特集 正しい知識で熱中症を防ぐ

正しい知識で熱中症を防ぐ

梅雨明け直後に注意 小まめに水分補給を

 近年は異常気象やヒートアイランド現象もあって、高温多湿の下、屋内外で熱中症にかかるリスクが高まっている。節電の呼び掛けや計画停電の話が出ているところもあり、一層熱中症が心配される状況だ。けいれん、めまい、失神など症状はさまざまだが、熱射病のような場合、適切な対応を怠ると深刻な事態を招く。体が暑さに慣れていない梅雨明け直後は注意が必要だ。戸外での長時間の仕事やスポーツには、小まめな水分補給が大切。何より無理は禁物だ。

体温上昇と脱水で発症 「一番の頼りは汗」 産業医科大・堀江教授

 「熱中症は、どのように起こるか把握し、きちんと対策を講じることで確実に予防できます」。北九州市にある産業医科大学産業保健管理学研究室の堀江正知教授はこう強調する。

 熱中症は高温多湿な状態の時に体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温調節機能がおかしくなったりして生じる健康障害の総称を指す。

 堀江教授は「発症のメカニズムは体温上昇と脱水にある。要因としては気温・湿度など暑熱な環境、高負荷な作業・運動、服装そして時間の四つのファクターがトータルで絡む」と指摘。その上で「喉が渇いているのに水分を取らなかったり、休憩なしに運動を続けたりしていると、突然、前触れもなく起こる。早期発見の有効な症状はない」と警告する。

産業医科大学産業保健管理学研究室の堀江正知教授

産業医科大学産業保健管理学研究室の堀江正知教授

猛暑だった2012年の熱中症患者

熱中症は十分な休息と適切な水分補給で予防しよう

熱中症は十分な休息と適切な水分補給で予防しよう

 病態は熱けいれん、熱失神、熱疲労と熱射病の四つに分類される。

 熱けいれんは大量の汗をかいた後に塩分の少ない水分を多量に摂取したときなどに発症。手足の筋肉がつり、こむら返りを起こす。0.9%程度の食塩水を補給すれば回復するとされる。

 熱失神は脳に回る血液が減少して起きる。熱疲労は脱水で筋力や消化機能が低下し、疲労感や頭痛、吐き気などを生じる。いずれも、スポーツ飲料などで水分補給ができない場合は点滴治療を受ける必要があるという。

 最も怖いのは熱射病。体温が40度を超えているのに汗が出なくなり、意識障害や臓器障害を引き起こして死亡する恐れもある。言動がおかしいといった症状が現れたら集中治療が可能な病院に搬送することが肝要だ。

 堀江教授によると、人間の体温は通常42度以上にはならない。それ以下にコントロールするのに一番頼りになるのは「汗」という。

 「人間は機械で言えば水冷式。汗をかくことによって体温を一定に保つ。汗は運動などで生み出された熱を体表面から無意識に効率よく放出する。スポーツを通して暑さに慣れておけば、早めに汗が出やすくなる」

 堀江教授は生活習慣上の注意点としては「十分な食事、休養、睡眠を取り、体温が上がらないようにすることが重要」と話している。

情報を有効に使う

長年テレビなどで気象情報を解説している気象予報士の草分けで、ウェザーマップ代表取締役の森田正光氏に、今夏の暑さや熱中症などについて聞いた。

 ―今夏の予報は。

 「東京地方では最高気温30度以上の真夏日が平均約50日。猛暑の2010年は71日と過去最高を記録し、昨年も61日と多かった。今年は平年並みの50日前後か」

 ―気温と熱中症の関係は。

 「真夏日と熱中症は必ずしも連動しない。それよりも相対温度が関係しているといえそうだ。涼しい日の後に真夏日が来ると熱中症の人が一気に増える」

 「昨年の都内の例では、最高25度以下の6月27日に熱中症で救急搬送された人は1人。ところが30度を超えた翌日は53人に増え、梅雨の晴れ間で35度になった29日には126人に達した。人の体は複雑。ついていける暑さと、ついていけない暑さがある」

 ―注意したい点は。

 「熱中症にもかかわるが、都市部では最低気温の〝底上げ〟が問題だ。ひところより3~5度上昇している。一昨年、東京では25度以上の熱帯夜が56日もあった」

 「熱中症を防ぐには情報を上手に有効に使うこと。人は突然やって来るものに対してあまりに無防備。『今日は低いが、明日は猛烈に暑い』との予報があれば、想像力と知識を活用し、自分の日常行動を変えることです」

気象予報士でウェザーマップ代表取締役の森田正光氏

気象予報士でウェザーマップ代表取締役の森田正光氏

指導者の見極めが大事

 夏季はスポーツが盛んなシーズン。しかし、われを忘れて熱中するのは事故のもと。日本体育協会が編さんした「熱中症予防ガイドブック」には、8カ条の戒めがある。

 「あわてるな、されど急ごう救急措置」「急な暑さは要注意」「失った水と塩分取り戻そう」―などだが、同協会スポーツ科学研究室の伊藤静夫室長代行は「どれも重要。ただ、熱中症を理由に運動を制限するのは感心できない」と話す。

 伊藤さんは特に「暑いとき、無理な運動は事故のもと」(第3条)が狭く解釈されがちな点を懸念する。

 熱中症予防には通常、気温、湿度、風速などを取り入れた「暑さ指数」が用いられる。ガイドブックにもこれを基にした指針があるが、伊藤さんは「指標が仮に『激しい運動は中止』の範囲であっても、十分な休息を取り、適切な水分補給を行えば、その限りではない」と指摘する。

 長時間の運動で汗を大量にかく場合には塩分

節電が求められる今夏、熱中症を予防しながら暑い夏を乗り切るためのさまざまな商品

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の補給も大切だ。指針は「0.1~0.2%程度の食塩と糖分を含んだものが有効。飲料ではナトリウム量100㍉㍑当たり40~80㍉㌘のものが適当」と、ナトリウムなどを含むイオン飲料を推奨している。

 伊藤さんはまた、「市民マラソンやクラブ活動では指導者の意識が極めて大事。個々人の体質や運動時の状況などを見極める目を養ってほしい。そして中学、高校では計6回の夏休みにスポーツで一生懸命汗をかいてほしい。子ども時代には貴重な体験です」と話す。

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