【裁判員制度】シロウトの裁判員は頼りにならない? 捜査当局も私たちも疑ってはいないか
【47コラム】 なぜ今なのか? この疑問がこのところ増えて困る。事件捜査についてだけでも二つある。ひとつは、小沢民主党代表の秘書逮捕のとき、なぜ今、と思った。そして今度は京都府舞鶴市の高一少女殺害事件の60歳男逮捕。直接の物証も自供もないのに、なぜ今?なのである。舞鶴の事件をめぐっては、警察庁長官が定例記者会見で否定しなければならないほど、まことしやかな裁判員制度がらみの観測・怪情報が出回っている。▼裁判員制度の特集はこちら ▼47トピックス「裁判員」はこちら
舞鶴の事件は、11カ月も前の事件直後から捜査線上に浮かんでいたのに、そして4カ月前に家宅捜索まで延々とやっていたのに、さらにこの60歳男をさい銭と下着の盗みで別件逮捕までしながら、本件で逮捕できなかった警察。それが証拠もないのに今なぜ逮捕になったのか。物証なし、自供もなし。あるのは状況証拠ばかりらしい。
だから、変な観測が出た。5月から始まる裁判員裁判にこの事件がかかるのを捜査当局が避けようとした、という観測だ。「プロの裁判官」なら直接証拠がなくても状況証拠の積み重ねだけで有罪にしてくれる可能性があるが、「シロウトの裁判員」たちだと、そんな考え方になじみが薄いから却下されてしまうかも。捜査当局がそんなことを考えたという推測である。裁判員裁判は起訴が5月21日以降のものが対象。4月中に逮捕すれば、確かに締め切り直前で起訴し「裁判員抜き」のプロだけの裁判をしてもらえる。
警察庁の吉村長官は9日の定例記者会見でこれを否定した。「逮捕時期についていろいろと言われているが、裁判員制度を念頭に置いてやったということはない」
ただ、ここで問題なのは、「シロウト」の裁判員たちの判断をバカにする考えが、こういう観測の底に潜んではいないか、ということである。警察や検察にも、裁判所にも、そしてメディアの側にも、もっといえば社会全体でも、裁判員裁判が出す結論が信用できないで困っている、という事情があるのではなかろうか。
舞鶴の事件のように状況証拠のみの場合は有罪の結論を導くことが難しい、だからシロウトには無理だろう…そんなことを私たちが言い始めたら(あるいは腹の底で実は感じているとしたら)、裁判員制度なんか持つ資格は、私たちにない。司法の世界も主権者の市民が中心の民主主義の考え方を貫くべきだという理念ばかりが、上滑りしてはいないか。もしシロウトが頼りにならないという気持ちが私たちの中にあるなら、もしそういう心配が私たちの気持ちの中につのっているのなら、裁判員制度の実施は延期ないし中止したほうがいい。それを決めるのは今からでも遅くはない。
(2009年4月9日 憲)

