東京・お台場のイベントスペース。5月中旬、独自のネットサービスで急成長中の会社が、企画・開発に約1年を費やした「BBUプロジェクト」の新商品を発表した。
BBU? 業界関係者の熱い視線の先で、開発リーダーの浦上幸江(うらかみ・ゆきえ)さん(32)が説明する。「BINBOYUSURI。つまり『貧乏揺すり』がコンセプトの商品です」
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アートユニット「明和電機」との共同開発で生まれた「YUREX(ユレックス)」は、貧乏揺すりを、集中時に無意識


に生きる“クリエーティブビート”として揺れを測定、パソコンで解析し「自分の一番ノリノリな状態を割り出してくれる」装置だ。専用サイトにつなげば、世界中の“ユスリート”たちが「今どこで揺すっているか」や「回数の世界ランキング」も分かる―。
「ここまでやるか」という、徹底したナンセンスぶりに会場は笑いの渦。「究極のばかばかしさを追及し、やり切りました」と浦上さん。「実は、それが誇り高くて。普通の会社じゃ、やらせてくれないでしょ?」
自らを「面白法人」と称する会社、カヤックは神奈川県鎌倉市にあった。「ユレックスは、僕の貧乏揺すりがひどくて、『有効活用できないか』という社員のアイデアから始まったんです」と代表の柳澤大輔(やなさわ・だいすけ)さん(35)。視線はナンセンスの少し先に向かう。「ばかばかしいで終わり、とは違う。世界の人とつながったり、もっと何かを生み出そうとしている」
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柳澤さんら慶応大の同級生だった3人が1998年に設立。最初はパソコン3台だけ、3人が川の字になって寝る共同生活からスタートした。「まずは『面白い状況ってどんなの?』って考えるんです。どんな働き方ができるか、なるべく枠に捕らわれず、自由に」
上司の査定なんて感情一つであいまいなもの。ならばと導入したのが、サイコロで給与の上積み分を決める「サイコロ給」。「ネットさえあればどこでも働ける」と海外で住居兼オフィスを借り、社員が一定期間働く「旅する支社」の試みも。
誰でも出品でき、面積に応じて価格を決める「絵画の測(はか)り売りサイト」、家を建てたい人が建築家のコンペを開けるサイト…。独自のネット事業が注目を浴び、顧客のサイトを制作する受託事業も増加。今年は環境省が運営する市民参加型サイトの開発も手掛けた。「面白いことを発信し続けることで生まれるスパイラル」(浦上さん)などで、2008年の売上高は約7億円に上った。
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浦上さんは以前働いていた大手内装会社で大型商業施設の開発を担当。東京の下町に住み、地元商店街をこよなく愛していただけに葛藤(かっとう)があった。「自分が好きなものをつぶす側に回るのかあ」。そんな時カヤックを知り、約2年前に転職。働き方も変わったという。
「休日も働く、じゃなくて、楽しいからもうちょっとやるか、という感覚。楽しくない仕事の先に、人を楽しませることはできないですから」 。
従来の会社や働き方の枠を軽々と跳び越えていくかに見えるカヤックだが、創業時から手放さずにきた指針がある。それは「『何をするか』より『誰とするか』」。「一緒に働く人にだけはこだわってきた。そうすれば、行き先は決まってなくても、面白いものになっていく」と柳澤さん。
現在社員は約90人。「面接で一緒に働きたいと思った人を採っていたら、増えてきましたね。順調に」。人の数だけ「面白い」が広がるかのように、柳澤さんは笑った。(多比良孝司共同通信記者)


