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日めくり

ロシアでまた記者殺害

モスクワ中心部で、殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤさん宅前に花を手向ける女性(ロイター=共同) モスクワ中心部で、殺害されたアンナ・ポリトコフスカヤさん宅前に花を手向ける女性(ロイター=共同)

 ロシアでまた、ジャーナリストが殺害された。日本であれば、1987年に起き、記者2人が殺傷された朝日新聞阪神支局襲撃事件のようにトップニュースになるところだろうが、ロシアでは社会に大きな衝撃を与えることもない。これまで、あまりに多くの記者が殺害され、ある意味で、ありふれた社会の出来事の一つとなってしまっていることが筆者を暗い気持ちにさせる。

 殺害されたのは、ロシア第2の都市、サンクトペテルブルクの週刊紙「ノーブイ・ペテルブルク」の創始者の一人、ニコライ・アンドルシチェンコさん(73)。3月9日に同市の自宅近くで襲われ、頭部を強打され、病院に運ばれたが一度も意識を回復することなく4月19日、亡くなった。犯人は見つかっていないが、英国のデーリー・メール紙(電子版)などによると、ノーブイ・ペテルブルクの編集長は、アンドルシチェンコさんが市の汚職や警官の職権乱用、犯罪組織の実態を書いてきたことが背景にあるとの見方を示した。

 アンドルシチェンコさんは市議会議員を経てノーブイ・ペテルブルクを設立。2007年にも何者かに襲われたことがある。同年には記事の内容を巡ってノーブイ・ペテルブルクの閉鎖命令も出されたが、上級審で勝訴し現在も活動を続けている。15年に発表されたプーチン大統領の権力掌握の暗部を追ったドキュメンタリー「フー・イズ・ミスター・プーチン(プーチン氏ってだれだ)」の制作に協力したこともある。

 ロシアのジャーナリスト殺害と言えばノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤさんが有名だ。チェチェン紛争でのロシア軍による殺害や略奪、人権弾圧を告発しプーチン政権を批判してきたポリトコフスカヤさんは06年、自宅のアパートで射殺された。事件は内外で大きな反響を呼び、複数の実行犯が逮捕され有罪判決が下されたが、首謀者は判明していない。

 しかし、ポリトコフスカヤさんの殺害は氷山の一角で、ニューヨークの非営利団体「ジャーナリスト保護委員会」によると、1992年から2013年の間にロシアでは56人のジャーナリストが殺害されている。しかも犯人が検挙されたケースはまれだ。こうした事情を受け、同委員会はロシアを「ジャーナリストにとり、最も危険な国の一つ」に挙げている。

 アンドルシチェンコさん殺害について言えば、一部の欧米メディアが描きたがるようなプーチン政権による犯行、あるいはその黙認の可能性はほぼないだろう。被害者はどう見ても政権にとって、殺害に値するほどの脅威を与えていたとは思えないからだ。しかし、国営テレビの統制、政権に批判的なメディアへの弾圧の歴史を見ると、政権の強圧的な姿勢の元、社会に「うるさい記者は殺害しても黙らせろ」との雰囲気が醸成されていることは否めない。  (47NEWS編集部 太田清)