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視標「丑の日のウナギ」

常識外れの消費実態

 今年の夏の土用の丑(うし)の日は、7月25日と8月6日だ。ウナギが盛んに消費される時期だが、日本におけるウナギをめぐる状況は、社会的な常識を大きく逸脱していると言える。

 1960年代には3千トンを記録した国内の天然ウナギ漁獲量は、2016年には68トンにまで減少した。その結果、ニホンウナギは、日本の環境省や国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に区分された。

 減少の理由として、過剰な消費、河川や沿岸域などの成育場の環境劣化、産卵場の存在する海洋環境の変化などが考えられるが、土用の丑の日に関連するウナギ消費の問題について考えてみたい。

 減少している資源を持続的に利用するのであれば、適切な資源管理が必要だ。

 ウナギの養殖は沿岸に回遊してくる稚魚「シラスウナギ」を捕獲して育てている。15年からニホンウナギを利用する日本、中国、台湾、韓国の4カ国・地域全体で養殖に利用するシラスウナギの上限量を定め、各国に利用枠を配分した。本種の資源管理に向けた大きな一歩と言える。

 しかし、この制度には大きな問題がある。4カ国・地域の上限値は合計78・8トンだが、実際に利用された量は15年が37・8トン、16年が40・4トンと、それぞれ上限の半分程度にとどまっている。現在の上限は、実際に漁獲できるシラスウナギの量に対して明らかに過剰で、ニホンウナギの資源が適切に管理されているとは言えない。

 もう一つ、ニホンウナギを脅かす重大な問題として、シラスウナギの違法な漁獲と流通がある。例えば、われわれの試算によると、15年に国内の養殖池に入ったシラスウナギのうち、およそ70%が密漁や過少報告、密輸などの違法行為を経て流通していると疑われる。

 これらの非合法な漁獲や流通を経たシラスウナギは、合法的に入手された個体と交じり合い、両者の区別は困難になる。このため、冷凍パックの蒲焼でも、専門店のうな重でも、国産の養殖ウナギであれば、等しく高い確率で違法な漁獲・流通を経たウナギに出会うことになる。

 輸入されたウナギも状況は類似している。現在のところ、持続的な利用が担保されているウナギは、世界中のどこにも存在しない。欧州と米国では近年、シラスウナギの密漁、密輸の摘発が相次いでいる。これら異国のウナギも、最終的にはそのほとんどが、日本を含む東アジアで消費される。

 残念ながら現在、持続的かつ合法的であることを証明できる養殖ウナギの入手は、不可能に近い。

 ウナギの取引から手を引くべきだとまでは言えないが、だからといって放置することは許されない。現状を改め、解決するための努力を怠っているとすれば、その企業や組織のコンプライアンス(法令順守)には、大きな問題がある。

 ウナギに関わる全ての組織や企業が、行政府、立法府、専門家、そして消費者とともに協力し、ウナギの適切な資源管理と、シラスウナギ流通の透明化を進めることが求められる。

  (2017年7月22日配信)

中央大准教授 海部健三

 かいふ・けんぞう 1973年東京都生まれ。2011年東京大で博士号取得。同大特任助教を経て16年から現職。著書に「ウナギの保全生態学」など。