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日めくり

 英BBC放送の「パノラマ」は50年以上の歴史を持つ調査報道番組。中でもその枠で2003年に放映された、警察官の人種差別意識についてのレポート「Secret Policeman(シークレットポリスマン)
は凄い、と同僚に教えてもらった。
 記者が身分を隠して警察学校に入学。7カ月間にわたり隠しカメラとマイクで、警察学校生たちの人種差別発言を記録した。
 記者は研修終了後、見事、警察官になる。だが行動に不審なところがあったからなのか、ある日、不当利得容疑で逮捕されてしまう。警察官としての給与を不当に取得した、という容疑だ。
 BBCは、記者が逮捕されても、記録映像を30分のドキュメンタリー「シークレットポリスマン」として放映する。この結果、現職警察官たちの人種差別意識が白日の下にさらされる結果となった。
 番組は大反響を呼んだ。警察は取材方法についてBBCに抗議したが、結局、警察官のうち10人が退職し、10人が処分を受けたという。記者は起訴されなかった。
民主主義の根幹である「知る権利」がこの場合は優先する、と英国市民が判断した結果だからだと思う。日本では「報道のためなら犯罪を犯してもいいのか」という方向に焦点を当てられそうだが、市民は「この報道が公共の利益に資する」と判断したのだ。体を張って国家の組織に切り込んでいく記者の姿、記者が逮捕されても放映する報道姿勢。あっぱれとしかいいようがない。
 日本の「知る権利」に対する意識を試す裁判の判決が、間もなく青森地裁で出される。環境保護団体「グリーンピース・ジャパン」のメンバー二人が、宅配中の鯨肉を盗んだとして窃盗罪などに問われた裁判だ。
 二人は、調査捕鯨船の元船員から「捕鯨船船員が鯨肉を横流しして利益を得ている。税金を使った事業なのにおかしい」との告発を受け、調査を開始。港に着いた調査捕鯨船の船員が、自宅に送った宅配便を追い掛け、青森の宅配業者の集配所にたどりつく。そこで高級品とされるウネスというクジラの部位が入った段ボール1箱を持ち出し、調査船団乗組員による組織的横領の証拠品として東京地検に提出した。
 ところが、船員側は不起訴となり、二人は逆に、窃盗と建造物侵入の容疑で逮捕、起訴されてしまった。
 裁判で二人は、持ち出しは私的な利益のためではなく、多額の税金が費やされる調査捕鯨で横行する鯨肉横領行為を明らかにするための行動などとして、窃盗罪に当たらない、と主張した。
 さらに、被告人、検察側、双方の証人の話から、知られていなかった調査捕鯨の実態が明らかになった。これについては、東京新聞23日付「こちら特報部」が詳しく報じている。「鯨肉窃盗裁判で仰天事実 調査捕鯨やはり横流し 水産庁傘下の企業が独占『利権の護送船団』」などの見出しで、告発者や学者らのインタビューも交え、「国策事業」である調査捕鯨の問題点をあぶり出している興味深い記事だ。
 グリーンピース・ジャパンの星川淳事務局長は「初めから、NGOごときに国策を邪魔されてなるものか、という強い意志を感じた」と語る。
 公判中の二人は記者ではない、という意見もあろう。だが、欧州人権裁判所が、ジャーナリストとNGOが、政府の不正を監視する意味で、同じ表現の自由が認められるべきだという判例を出している。体を張って不正を告発した二人の行為が、BBCの「シークレットポリスマン」と同じように公共の利益に資するものであったことは疑いがない。
 9月6日の判決に注目したい。(2010年8月25日 47NEWS編集部 舟越美夏)