47トピックス

▽会津若松への修学旅行と教育現場の風評被害  


                   

 小学校は仙台だった。6年生の春、1泊2日の修学旅行の行き先は福島県の会津若松で、戊辰戦争や白虎隊の遺跡を巡った。何しろ子どもである。ここで東北人にとっての大きな悲劇があり、明治以来の東北地方の苦しみの歴史が始まったのだ、などというようなことには思いがいたらず、おみやげ屋でへなちょこの木刀を買って、男の子同士が白虎隊ごっこでちゃんばらをしたぐらいの思い出しかない。
 考えてみれば仙台市内のほとんどの小学校が年々歳々子供たちを修学旅行で会津若松に連れて行く、というのはある意味で意義深いことではある。大人になってから、東北地方の各藩が一致して明治新政府軍に対抗した奥羽越列藩同盟の件では会津に特に大きな犠牲を払わせてしまった、というような歴史に気が付くきっかけになりうるからである。
 あれから150年。気がつかないままに終わる場合も多いだろうが、会津の人は今でも新政府軍を「官軍」と言わずに「西軍」と呼ぶ。
 その仙台の市立小学校の大多数が、ことし会津若松への修学旅行を取りやめたのだそうだ。東日本大震災、特に東京電力福島第1原発事故の影響を懸念しての行き先変更だそうだ。5月初めの段階で47NEWSに掲載された記事だったが、仙台市立小学校は125校で、調査できた範囲で96校が会津若松から山形県や岩手県に変更。4校が会津若松を予定して対応を検討中、という内容だった。
 仙台と会津若松は福島第1原発までの距離がほぼ同じ約100キロ。仙台に比べて会津若松が特に安全性が低いわけではない。
 そしてその3週間後にはもっとすごいことになっていた。
 6月21日の47NEWSでは全国規模で東北地方への修学旅行が激減している、という記事が出ている。余震や放射性物質への懸念から各校が予定していた東北行きを次々にキャンセル。東北観光推進機構によると、東北以外から東北を訪れる学校がいつもの年に比べて「9割減。全滅に近い」という。
 札幌の公立中学校97校中、96校が青森、秋田、岩手の東北3県を修学旅行先にしていたが、96校すべてが道内に変更した。会津若松市は昨年4月から7月にかけて530校が訪れたが、ことしは約30校だけ。
 宮沢賢治ゆかりの人気スポット、岩手県花巻温泉では80校以上がキャンセルになり、中には首都圏や大阪から「新幹線で福島を通過するから」という理由での予約取り消しもあったそうだ。
 新幹線で福島を通過しても、放射性物質の影響は考えられない。おそらく保護者からのクレームがあったと思われるが、学校という教育の場で、科学的にはなんら根拠のない理由に基づいて行き先を変更するのはいかがなものか、と思ってしまう。風評で判断を左右するのは教育ではない。保護者の無知蒙昧に引きずられるのは教育者ではない。
 誤解しないでもらいたいが、これは大震災被災への復興支援を訴えているのではなく、学校教育現場における風評被害を憂えているのである。

(2011年6月24日 今井 克)

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