47トピックス

▽ 最先端のがん治療 − ドラッグデリバリーシステム   


                   

 がん治療の主要なものは3種類あり、外科手術、放射線治療、抗がん剤による化学療法であった。他にも、最近では免疫療法や放射線治療の一種である重粒子線治療も行われているようだ。そうした中、47NEWSの記事に「がん細胞を近赤外線で退治」という研究が紹介されていた。


 このタイトルから「赤外線って、こたつとかから出ているアレだよね。その赤外線を当てるとがんが治るの??」と思った方が多いのではないだろうか。
 ちなみに“近”赤外線とは、暖房器具で良く耳にする“遠”赤外線より、われわれの目で見ている光に近い光線である。近赤外線は電磁波の一種で、波長はおよそ0.8μm~3.0μm。ちなみに光(可視光)も電磁波で波長はおよそ0.4μm~0.8μmであり、波長は電磁波のもつエネルギーと反比例するため、光より波長の長い近赤外線は、光よりもエネルギーが低いことがわかる。遠赤外線は近赤外線よりも波長がさらに長くなり、エネルギーは低くなる。このことから想像がつくかもしれないが、近赤外線は人体への影響が少ない、目には見えない光ともいえる。
 この治療方法は、体に無害な近赤外線と、近赤外線によく反応する化学物質を組み合わせて行う治療で、近赤外線だけでは成り立たない。鍵を握るのは、むしろ近赤外線に反応する物質の方である。この治療では近赤外線に当たると発熱し、その熱で細胞を殺すことができる物質を使用する。この発熱する物質をがん細胞のみに取り込ませることができるかどうかが重要になる。
 近赤外線のターゲットとなる物質が正常な細胞には取り込まれず、がん細胞にのみ取り込まれれば、そこに近赤外線を当てることで、正常な細胞とがん細胞が複雑に入り組んでいてもがん細胞を中心に細胞を殺すことができるためだ。
 こうした特定の細胞のみに化学物質を届こけることをドラッグデリバリーシステムと呼ぶ。ドラグデリバリーシステムとは、薬を目的の場所(患部)・時間に効率的に届けることで、薬による副作用を少なくしたり、薬の効果を高めたりすることができる技術である。抗がん剤にも使われつつあり、激しい副作用を軽減するのに一役買っている。このドラッグデリバリーシステムが近年めざましい発展を遂げている。

 今回の研究では、抗体を利用して、近赤外線に反応する物質(染料の一種)をがん細胞に効率よく運ぶことができた。抗体とは正常な細胞ががん細胞へなるときにできるタンパク質などの分子に作用する薬剤であり、正常な細胞には影響を与えないのが特徴だ。
 今回の研究はマウスを使った実験であったが、人間への応用は、この治療法の安全性が確認される必要がある。しかし、嬉しいことに、使われる抗体の数種類(肺がんと乳がん、悪性リンパ腫、前立腺がん)は米国では既に認可が降りており、実用化まで多くの時間がかからないのではないかという期待が持てる。
 いつか、がんは薬を飲んで20~30分くらいベッドに寝ているだけで、治ってしまうなんていう日がくるかもしれない。日本人の主要な死因を占めるがんが、恐れるに足らないようになった時、人類の脅威は何になっているのだろうか。何にも脅かされることなく平和な世界であればと、願うばかりである。

(2011年11月22日 前川静剛)

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