
インフルエンザのシーズンがやって来た。例年、インフルエンザは1月後半から大きな流行のピークを迎える。昨年の12月から、各地でA香港型などの散発的な流行が見られたが、いよいよ流行の本番に突入する。
特にこの冬は、南米ペルー沖の海水温が低い状態が続く「ラニーニャ現象」が発生。ラニーニャが発生した年は、厳冬になることが多い。寒く乾燥した気候は、インフルエンザウイルスにとって格好の条件になる。
これから本格的な受験シーズンも迎える。この冬のインフルエンザ対策を探ってみた。

毎年繰り返されるインフルエンザの流行。年末年始の休みが終わり、学校に児童、生徒が戻ってくると、感染が広がり、流行の勢いが増しやすいことはよく知られている。
東京医大の松本哲哉教授(微生物学)は「どの型のインフルエンザが一番流行するのかは、実際に経験してみないと分わらない。今までの状況から判断すると、2009年に世界的に大流行した、いわゆる新型インフルエンザは今シーズンは明らかに減っている。現在“新型”という呼称は使われなくなっているが、それに代わって勢いがあるのはA香港型で、B型も多めのようだ。大体、この状況を反映したまま1月から2月にかけてピークを迎えるだろう」と指摘する。
今シーズンのワクチンは昨季と同じく、A香港型、B型、そして以前の新型の三つ。もし感染しても症状を軽くするという意味において、ワクチンの接種が大事だ。
昨年3月の東日本大震災では、インフルエンザの流行がかなり警戒されていたため、マスクや手洗い用の消毒剤などが大量に供給され、大きな流行は防げた面があるという。
「この冬の被災地は、住民は仮設住宅などに入れたので、集団生活による感染はないと思うが、寒さへの対策が行き届かないことも考えられる。被災地では病院へのアクセスの問題もあり、インフルエンザ自体よりも二次的な肺炎や合併症を起こした際の診療が十分に行えるかどうかが心配」と松本教授。
抗インフルエンザ薬については、昨シーズンから4種類が使えるようになり、治療の選択肢が増えたが、かかる前に予防することが重要だ。


インフルエンザや風邪などの感染症に対抗する手段として、体に備わっているのが生体防御機構。その一つ、鼻や気管・気管支などの気道の粘液線毛機能に注目が集まっている。粘液線毛機能に詳しい三重大名誉教授で市立伊勢総合病院院長の間島雄一さんに聞いた。

気道に侵入するウイルスやちりなどの外界の異物を最初に排除するシステムが粘液線毛機能だ。ウイルスなどの異物が気道に侵入してくると、そこにあるネバネバした外層粘液に付着する。異物を含んだ外層粘液は、線毛間液の中で波打つ線毛と呼ばれる小さな突起によって喉に運ばれ、やがてのみ込まれて胃に到達し、処理される。
ところが、極度に乾燥した環境下では、粘液線毛機能が低下しやすい。特に冬季は乾燥しやすく屋外の気温も低いことから、室内の温度を暖房で上げると極端な乾燥状態になる可能性が高い。
どうしたら粘液線毛機能の低下を防ぐことができるのか。間島さんらは乾燥状態で鼻の粘液線毛機能を測定し、①何も飲まない②水を飲む③ナトリウムなど電解質を含んだイオン飲料を飲む―で比較した。その結果、乾燥状態で2時間過ごした場合、鼻の粘液線毛機能の低下は①飲まない②水③イオン飲料―の順番だった。イオン飲料が粘液線毛機能の低下が最も少なく、体の保水力をアップしているらしいことも分かった。
「乾燥状態では、体の水分が失われやすく、外層粘液の水分が減少してネバネバ度が増したり、線毛間液が少なくなって線毛の運動が障害されたりして、粘液線毛機能が低下したのではないか。極端な乾燥は粘液線毛機能にとって大敵」と間島さんは話す。
乾燥しやすい冬季。粘液線毛機能を低下させないためには、マスクをしたり、水分を上手に補給したり、暖房の効いた室内であれば加湿をして鼻や喉の乾燥を抑えるよう心掛けることが、大切なことを示している。
「幼稚園や学校などでは、閉ざされた空間に長い時間、集団で濃厚な接触をしているので、どうしても広がりやすい。ただ、感染は飛沫(ひまつ)で起こるので、せきなどがある人はマスクを着用し、休み時間などは部屋の窓を開け、換気をしっかりすることで、ある程度感染を減らすことはできると思う」(同教授)
受験生へのアドバイスとしては①ワクチン接種は早めに受けておく②普段の生活のリズムを乱さない③人混みの中にいるときはマスク着用、帰ったら手洗いをする④発熱など症状が出たら2日以内に医療機関を受診すること(治療薬は発症後48時間以内でないと効かない)⑤処方された薬は指示された通りに内服する―を挙げたいという。
松本教授は「受験生に限らず、感染の防止には、マスクや手洗いなど基本的なことをしっかりする必要がある。また糖尿病や慢性の呼吸器疾患などの基礎疾患がある人、および高齢者は十分注意が必要だ」と話している。


インフルエンザの流行を左右するのが冬の気候だ。気象庁などによると、ラニーニャが発生した年は、日本に寒波が襲来したり、北米や欧州などが寒波に見舞われたりしている。また最近では2006年の大寒波・大豪雪もラニーニャの影響と見られている。現在のラニーニャは昨年秋ごろから続いている。
ラニーニャが発生すると、偏西風が蛇行して北極圏の寒気が南下しやすくなる。日本に襲来すると、西高東低の典型的な冬型の気圧配置になり、日本海側は大雪、太平洋側は寒風が吹いて乾燥した気候になりやすい。
こうした寒く乾燥した気候は、インフルエンザの流行のきっかけになる。低温、乾燥の環境ではインフルエンザウイルスが活発化するからだ。10度以下で湿度が20%台になると、ウイルスの生存率が最も高くなるという報告もある。低温、乾燥傾向になったら早めのインフルエンザ対策が必要だ。