福岡との県境、天山山系に囲まれた佐賀県唐津市の七山地区。2006年に合併されるまで七山村だったこの地区は、自民党の保利耕輔政調会長が父・茂氏の時代から地盤としてきた「保利王国」の一角だ。
村で生まれ育ち、地元の男性と結婚した山口澄子(やまぐち・すみこ)さん(81)は「自民党に入れさえすれば大丈夫」と大雪でも投票所に足を運んできたが、先の衆院選で初めて棄権した。「今の政治は年寄りに厳しい。自民党はもういやだけど、どこを信じればいいのか…」
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住民はこぞって「洪水で困っても保利さん父子のおかげで復旧工事が早く進んだ」と感謝してきた。05年の衆院選、郵政民営化に反対して無所属で出馬した際にも保利氏への支持は揺るがなかったが、ここ数年、自民党の政策には疑問符がついて回った。


そのひとつが07年10月スタートの郵政民営化だ。山口さんは友人から、郵便配達の職員に貯金の出し入れを頼めなくなって苦労していると聞かされた。自分も通信販売で購入した布団の代金を払う際に身分証明書の提示を求められたことがある。地域密着だから許された「顔パス」は通じなくなった。
追い打ちを掛けるように、昨年4月に導入された後期高齢者医療制度で「保険料が年金からどんどん天引きされる」と不満が募った。
衆院選で保利氏は他候補に6万票以上の差をつけて圧勝したが、唐津市の比例票は初めて民主党が自民党を上回った。近所の老人会では「自民党はもうだめ。保利さんも地元ではすっかり姿を見なくなった」とささやかれている。山口さんは「もう少し暮らしやすくなったと思えれば、次は民主党に入れてもいい」と考え始めた。
全国2番目に大きい湖だった八郎潟を干拓し、大規模機械農業のモデル農村として国主導で1964年に誕生させた秋田県大潟村。小学校教諭だった崎浜栄子(さきはま・えいこ)さん(67)は75年、夢を追って夫とともに入植、コメづくりを始めた。
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国の減反政策に応じて用地の半分でムギをつくったが、土壌の影響で失敗。それでも田んぼに掛かる割高の税を払い続けた。農業者の声をよく聞く自民党議員に「この人なら何とかしてくれるかも」と期待、後援会に入って応援した。だが突然、説明もなしに減反推進派になったと知らされ「裏切られた」と悔しい思いをさせられた。
減反をやめた崎浜さんは、つくったコメを仲間とともに県外の食品会社や首都圏の大型スーパーなどで販売している。衆院選で小選挙区に民主党候補はいなかったが、比例代表で民主党に投票した。マニフェスト(政権公約)の戸別所

得補償制度の対象になるかどうかは分からないが「自民党よりはまし。結局、自民党は何もしてくれなかった。もう信じられない」。
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麻生太郎首相(自民党総裁)は衆院選翌日の辞任会見で「この10年、地方で自民党を支えていただいた多くの層を弱体化させた」と反省を口にした。党再生会議も来週中に選挙の総括文書を取りまとめる。
共同通信が投票翌日に実施した世論調査で、自民党の惨敗について47・2%が「(良い、悪い)どちらともいえない」と回答したが、50代以上の男性や農林漁業者など旧来の自民支持層では「よかった」が上回った。
民主党の看板政策である戸別所得補償制度は、07年参院選で農村部などを含む29の「1人区」で自民党が23敗させられた遠因となった。加えて民主、社民、国民新3党は連立合意に郵政事業の抜本的見直しを盛り込んでいる。自民党が“得意分野”としてきた地方で信頼を回復するのは容易ではない。(山本俊輔、浜津貴之記者)


