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【サイバー犯罪に国際新組織】トップは日本人警察官僚 /日本人「ハッカー」も勤務/シンガポール


IGCI=シンガポール(共同)
 【シンガポール共同】世界各地で深刻化するサイバー犯罪に対処しようと国際刑事警察機構(ICPO)がシンガポールに設置した新組織「IGCI」が13日、本格稼働する。トップの総局長を務めるのは、警察庁から派遣されたキャリア官僚 中谷昇 (なかたに・のぼる) さん(46)。ICPO加盟の190カ国・地域の捜査機関を束ねる司令塔として、民間の情報セキュリティー専門家とともに、最新の脅威に立ち向かう。

 サイバー犯罪では、被害者や犯罪者が複数の国にまたがったり、世界各地で類似したコンピューターウイルスが見つかったりすることが多い。

 IGCIは世界中から報告されるウイルスを専門技術者が解析して犯罪の手口などを分析。関係捜査機関を橋渡しして情報共有を進め、犯罪者の逮捕につなげる。

 薬物や武器を違法に販売するインターネット上の「闇サイト」の監視にも力を入れ、各国に情報提供する。
 3年前、ICPOのサイバー犯罪担当者は3人だった。IGCIが昨年9月に設置されて以降、欧米やアフリカの加盟国からサイバー犯罪の捜査員が次々に派遣され、4月時点で20カ国以上から計約120人のスタッフが集まった。

 民間の情報セキュリティー会社からも卓越した技術を持つ専門家8人をスカウト。6人が日本企業からの出向者だ。

 ICPOで通算約8年の勤務経験がある中谷総局長は「ネットに国境はなく、捜査も国境を越えて協力できるようにしなければならない。加盟各国が連携するためのプラットホームを目指す」と話している。


 ◎日本人「ハッカー」も勤務 民間の技術、情報を活用 

 【シンガポール共同】国際刑事警察機構(ICPO)が設置したサイバー犯罪対策組織「IGCI」には、民間の「正義のハッカー」も勤務する。高度化、巧妙化する一方の手口に「民間企業が持つ技術や情報を活用し、食い止めたい」と、官民一体で取り組む。

 シンガポール中心部のオフィス街。フェンスで厳重に囲まれたビルの4階に、IGCIの心臓部「オペレーションルーム」がある。指紋認証が求められ、ごく限られた職員しか入室できない。

 パソコン約20台が整然と並んでいる。正面の大型モニターには地球儀が映し出され、世界各地から報告されたサイバー犯罪に関する最新情報が一目で確認できる。

 「実際にサイバー犯罪が起きると、捜査員が集結し司令塔になります」。警察庁から出向している技官 本多祐樹 (ほんだ・ゆうき) さん(36)が説明する。

 ガラスで区切られた隣の部屋には民間からの出向者が詰める。犯罪情報を扱うオペレーションルームには許可がなければ入れないが、協力態勢は出来上がっている。

 この部屋で情報セキュリティー会社「サイバーディフェンス研究所」(東京)から派遣された 福森大喜 (ふくもり・だいき) さん(35)がパソコンをにらんでいた。

 大学時代からプログラミングを始め、ソフトの欠陥を次々と発見。日本で5本の指に入る「ハッカー」といわれる。ハッカーはサイバー攻撃をする犯罪者の意味で使われることもあるが、本来は卓越したコンピューター技術の持ち主のことだ。

 福森さんは「技術があるのだから、世の中のために使いたい」と志願し、昨年4月に赴任。コンピューターウイルスの解析が専門で、他の職員に解析方法のトレーニングもしている。

 民間からはカスペルスキー研究所やトレンドマイクロなどのセキュリティー会社からも専門家が派遣されている。




「IGCI」の初代総局長に就任した中谷昇氏=シンガポール
 ◎新しい捜査手法が必要 IGCIの中谷昇総局長 

 国際刑事警察機構(ICPO)のサイバー犯罪対策組織「IGCI」の初代総局長に就任した 中谷昇 (なかたに・のぼる) 氏に抱負を聞いた。

 ―どんなサイバー犯罪が多いのか。

 「世界的にインターネットバンキングの不正送金など金銭目的の犯罪が増えている。銀行強盗は銃や車を用意しなければならず、捕まるリスクも高い。ネットを悪用すればもっとスマートに金が手に入る」

 ―捜査はどのように。

 「殺人事件では、現場で聞き込みをし、指紋を採り、DNAを解析する。サイバー犯罪にこのやり方は通用しない。現場がどこか特定するのは難しいし、犯罪者が使うIPアドレス(ネット上の住所に相当)も簡単に詐称される。通信記録などを高いレベルで解析できる技術と人材が不可欠。新しい犯罪には新しい捜査手法が必要だ」

 ―IGCIの役割は。

 「犯罪者のサイバー攻撃が海外からだと判明すると、捜査が難航して摘発に至らないケースが多かった。しかし、IGCIを通せば支援が得られる上、外国の捜査機関に働きかけ、協力してもらうこともできる」

 ―将来予想される犯罪は。

 「車や家電など日常生活で使うあらゆるモノがネットにつながる時代が来る。ネットにつながるということは、サイバー犯罪の脅威にさらされるということだ」
   ×   ×
 なかたに・のぼる 横浜市出身。銀行勤務後、93年に警察庁入庁。神奈川県警外事課長、警察庁国際組織犯罪対策官などを経て、12年からICPO出向。(共同)

(共同通信=沢野林太郎)

2015/04/09 17:30

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