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核心評論「トランプ氏の核発言」(オピニオン欄用)

核廃絶理念を裏切るな

 同じ国、しかも戦後国際秩序の担い手であり続けた大国の元首が放つメッセージが、こうも一変するものかと、驚愕(きょうがく)を禁じ得ない。米国のトランプ大統領が核を巡り、また問題発言を行った。

 「私たちは核戦力でどの国にも劣ることはない」「どの国も核兵器を持たないことが素晴らしい理想。だが国々が核を持とうとするなら、トップに立つ」。ロイター通信への最近のコメントだ。

 前任者のオバマ氏が米大統領として初めて広島を訪れたのは、約10カ月前。オバマ氏は「核なき世界」を掲げ、ロシアとの間で配備戦略核をそれぞれ1550発に削減する新戦略兵器削減条約(新START)を結んだ。トランプ氏はその見直しすら示唆している。

 核兵器の役割を低減することが「核なき世界」に通じると考えたオバマ氏は広島訪問後、敵が核を使うまで核攻撃しない「先制不使用」政策の是非を最後まで熟考した。

 前政権関係者によると、オバマ氏自身、先制不使用に賛同しており、側近を前にこう明言したこともあった。「いかなる状況下においても、米国が最初に核兵器を使う展開など考えられない」。世界最強の通常戦力があれば、先に「核のボタン」を押す必要はないとの信念は固かったようだ。

 ただ残念なことに、オバマ氏は新START批准を議会共和党に認めてもらう見返りに、同党の求める核兵器の近代化計画を容認した。大陸間弾道ミサイル(ICBM)などを大幅に刷新するため、そのコストは30年で1兆ドル(約110兆円)と見積もられている。

 それでもオバマ氏は政権末期、近代化計画の見直しを進めた。同じ民主党のクリントン氏が大統領選に勝利していれば、「計画縮小」を勧告していた可能性もあった、と同関係者は明かす。

 だが、トランプ氏が大統領となり、米核政策の修正・変更は見送られた。ここで強調しておきたいのは、オバマ氏が先制不使用の見送りを決めた背景に、「核の傘」を絶対視する日本政府の反対論があったという重い事実だ。

 「核および通常戦力の双方による、あらゆる種類の米国の軍事力を使った日本の防衛に対する米国のコミットメントは揺るぎない」。先に訪米した安倍晋三首相は、トランプ氏との共同声明の冒頭部分でこう表明した。

 首脳間の文書で、米国の“核のパワー”の重要性を明示するのは異例だ。一方、共同声明には「核なき世界」はおろか、核軍縮・不拡散に関する言葉は見当たらない。日本政府高官によると、この声明は日本側が草案作りを主導した。

 日米が背を向ける核兵器禁止条約の交渉が始まろうとする中、核問題を巡り、安倍政権はトランプ政権とどう向き合っていくつもりなのか。オバマ氏が被爆地で示した核廃絶理念を裏切るようなことは、決してあってはならない。

 (2017年03月01日配信)