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【為末大の視点】第4回 生産性とトレーニング

為末大氏
 電通社員の過労自殺に端を発し、長時間労働をやめようという動きが生まれている。その中で「生産性を高めなければならない」という意見をよく聞くようになった。


 昔、陸上界では大学を卒業して社会人になると成績が伸びるという現象があった。当時は今と違ってセミプロのような選手は少なく、社会人になれば学生時代と違って勤務時間外でトレーニングをするしかなかった。単純に考えれば練習時間が短くなるはずなのに、なぜか競技成績が向上することが不思議だった。


 自分自身が20代の後半になった時、疲労回復のスピードが遅くなって、結果として練習量に制限がかかった。やりたい量だけ練習ができず、最初は焦ったが、次第にその状況を受け入れて、どうすれば今の実力を維持、また高めることができるのか考えるようになった。


 たどり着いたのは、自分を支えている本質を考え、無駄を省き、そこに注力するということだった。ビジネスでいえば「選択と集中」になるだろうか。量に制限がかかっているから、練習を絞らなければならないのだが、もし間違えて自分を支えている柱の練習をやめてしまえば、走りは崩れてしまう。当然の流れとして「自分の走りを支えている最も重要なものは何か」という考え方をするようになった。


 全てのトレーニングが必要だと思っていたが、こうして物理的に制限がかかると、泣く泣く練習を削るしか無くなる。まず、1カ月の中でもこの日の練習は外せないという日がある。その日だけは何とか成立させて、後の日はのらりくらりとやり過ごすようにした。もう一つはいくらポイントを押さえても成立しないものもあると感じた。例えば有酸素トレーニングだが、こういうものはどうしても量がいるので何とか確保した。結果として、翌年は前年を上回る成績を収めることができた。


 あれから自分に問いただす言葉がある。「そもそも」という言葉だ。そもそも足が速いとはどういうことかと、よく自分に問い掛けていた。自分にある問い掛けの枠組みを与えることで、出てくる答えが変わり、トレーニング効率は向上したように感じている。


・【第4回 生産性とトレーニング】
【第3回 見知らぬ自分と付き合う スポーツで学べること】
【第2回 休む勇気】
【第1回 問われるスポーツの公平 科学の力で変容】

2016/12/12 11:20

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