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日めくり

お相撲さん

昨年11月の九州場所で、年間最多勝の表彰を受ける稀勢の里 昨年11月の九州場所で、年間最多勝の表彰を受ける稀勢の里

 鬢付け油独特の甘い香りがするので振り返ると、お相撲さんがいた。街で大相撲の力士を見かけると、なんだかその日は得をした気分になる。

 大相撲秋場所は、横綱日馬富士が優勝して幕を閉じた。白鳳、稀勢の里、鶴竜の3横綱が初日から休場した波乱の場所。一人横綱の日馬富士が4敗したときはどうなるかと思ったが、落ち着くところに落ち着いてホッとしたのは関係者だけではなかったと思う。

 運動部の記者になって間もない頃だ。東京・両国の国技館で本場所を取材した。支度部屋には大きな力士や付き人がたくさんいて、居場所を見つけるのはなかなか難しい。

 取組を終えた力士のそばにすり寄って取材する。まず、ベテランの記者が口火を切りその日の取り口などを聞く。返事はすぐに返ってこない。中には、ひと言もしゃべらずに帰ってしまう力士もいる。

 〝新弟子〟記者は、雑誌などで各力士の情報を仕入れて質問するのだが「あんた、俺の相撲知ってるの?」とにらまれると、後が続かない。談話なしでそれなりの記事を書けるほどの力量はないので、冷や汗の連続とあいなる。

 角界のスターは、やはり最高位の横綱だ。駆け出し記者時代のスーパースターは横綱千代の富士だ。共同通信の歴代相撲担当記者が、大横綱が所属していた九重部屋と懇意にしていたので、打ち出し後は浅草のちゃんこ料理屋でよく酒席をともにした。

 酒豪で知られた千代の富士さんは、我々新米記者を「かわいがって」くれた。まず、ビールの入ったタンブラーを口にくわえ、首を後ろに傾けて一気に飲み干す。これを何回か繰り返す。酒に強い体質ならいいが、そうでなければたちまち酔ってしまう。大横綱から「いいねー、いい飲みっぷりだ」などとおだてられ、調子に乗って前後不覚に陥ったことを今でも思い出す。

 強くて優しい千代の富士さんは、昨年7月に61歳の若さで亡くなってしまった。「大将」の愛称で親しまれた大横綱の、底知れぬ人間としてのダイナミズムは魅力的だった。

 11月は、福岡で一年納めの九州場所がある。秋場所を休場した3横綱が体調を整え、そろって元気な姿を披露してほしい。運動部の相撲担当デスクによれば、稀勢の里の左上腕部のけがは、どんな人でも回復までにかなりの時間がかかると言われているそうだ。

 そんな話を聞いた数日後、10月5日から始まる秋巡業に稀勢の里と鶴竜は最初から、白鳳も途中から参加するという情報が、日本相撲協会からもたらされた。

 九州場所では、4横綱が雪駄の音を響かせ中洲を闊歩する姿を見てみたい。力士は市井の人々を幸せにする、不思議な力を持っているのだから。 (47ニュース編集部 宍戸博昭)