当(除染手当)も3次下請け以下には払われていなかった。

 福島労働局がことし抜き打ち調査した342の除染事業者中、労働条件や賃金の法令違反を指摘されたのは72社。担当者は「業者の入れ替わりが激しく、末端まで法令を浸透させるのは難しい」と頭を悩ませる。

 ▽見えぬ違法派遣
 除染の違法派遣は暴力団が関与して摘発されるケースが多いが、今回の事件に暴力団は無関係とされる。しかし、建設業者間の違法な派遣は一定数あるとみられ、同局の別の担当者によると、青森の事件は除染の現場では衝撃的に受け止められているという。「全く違法性はないケースなのに『私逮捕されるんですか』と不安そうに聞かれたこともある」

 違法派遣がなくならない理由の一つが人手不足だ。「福島県内でも除染の人を集めるのは大変ですよ」。社長の逮捕前、ジェイテックの担当者は共同通信の取材に答えた。福島県は「ここ数年作業員の数は横ばいで、足りていないという話は聞いていない」とするが、県のハローワークが出す除染の求人充足率は、ほかの職種の半分ほどで、さらに減少傾向にある。

 人集めに苦悩した現場の業者は、付き合いのある業者に人を送るよう頼む。それでも集まらず、同じ構図が二重三重に繰り返される。「いろんな手段を使わないと集まらない。人を貸すだけでは商売にならないので、結果的にピンハネする」。労働局の担当者は、作業員が何重にも搾取される背景を、そう説明する。

 ▽大間の停滞も影響
 事件では、大間原発(青森県大間町)の工事請け負いなどで以前からジェイテックと付き合いがあった大間町の3次下請け業者「泉友」が、作業員をさらに下から集めて派遣していた。泉友の元社長は「付き合いで断れなかった」と供述していた。

 事件の背景には大間原発の工事停滞による仕事の減少も浮かび上がる。電源開発(Jパワー)によると、大間原発の作業員は原発事故前の約1700人から約350人に減少。関連の仕事に従事する青森の建設業者は「仕事は減り、どこも死活問題。だから福島の除染にも人を出すようになった」と証言する。

 事件の舞台となった楢葉町。役場近くで仮設食堂を営む女性(51)は「除染に絡む事件があると不安になるが、現場の作業員は『町民が早く町に帰って来られるように』と一生懸命に頑張ってくれている人がほとんどです」と話した。(文 黒木和磨、川澄裕生、臼井春菜、写真 黒木和磨)=2015年11月18日

(共同通信)