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社会保障費の抑制はもう無理! 後期高齢者医療制度を考える

 【47コラム】 鳩山政権は2008年4月に不評のままスタートした後期高齢者医療制度の廃止を掲げる。しかし、前身の老人保健制度に単純に戻すつもりはないらしい。だから現行制度がなくなるまでには、時間がかかりそう。

そもそもある年齢以上の人たちだけ切り離した独立の社会保険制度は世界にも例がない。世代と職種を超えた保険医療の「一元化」を工夫したいところだが、それには抵抗勢力として現役サラリーマンたちの健保組合の連合会が立ちはだかる可能性がある。制度に慣れ始めた自治体の一部が廃止反対を表明しているのも無視できない。

 何人かの知人の医師たちに聞いてみたところ、医療保険の「一元化」論は昔からある。老若を一つの枠に、というだけでなく、いろんな職種も一つの枠に、という一元化の構想だ。しかし現役世代のサラリーマンが加入する企業単位の健保組合の連合会と経団連がぜんぜん乗ってこなかった。協会けんぽ(旧政府管掌健保)、共済組合なども及び腰だ。だから「本当は一元化がいいんだけど、こういう利益団体が壁を作っていて実現はまず無理。だから現実的には公費負担(社会保障費)を増やすしかない」と、どの医師も口をそろえている。

 長妻昭厚生労働相は早々と、この制度の「廃止に向けたプランの検討」を事務方に指示した。しかし、廃止の時期に関しては、「年金制度に匹敵する大きな改革」だから少し時間がかかる、という考えだ。

 小泉政権時代に決まったこの制度、つまり75歳以上を「別枠」の医療保険にする制度は、年齢で線引きして国の社会保障費を抑制するのが狙いだった。国民の批判を受け、抑制策をあくまで守るのか、それともこの際思い切って抑制のタガを外すべきなのか、が麻生政権下で議論され、一応、抑制のタガは外れた。そして、今回の政権交代で、「別枠」制度を白紙に戻すというところまで到達した。しかし医療保険の「一元化」はまだ道半ばだ。民主党は健保組合などと国保を「地域保険として一元的運用を図る」とマニフェストで公約していたが、健保組合連合会は「地域保険だけでは医療制度は良くならない」と批判する。

 現行の高齢者「別枠」制度も、一応現役世代の「支援」は受ける。75歳以上の医療費の4割を現役世代が負担する。そして5割は公費。つまり「一元化」は無理だが、部分的な「拠出」で「支援」する。それでも残り1割を75歳以上の人たち自身に保険料として自己負担させる。75歳以上の医療費が上がれば75歳以上の人たちが払う保険料も上がる。自己責任論である。少しでも保険料上昇を避けたければ、医者にかかる費用を抑制しなさい、つまり風邪くらいで医者の世話になるな…と年寄りを脅迫するみたいな仕組みだ。ここに相当の無理があった。

 さらに肝心の医師たちがきわめて冷ややかだった。

 「別枠」制度が医師たちに悪評だったのは、「かかりつけ医」制だ。これが高齢者医療の質を低下させる、として制度受け入れ拒否を決めてしまった医師会が全国にかなりある。医師たちが二の足を踏むのは、新制度だと「かかりつけ医」の報酬が原則として患者1人当たり「月6000円」(定額制、患者負担は600-1200円)で打ち切られるからだ。この金額では入念な医療ができない恐れが十分にある。「月に6000円では簡単な検査と診察をするだけで足が出る」と医師たちはいう。患者にしてみれば、「かかりつけ医」にみてもらうだけならいくら診療してもらっても定額で済むともいえるが、ちゃんとした検査や治療をしてもらえない可能性がある。

 6000円でなく2万円だったら引き受ける医師が多くなるかもしれない。以前なら厚生労働省も制度を新しくするときは決まって医師にインセンティブを与えて制度を円滑にスタートさせたそうだ。それができないほど社会保障費抑制の政策が限度を超えてしまっていたのだろう。貧すれば鈍すだ。(2008年4月6日、9月29日、11月19日、12月22日、2009年3月17日、4月3日、9月21日更新 憲)


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コメント

医療に関して、さまざまな角度から、語られており、興味深く読んでいます。これからも色々なテーマで、報道、問題提起をお願いします。

投稿者 匿名 : 2009年10月31日 01:48


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