47トピックス

▽「弱腰外交」こそ最強手段(上)  ドイツと競う「平和力」 中韓強大化は好機


                   

 さて、竹島に尖閣だ。忘れたころにぶり返す”領土紛争”に、日本国民はあらためて「なぜ、また?」と戸惑う。そして「こちらが下手に出ているのをいいことに…」と、「相手の横暴ぶり」に感情的になる。事実関係の誤りを指摘するのは当然だとはいえ、一方で、日本人はもっと歴史を詳しく知る必要があるし、少なくとも韓国や中国の言い分をまずは聞くべきだ。双方が聞かずに勝手に結論を言い合っているだけでは何も解決しない。

弱腰は最強の外交手法

 と言うと「弱腰」と批判されるのが常だ。だが、それは間違っている。この「弱腰外交」こそ、戦後日本が発揮してきた「平和力」の原動力なのだから。同じ敗戦国であるドイツと並んで実践してきた”最弱”で最強の外交手法だ。損して得とれ、の腹芸である。ただし、自らの平和力についての対外広報や活用方法がへたくそだという問題があるのは確かだが。

 とにかく礼儀正しい、とりあえず相手を立てる、とにかく争わない、まずは約束を守る、とにかく正直に働く、…。こうした”清く正しい”日本人像に対して、30年ほど前に「国際化」が叫ばれ始めた日本では対米貿易戦争における弱点だとの指摘が相次いだ。私もそう考えていた。
  ところが、どうしたことか。失われた20年を経て日本人はすっかり自信を失い、国際化実現どころかますます内向きになった。逆に、中国は国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界2位となり、韓国ではソニーを抑えたサムスンが世界で闊歩している。

 30年前には想像もできなかった事態に日本人がうろたえている。今回の”領土紛争”の背景は、こうした力学の変化にある。

「世界に良い影響を与えている国家」

 ところがだ。弱点だと日本人が思い込んできた国民性は、実は世界中で高く評価されてきた。アジアで、アメリカで、アラブで、ヨーロッパで、「日本人か?いい人だ!」と通りがかりの人に何の根拠もなく褒められたり、酒をすすめられたりした経験のある人はけっこういるはずだ。私も驚くほどいろいろな地域で、日本人というだけで尊敬の念を示される、変な状況に遭遇したことが何度もある。
  ただし、それは単なる礼儀ただしさに対してだけでなく、日本の武力放棄という建前に向けられた尊敬でもある。

 敗戦国が武力を捨て勤勉さで豊かな国になった、との理想的民主国家のイメージだ。本当の紛争地帯であるグルジアでもコソボでも、日本人記者と名乗れば「中立・公正」と受け止められ、対立する両勢力での取材が可能になったことが何度もある。「銃なしに民主主義と繁栄を獲得できるのか?」と本気でコソボのゲリラ指導者に問われた時には、「そうだ」と断言できる強い思想も覚悟もなかったが。

 5月に公表された英BBCの調査で「世界に良い影響を与えている国家」の1位に選ばれたのは日本だ。調査方法に異論もあるが、この年次調査では、日本とドイツが常に上位を争ってきた。ベルリン勤務時代の2005-6年ごろ、ドイツと日本が同率1位だった結果を見て「日独の平和力が認められたなあ」と声をかけてきたドイツ人記者がいた。

 そこで気になるのは戦後の清算だ。韓国人の見方と大きく違うのが興味深い。

相手が納得するまで謝ったドイツ

 ブラント首相(当時は西ドイツ)がワルシャワのユダヤ人ゲットー跡地でひざまずいたり、ワイツゼッカー大統領(同)が「過去に目を閉ざす者」を批判したりしたドイツと違い、日本の政治家は過去に本気で謝罪しておらず現在では歴史を忘れ去ったとの批判が韓国で根強い。もちろん、他の国にもある。そういう認識が現に存在することを日本の指導者は率直に認めることが和解の出発点だ。

 一般的には、徹底的な議論を好む国民性でありながら、こと歴史問題に関し、少なくとも公的な場所ではひたすらに謝り続けるという「弱腰」外交を展開したのがドイツだ。欧州連合(EU)の中核でありながら、現在も国際交渉では自らの主張を控え、取りまとめ役に徹している。そこには国内的不満もある。ネオナチの近年の異常な台頭は、ドイツの戦後「謝罪外交」への激しい反発も背景にある。

 ドイツと同様に分断された韓国では、再統一の先輩としてドイツへの関心が高い。「北朝鮮=東ドイツ」に対する「西ドイツ=韓国」という構図を前提に、西ドイツを手本に自国の将来を考えるため「(西)ドイツを崇拝する傾向が韓国知識人にある」と、あるベルリン駐在の韓国人記者は話していた。その反動で日本を必要以上に敵視しがちだ、という解説だった。

 とはいえ、国家間の公式な賠償が済み平和条約が結ばれたことを根拠に日本側が「謝罪は済んだ」と繰り返しても、被害国自身がそのように納得しなければ意味がない。「いったい何回謝れば済むのか」との疑問には、「相手が納得するまで」という回答がある。ドイツはこれを行った、という認識が世界的に定着している。(続く)

(2012年9月4日 共同通信 国際局企画委員・永田正敏)

本欄記事の著作権は株式会社全国新聞ネット(PNJ)に帰属します。無断転載を禁じます。書かれた内容はいかなる形でも共同通信社および47NEWS事業参加新聞社の見解を表明する物ではありません。


最新記事

【アメーバ型経営】震災前は集中・集約・効率化、トップダウン経営。震災後は分散、非効率も利点に

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック≪参加新聞社の社説・論説・コラム(一覧)≫こちらをクリック【茨城新聞】<いばらき春秋>■震災前には集中・集約・効率化が理想的な行動規範。震災後は… 震災前にはオール電化にしようかと考えていた。風呂の給湯や料理に使うコンロはプロパンガスに頼っているが、電気に一本化すれば、節約になるだろうと見込んでいたから震災直後に一転、生活を助けてくれたのがガスだった。電気や水道が断たれる中でガスコンロの火は希望だった。水さえ確保すれば温かい食事が食べられる。心の余裕になった震災前には集中・集約・効率化が理想的な行動規範。トップダウンの組織運営が有効だ。しかし震災を経ると、分散・非効率という状況に対してもリスク回避という利点が認められていると思う京セラ創業者で日本航空会長の稲盛和夫氏がアメーバ型経営という言葉を使っていた。小集団のリーダーに…【続きを読む】

【東日本大震災…共同通信のニュース】原発20キロ圏内を警戒区域 持ち出しは貴重品に限定

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ■きょうのトップニュース(4月22日夕刊)東電社長、原発事故で知事に謝罪 県側、収束と賠償要求   東京電力の清水正孝社長は22日、福島県庁で佐藤雄平知事と面会し「福島第1原発の重大な事故が起き、福島県民の皆さまに大変なご迷惑をお掛けしたことをあらためて心から深くおわびします」と直接謝罪した。清水社長は過去2回、面会したい意向を伝えていたが、3回目で実現した。  佐藤知事は受け入れた理由について「収束に向けた道筋を必ず実行してもらうことを約束してもらうため」と説明。福島原発について「再開なんてあり得ない」と認めない姿勢を伝え、一刻も早く事態を収束するよう求めた。  農水産業だけでなく、製造業や観光業を含めた賠償も要求。現場で収束に当たる作業員らを「あの人たちは福島の希望の星だ」とたたえ、待遇改善も要求した。………(20…【続きを読む】

【東日本大震災】参加新聞社の社説・論説・コラム(4月21日)歌を忘れたカナリア/リサイクル社会江戸/新聞の役割

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ≪参加新聞社の社説・論説・コラム(一覧)≫こちらをクリック 【東奥日報】<天地人> ■科学の世界や科学技術行政は、そうした健全な批判派を隅に追いやってきたのではなかったか  炭坑に入るとき、先頭に立つ坑内員はカナリアを入れた鳥かごを提げたという。カナリアは人間よりずっと敏感だから、わずかでも有毒ガスが漏れているとぐったりする。危険サインを出す小鳥に男たちは命を託していた。  科学者は「社会のカナリア」になればいいのだと宇宙物理学者の池内了さんはいう(「科学者心得帳」みすず書房)。炭坑のカナリアと同じように警告を発し続ける。初めは小さな声でも、やがてみんなに聞こえるようになると信じて行動する。それが科学者の責任だと説く。  3月22日の参院予算委員会で社民党の福島瑞穂党首が原子力安全委員会の班目(まだらめ)春樹委員長に迫った…【続きを読む】

【東日本大震災…共同通信のニュース】原発20キロ圏内を警戒区域 持ち出しは貴重品に限定

≪地震・原発関連ニュース-総合一覧≫こちらをクリック ■きょうのトップニュース(4月22日夕刊)東電社長、原発事故で知事に謝罪 県側、収束と賠償要求   東京電力の清水正孝社長は22日、福島県庁で佐藤雄平知事と面会し「福島第1原発の重大な事故が起き、福島県民の皆さまに大変なご迷惑をお掛けしたことをあらためて心から深くおわびします」と直接謝罪した。清水社長は過去2回、面会したい意向を伝えていたが、3回目で実現した。  佐藤知事は受け入れた理由について「収束に向けた道筋を必ず実行してもらうことを約束してもらうため」と説明。福島原発について「再開なんてあり得ない」と認めない姿勢を伝え、一刻も早く事態を収束するよう求めた。  農水産業だけでなく、製造業や観光業を含めた賠償も要求。現場で収束に当たる作業員らを「あの人たちは福島の希望の星だ」とたたえ、待遇改善も要求した。………(20…【続きを読む】

【東日本大震災/福島第1原発事故】地震・原発-Q&A/「警戒区域」 立ち入り制限、罰則も

 ≪参加新聞社の福島第1原発事故関連ニュース(一覧)≫こちらをクリック  ≪福島第1原発の現状≫こちらをクリック  ≪各地の放射線量≫こちらをクリック  ≪地震・原発-用語解説≫こちらをクリック  ≪地震・原発-ドキュメント≫こちらをクリック  ≪原発関連の動画ニュース≫こちらをクリック ■「警戒区域」 立ち入り制限、罰則も  福島第1原発から半径20キロ圏内が警戒区域に設定された。  Q その区域はどうなるのか。  A 自治体職員や警察官ら災害応急対策にかかわる防災関係者以外は、区域への立ち入りが制限されたり、禁止されたりする。立ち入った場合、退去を命じられる。違反すると10万円以下の罰金、または拘留という刑罰を科せられることもある。………(2011/04/21 19:56)【共同通信】<記事全文> ■被ばくの「積算」が問題に 組織、臓器で影響に違い  福島第1原発から放射性…【続きを読む】

【東日本大震災】地震・原発関連ニュース-総合一覧

 東日本大震災の被害状況(4月20日午前10時現在、警察庁まとめ)   死   者…1万4013人(宮城8505人、岩手4033人、福島1412人)   行方不明…1万3804人(宮城7934人、岩手3822人、福島2044人)   合   計…2万7817人 ≪写真ニュース特集≫こちらをクリック  ≪写真ニュース特集(一覧)≫こちらをクリック ≪震災特別寄稿 日本の友人たちへ≫こちらをクリック ≪共同通信社のニュース≫こちらをクリック ≪参加新聞社のニュース(今日)≫こちらをクリック  ≪参加新聞社のニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪福島第1原発事故関連ニュース≫こちらをクリック  ≪参加新聞社の福島第1原発事故関連ニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪食の安全に関するニュース≫こちらをクリック  ≪食の安全に関するニュース(一覧)≫こちらをクリック ≪…【続きを読む】

【坂上二郎さん死去】たれ目の欽ちゃんの要求はいつだって、とても理不尽だ

■コンビを結成したのは1966年。世の中は、豊かさを目指して懸命に走っていた  【北海道新聞のコラム】“ちっこい目の二郎さん”は小太りの身をいつもよじらせていたような気がする。“たれ目の欽ちゃん”の要求はいつだって、とても理不尽だ……▼コント55号がコンビを結成したのは1966年。世の中は、豊かさを目指して懸命に走っていた。残業、残業は当たり前。パートで働く主婦が増える一方で、「教育ママ」という言葉も生まれた。子供たちは学校が終わったあとに学習塾に通い始める▼欽ちゃんが「時代の狂騒」を、二郎さんは、それに翻弄(ほんろう)される「普通の人々」を象徴していたと見るのは、うがちすぎか。……小指と人さし指を立て「飛びます!飛びます!」。裏返り気味の高い声のギャグが耳に残る。本当に飛んでいってしまった。(2011年3月11日付「卓上四季」) ≪全文を読む≫ ■戦後の高度成長を必死に引っ張ってき…【続きを読む】

≪特集・大相撲八百長問題≫大相撲夏場所開催、横審が要請 全委員一致の意見で

■八百長問題を引き起こし、信頼を裏切った責任は重い  【山形新聞のコラム】▼▽大相撲の思い出はテレビの草創のころと重なる。わが家でテレビを買ったのは遅い方だったから相撲の時間が近づくと近所の家を訪ねては見せてもらった。翌日の新聞の星取表でまた勝敗を確かめる。四股(しこ)名から習わぬ漢字も覚えた。……… ▼▽そんな子供のころから相撲を長年楽しんできた一ファンとして、まさか本場所が中止に追い込まれる事態になるなどとはいまだに信じたくもなく残念でならない。多くのファンにとっても心にぽっかりと大きな穴が空いた思いだろう。八百長問題を引き起こし、信頼を裏切った責任は重い。 ▼▽本来であれば、きのうは春場所の新番付が発表になる日だった。代わりに力士の待遇に反映する序列が示されたが、八百長メールで名前の挙がった力士の四股名もあった。不祥事にまみれてもなお、大相撲の再生に期待を寄せ、楽しみにしているフ…【続きを読む】

ロード中 関連記事を取得中...