47NEWS >  47トピックス >  超おすすめ

47トピックス

認知症の新しい治療普及を 医師、介護者ら研究会設立  過剰投与避け改善図る


 コウノメソッドの概念
 介護の負担となる認知症患者の歩行障害や暴力などを改善させる新しい治療法を広げようと、診療に携わる医師や介護従事者らが「認知症治療研究会」を設立し、3月1日に東京都内で初会合を開く。認知症患者の大幅な増加が予測される中、第一線の医療現場からの取り組みとして注目を集めそうだ。

 研究会では、認知症治療薬や向精神薬の不適切な使用で症状が悪化している患者が少なくないとして、薬の少量投与や健康補助食品の活用を柱とする「コウノメソッド」と呼ばれる独自の薬物療法の普及を目指す。30年にわたって認知症を診療してきた愛知県の 河野和彦 (こうの・かずひこ) 医師(名古屋フォレストクリニック院長)が2000年代に薬の処方術を体系化し、専門外の医師でも利用できるようにマニュアルを公開している。

 薬の過剰投与が原因とみられる歩行障害などが改善するほか、暴力や 徘徊 (はいかい) 、幻覚、うつ状態などの周辺症状が軽減するとして、開業医を中心に全国約280人の医師がこの療法を実践している。

 専門家からは「認知症が治るかのように主張しているのは問題だ。科学的根拠も薄い」との批判がある。一方で、認知症の診断は医師によってまちまちで、治療が軽視されている現状に不満を抱く関係者も多いという。

 研究会には、実践医や介護福祉士、看護師ら約350人が参加。初会合では、認知症医療の問題点やコウノメソッドの実例を報告する。将来的には学会組織にして、薬剤の適正処方などを提言していくとしている。

 ▼ 模索続く認知症医療 政府は対策を強化

 【サイド】 2025年には認知症の人が約700万人になると推計され、政府は患者本人や家族の視点を重視することなどを柱とする国家戦略「認知症施策推進総合戦略」(新オレンジプラン)を1月にまとめ、対策を強化した。

 医療現場では従来、神経内科や精神科、脳神経外科などさまざまな分野の医師が認知症の診療に当たってきた。日本認知症学会は08年に専門医制度を始め、全国で約930人を認定。日本神経学会など6学会は10年に医師向けの「治療ガイドライン」を策定するなど、治療の標準化に向けた試みが行われている。しかし、「診断基準がはっきりしない。医師によって診断がばらばら」(東京都内の脳神経外科医)、「記憶障害など中核症状しか見ていない。介護の苦労をくみ上げることまでできていない」(同精神科医)のが実態だ。

 認知症の多くを占めるアルツハイマー病やレビー小体型、ピック病など、脳の神経細胞が死んでいくタイプでは、症状の進行を遅らせることはできても、治すことはできないのが常識とされる。対策では主に病態の解明や発症予防、介護に焦点が当てられ、治療は軽視されがちだった。

 患者の症状に合わせて薬の処方量を柔軟に変更しにくい使用規定や、症状悪化につながる副作用の多さなど、標準的な診療に不満を持つ医師や介護関係者も多く、新たな試みが模索されている。

 認知症の周辺症状は改善できると話す河野和彦医師

 ▼ 介護に負担の症状改善 河野和彦医師

 【インタビュー】総合病院の老年科や高齢者の専門病院などで30年にわたり約3万5千人の認知症患者を診療する中で、独特の薬物療法「コウノメソッド」を開発した 河野和彦 (こうの・かずひこ) 医師(57)に話を聞いた。
 ―認知症を治せるか。
 「認知症には、脳の病変によって直接的に起こる記憶障害や判断力の低下などの中核症状と、それに付随して起こる暴言、幻覚、 徘徊 (はいかい) 、うつ状態などの周辺症状(行動・心理症状)がある。中核症状は治しにくいが、周辺症状は改善できる」
 ―治すことにならないのでは。
 「家族や介護する人が最も困っているのは周辺症状だ。記憶障害があっても、穏やかににこにこしていれば、家族の負担は少ない。患者と家族のどちらかしか救えないとしたら、家族を救う」
 ―一般的な認知症医療で何が問題か。
 「中核症状の改善を目指す治療薬が、認可された処方量の規定により、患者の症状に合わない形で過剰に投与されている。薬の副作用で、穏やかだった患者が怒りっぽくなったり、歩けなくなったりしている。認知症が進んだと誤診され、増量されたり向精神薬を投与されたりして、症状が悪化している現状がある。他院から私のクリニックに来た時点で、患者の2割に薬の副作用が出ている」
 ―コウノメソッドは。
 「中核症状より、周辺症状の改善に主眼を置く。暴言や徘徊などの陽性症状が現れている患者か、無気力やうつ状態などの陰性症状の患者かに分け、前者には抑制系の薬剤、後者には興奮系の薬剤を使う。中核症状の治療薬は、規定処方量を下回っても、副作用のないように少量投与する。脳細胞を保護するサプリメントも積極活用する。治療法や実績をインターネットで公開している」
 ―アルツハイマー病にも効果があるのか。
 「アルツハイマー病は、かつて認知症の7割などと思われていたが、実際は5割前後と見ている。ほかに、レビー小体型やピック病などの病型も多く、これらのほうが介護にはやっかいだ。高額な画像装置を使い、診断に手間をかけるのは、患者の時間や医療費の無駄。患者の症状や家族の訴えを重視して、薬の種類や量をきめ細かく調節することが大切だ」
  ×   ×  
 こうの・かずひこ 1958年、名古屋市生まれ。近畿大医学部卒業後、愛知県の海南病院や共和病院で老年科部長を務め、09年に名古屋フォレストクリニックを開設。年間の新規患者数は約1400人と国内有数。

 ▼コウノメソッド

 【ズーム】コウノメソッド 脳の神経細胞が壊れることによって直接起こる記憶障害などの「中核症状」よりも、暴力、うつ状態といった「周辺症状」の改善に主眼を置く。このうち、暴力などの「陽性症状」が現れている患者には抑制系の薬剤、うつ状態などの「陰性症状」の患者には興奮系の薬剤を使う。中核症状の治療薬は、規定処方量を下回っても、副作用のないように少量投与する。脳細胞を保護するサプリメントも積極活用する。


2015/02/08 16:30

ロード中 関連記事を取得中...


コメント

コメントをお寄せください