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視標「東京五輪まで3年」

調達方針は失格だ

 東京五輪の大会組織委員会はこの3月、大会で供される水産物に関する調達コードの第1版を発表した。五輪では回を追うごとに環境への配慮が重視されるようになっている。ロンドン大会では水産物は全て環境や資源保護に配慮した「持続可能な漁業」から調達されるべきだとされ、これはリオデジャネイロ大会にも引き継がれた。

 東京五輪もこのバトンを引き継ぐはずだったが、残念ながら発表された調達方針は、持続可能な漁業への配慮からは程遠く「失格」と言えるものとなっている。

 コードは、水産物は国産を優先するとともに、「海洋管理協議会(MSC)」や「水産養殖管理協議会(ASC)」という国際的に権威ある水産物認証製品のほか、「マリン・エコラベル・ジャパン(MEL)」や「養殖エコラベル(AEL)」などの日本国内の認証を受けたものも認めた。

 さらに各漁協レベルなどで自主的に策定される資源管理計画などの下に漁獲・養殖されているものについても「適切な資源管理が行われている水産物」として、調達対象に含めるとしている。

 MSCとASCが国際的な非営利団体が実施する海のエコラベルとして世界各国で受け入れられているのに対し、MELもAELも日本の水産業界団体が中心となってつくった認証プログラムで、審査の過程が透明性を著しく欠いていることなどが専門家から指摘されている。

 MELでは産卵期のクロマグロの親魚を一網打尽にする非持続的な漁業までも認証されている。AELに至っては認証審査のための国の補助金が切れる年度末ぎりぎりに一挙に17もの漁業に認証を与えておきながら、審査の概要すら明らかにされていない。いずれも信頼するに足る認証制度と言えない。

 それでも認証対象の漁業が少ないため、「これでは国産品を提供できない」と危惧した業界団体や水産庁の強い主張に基づいて「資源管理計画などがあればいい」との方針が加えられた。

 だが、これらの計画は一般に公開されていないばかりか、その作成は漁業者側に委ねられている。

 水産庁によると、この結果、日本の水産物の約9割がカバーされたという。つまり「国産ならほぼ何でもあり」ということだ。だが、対象魚種の中には、水産庁の資源評価で「資源状態が低位」とされたものが多数あり、「持続可能な水産物」とするには疑問だ。

 五輪の調達方針で持続可能性を明確にすれば、乱獲で疲弊する日本の水産業を立て直す契機となったはずだった。だが、現状は、持続可能性をなくし、衰退の一途をたどる日本の水産業を追認するにすぎない。

 五輪関連の調達では、木材製品の条件も緩やか過ぎるとの批判や、新国立競技場の建設に使われる木材から、海外で違法伐採されたものが排除できない制度になっていることが環境保護団体などから指摘されている。

 確かに五輪で調達される水産物や林産物は量的に限られる。だが、五輪は、厳格な調達方針を持つことで、持続可能な水産業や林業を普及させるきっかけとなり得る。それこそが五輪のレガシーとなるはずだ。東京五輪の調達基準は抜本的な見直しが必要だ。

  (2017年7月19日配信)

早稲田大客員講師 真田康弘

 さなだ・やすひろ 1969年生まれ。神戸大大学院国際協力研究科修了。政治学博士。東京工大研究員などを経て2014年から現職。