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核心評論「朝鮮半島情勢」

「傘」強化に落とし穴

 「もし彼らが今われわれの条件を受け入れなければ、空から破滅の弾雨が降り注ぐものと覚悟すべきであり、この地上でかつて経験したことのないものとなろう」。1945年8月7日、広島への原爆投下から16時間後、トルーマン米大統領が声明を発表し、さらなる核攻撃を警告した。

 あれから72年の今夏、現在のトランプ大統領は北朝鮮にこんな脅しのシグナルを送った。「米国をこれ以上威嚇しない方がいい。世界がかつて見たこともない炎と怒りに見舞われることになる」

 トランプ氏の「炎と怒り」がトルーマン氏の「破滅の弾雨」をほうふつとさせるとして、米メディアでも話題に上った。

 「炎と怒り」が行き着く先はいったい何を意味するのか。それは恐らく、人類が絶対に繰り返してはならない「過ち」、つまり七十余年ぶりに「核のボタン」が押されるシナリオだ。

 トランプ氏が、核使用の非人道的な結末をわきまえた、自制心ある米軍最高司令官なら、それは杞憂(きゆう)に終わるだろう。しかし、そう言い切れない点に大きな危うさが潜む。

 また同じことは、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長という経験不足の為政者についても言える。米領グアムの沖合を狙って4発の弾道ミサイルを撃ち込む選択肢を示すなど、その無謀な「瀬戸際戦略」は危険水位に達している。

 そんな中、日米の外務・防衛担当閣僚は安全保障協議委員会(2プラス2)を開き、「米国の核戦力を含むあらゆる種類の能力を通じた、日本の安全に対する同盟のコミットメントを再確認した」と共同発表した。トランプ氏が2月に安倍晋三首相に約束した「核の傘」を再確認する内容だ。

 北朝鮮の軍事挑発を防ぐ抑止力は不可欠だ。一方「炎と怒り」の脅し文句を耳にした直後の金氏の目に、「核の傘」の重要性を強調する日米同盟の姿はどう映ったか。

 金氏が今後、言葉足らずのツイッターを乱発するトランプ氏の好戦的な言動に疑心暗鬼となり「核のボタン」を押す強迫観念にとらわれたとしたら、人類はナガサキ以来の核攻撃の大惨事に直面することになる。

 また「炎と怒り」と発言したトランプ氏が核を背景にした威嚇を強めることで、金氏は逆に、自国の核兵器だけは決して手放してはならないとの確信を深めはしないか。

 通常戦力で圧倒的に優位な米国が、世界最強の核戦力に依拠しながら脅しのシグナルを増幅させる状況下で、北朝鮮が核を減らしたり、放棄したりするはずはない。

 抑止力は絶対的に必要だが、核だけをことさらアピールし、金氏を刺激して核兵器増産に走らせたなら、「朝鮮半島の非核化」実現はさらに遠のく。最悪の場合、72年間続いた核使用の「タブー」すら破られかねない。被爆体験を知る日本は、そんな核の脅しが招く落とし穴に無頓着であってはならない。

  (2017年8月28日配信)