大転換 第9部 まつりごとが変わる3

 「平成生まれ」が初めて国政に1票を投じた先の衆院選。20代の投票率が60代のほぼ半分(2007年の参院選)という低さに危機感を抱いた学生グループが、投票ブームを起こそうと動いた。 

 「8月30日、この夏、最大の祭りがあります!選挙に参加しないのはもったいない」。1週間後に投票日を控えた23日のラストサンデー。東京・渋谷駅周辺を浴衣姿の学生約50人が練り歩いた。手作りのプラカードを手に跳びはね、叫ぶ。若い買い物客の目を引く風変わりなデモの先頭で、学生団体「ivote」代表で東大法学部3年の原田謙介(はらだ・けんすけ)さん(23)は声を張り上げた。 

 「この目で政治を見たい」と飛び込んだ郷里・岡山県選出の江田五月参院議長の事務所で2年間、インターンを続けた。有権者への電話応対、勉強会出席などを通じ、生活のあらゆる面に政治が影響を与えていると肌で感じた。 

 だが友人たちは政治に興味もなければ投票にも行かない。昨年4月、10人の仲間と「投票は格好いい」を合言葉に「私は投票する」を直訳したivoteをつくった。

 当時、若者の低投票率が影響したと痛感させられたのは後期高齢者医療制度だった。政治家やメディアが取り上げるのは高齢者の負担増ばかり。若者の負担は今後も続くという視点は抜け落ち、悔しかった。「投票率が高い高齢者向けの政策が並ぶのは、ある意味で当然。ならば投票率を上げて政治家の目を若者に向けさせればいい」

 目標を決めるとすぐさま行動した。今年1月には学生50人と各党の参院議員5人がひざ詰めで話すイベント「居酒屋iv

与野党が逆転した東京都議選後初の臨時議会開会を前に、民主党総会に出席した新人議員=8月31日、東京都議会(共同)

投票率上がれ、学生奮起

地方選で民主若手に存在感

衆院選への投票を呼び掛ける学生団体「ivote」の原田謙介代表(右)ら=8月23日、東京都渋谷区(共同)

ote」を開催、学生に「議員の熱い思いを感じた」「人が政治家をやっているのだと実感した」と評判だった。衆院選公示前に実施した街頭でのビラ配りが各地の学生団体に伝わり、全国13都市での運動に広がった。

 8月31日に発表された投票率は小選挙区69・28%、比例代表69・27%で、いずれも05年を上回り、小選挙区比例代表並立制導入後としては最高だった。活動の“成績表”とも言える世代別の内訳は年末ごろ公表だが、原田さんは「結果を楽しみに今は充電します」。来年の参院選も行動を続けるつもりだ。 

 衆院選に先立つ7月12日、一足早く与野党が逆転した東京都議会。民主党は自民党の5倍を超える22人の新人が当選した。鳩山由紀夫代表の指示で投票2週間前に追加公認した3人のうちの1人が世田谷区でトップ当選するなど、30代~40代の若手が存在感を示した。4人擁立の大田区

でも30代の2新人が1、2位で当選、いずれも自民、公明両党の現職を1万~2万票ほど上回る完勝だった。 

 ただ、都議会幹事長を務めた現職の名取憲彦(なとり・のりひこ)氏(68)ともう1人の現職が落選の憂き目に遭う。名取氏は、追い風で支援組織が緩んだと認める一方「有権者に『古いもの、既成のものはよくない』という感覚が働いた」と世代交代が求められた結果だと話す。再挑戦は微妙で、次はさらに若返りが進む可能性がある。 

 07年の統一地方選で行われた道府県議会選挙で、民主党は改選議席312を上回る375を得て全道府県で議席を獲得した。 

 大田区で1位となった田中健(たなか・けん)氏(31)は、自らの当選を「風をつかんだ結果」とした上で、政権発足が秒読みに入り「風を追い掛けるあまり、迎合とならないようにしなくては」と戒める。各地方議会の若手は今後、瞬発力から持続力が試されることになりそうだ。(岡村康隆記者)


第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り