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【為末大の視点】第12回 国体を「参加型」に

 為末大氏
 私が高校生の頃は、夏はインターハイ、秋のシーズンは10月の国民体育大会(国体)を目標にしていた。少し涼しくなった時期でもあって記録がよく出た。私が現在、保有している陸上男子400㍍障害の高校記録も国体で出たものだ。


 それが大人になり、少しずつ国体に出場することが減った。日本選手権、五輪、世界選手権と試合が増え、また世界では9月でシーズンオフになることから、自然と10月まで調子を保つことが難しくなったからだ。トップ選手の状況は同じようなもので、今年は短距離が非常にクローズアップされたが、愛媛国体の男子100㍍に出場した世界選手権代表は多田修平選手一人だった。


 もともと日本中にスポーツを根付かせるために行われた国体だが、現在では各都道府県を一巡したこともあり、ある程度役割を終えている。スポーツ施設も国体が始まった頃は足りなかったが、現在ではむしろ施設の維持管理が問題になりつつある。また、出身地と母校が違ったり、プロ選手のように企業に所属しない選手が増えたりするなど、どの地域を地元とするかも曖昧になって来ている。何より「観戦型」のスポーツイベントが増えている今では、国体がそれほど目新しい大会ではなくなりつつある。


 国体が果たした役割は大きいが、国体も変化をする時期に来ているのではないか。私は観戦型の大会が増える中で、国体を「参加型」の大会として位置付けてはどうかと考えている。これまでの国体は他の大会同様、トップ選手が競い合う大会として運営されていた。だから若年と青年が中心だった。この範囲を広げ、中高年の「壮年の部」、高齢者の「老年の部」、さらには「一般参加の部」を設けてはどうか。例えば、初日にマラソンを行い一般開放する。トップ選手が順位を競う中、時間差で一般参加の選手も走る。マスターズの領域を組み込み、全ての年齢で国体に参加できるようにすることも重要だろう。試合に出た後は観戦者として滞在してもらう。滞在も参加型にできる。私が初めて参加した国体は徳島だったが民泊だった。


 国体のそもそもの成り立ちには、国民がスポーツに親しめる環境を整備するためという目的があったと聞く。であれば本来の成り立ちに戻り、参加者と観戦者の線引きをもっと曖昧にし、新しい参加型の一大イベントにもなり得るはずだ。

 最近、本当にスポーツを愛するなら引退なんてしなくてもいいのではないか、と思うようになった。生涯引退のないスポーツ人生を生きる人たちを、国体で応援できないだろうか。(元陸上選手)


【第11回 グローバル人材】
【第10回 前向きに捉える選手たち】
【第9回 運動習慣をつくる】
【第8回 食事は豆腐1丁から】
【第7回 自分に問い掛け解決を】
【第6回 アスリート性】
【第5回 人間観を変えよう 管理型から選手主導型】
【第4回 生産性とトレーニング】
【第3回 見知らぬ自分と付き合う スポーツで学べること】
【第2回 休む勇気】
【第1回 問われるスポーツの公平 科学の力で変容】

2017/10/23 12:40

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