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【為末大の視点】第11回 グローバル人材

 為末大氏
 最近ではあまり聞かなくなったが、一時期「グローバル人材」という言葉がとてもはやった。実際に多くの産業が海外に出て競争する必要に駆られていく中で自然と出てきたのだろう。スポーツでもちょうど私たちの世代あたりから海外で戦うアスリートが増えた。


 初めて海外に行き始めた頃、東欧の選手と一緒になることが多く、仲良くなると友達とハグをしてほっぺをくっつける別れ方を習った。なるほど海外ではこうやるのかと思って、違う国の人間にそうしたらギョッとされたことがある。当たり前だが国が違えば対応も違う。


 昔は語学力が重要で、それさえあれば海外の人間と十分にやり取りできると思っていた。ところがしばらくして、語学力は当たり前として、それと同じぐらい相手側の文化を理解し、その文脈に乗った形で会話をすることが大事だと気付いた。考えてみれば日本人同士でも、年齢や出身地や職業でコミュニケーションを切り替える。私の感覚では、国籍よりももはや年齢や都市部と地方の差が大きい。またカミングアウトしているかどうかも含め、LGBTなど性的マイノリティーの方とのコミュニケーションもある。


 知識を得ることと、自分をあらゆる局面に慣れさせていくことが大事なのだろう。もちろん自分の意見で主張すべきところは主張すべきだが、無自覚に何でもかんでも話していると、対立点だらけになってしまう。かつては、欧米人は自分の主張ばかりしているのかと思っていたが、実際にはやはり切り替えをしている。


 異文化のコミュニケーションに慣れている人は、どの辺りが対立点かをよく自覚しながら会話をしている。同じ人間の中に国籍、人種、宗教、性別、年齢など様々な面がある。それを察しながら、円滑に話すにはやはり背景に知識が必要なのだろう。


グローバル人材というと、どうしても国籍をイメージしてしまうが、おそらく今後は、国籍のみならず宗教、性別、年齢などを理解した上でうまくコミュニケーションを取ることが重要視されると思う。国籍を意識し過ぎて、あの人は日本人だからとステレオタイプにはめ込んでしまうようなコミュニケーションはむしろ敬遠される。結局は目の前の人を一生懸命理解しようとする真摯さが重要なのだろう。(元陸上選手)


【第10回 前向きに捉える選手たち】
【第9回 運動習慣をつくる】
【第8回 食事は豆腐1丁から】
【第7回 自分に問い掛け解決を】
【第6回 アスリート性】
【第5回 人間観を変えよう 管理型から選手主導型】
【第4回 生産性とトレーニング】
【第3回 見知らぬ自分と付き合う スポーツで学べること】
【第2回 休む勇気】
【第1回 問われるスポーツの公平 科学の力で変容】

2017/09/22 15:03

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