「ガイジンが市議や市長になるのは抵抗がある」。愛知県犬山市のビアンキ・アンソニー市議(50)は、いまだに有権者のこうした反応に驚かされることがある。二〇〇三年市議選は史上最多得票でトップ当選し、その後の市長選、二回目の市議選でも得票数は二位。政治姿勢への評価が高くても越えられない壁が、この国にはあるのか―。
空手と黒沢明監督を愛する日本びいきのニューヨーカー。一九八九年、旧文部省の外国語指導助手(ALT)プログラムで念願の来日を果たす。愛知県や犬山市の公立校で働いていたころ、老いた母一人を故郷に残してでも議員になろうと決心した。教育委員会との摩擦がきっかけだった。
「指導助手の同僚が自作したテキストを授業で使いたい」「助手同士の打ち合わせの時間をつくりたい」。さまざまな提案を教委は「前例がない」「条例で決まっている」と却下した。そのころ知り合った妻の恵子(けいこ)さん(49)は言う。「日本の子どものため、教委との板挟みになっていた」
「あきらめて米国に帰るか、政治の場から教育を変えるか二つに一つ」と追い込まれた。選挙には全く素人の恵子さんら家族が手伝った手作りの選挙戦で、圧勝した。
市議になり、教委への提案は幾つか受け入れられた。悪かった関係も修復し、今は米国の議会を見て得たヒントから「議員同士の議論を活発に」「定数が多すぎる」と議会改革に情熱を傾ける。
市議になるため米国籍を捨てた。「故郷がもっと遠くになる気がした」と不安もあった。だが当選してから米メディアに何度も紹介され、視察に来る政治家や青少年のホームステイ


受け入れなど、交流は逆に強まった。
「つらかった。悩んだ。でも政治家になるためだとあきらめた」。茨城県つくば市のヘイズ・ジョン市議(46)も英語教師として来日し、つくば市で居酒屋経営などを経験。外国人研究者の多い同市でまちづくりに参加したいとカナダ国籍を捨てて出馬した。
日本を訪れ、日本に定住することを決めた外国人が政治家を目指すため、まず必要とされる日本国籍。長年在日コリアンの差別問題に取り組む李敬宰(イ・キョンジェ)さん(55)は、〇七年の大阪府議選に向けて日本国籍を取得した。
「コリア系がもっと社会進出する呼び水に」と出馬したが敗れた。「国籍を民族の証しと言う人もいるが、日本で生まれ育ったから」とこだわりはない。それより「民族名で活動するコリア系議員がもっといていい」と残念がる。
白真勲(はく・しんくん)参院議員(50)=民主党=は、民族名で活動する唯一の韓国系政治家だ。在日二世の白氏は四十歳のとき「人生半分まで来た区切り」と、父の韓国籍から母の日本籍へ変えた。外交・安全保障分野を専門にするが「ここにいる外国人たちとうまくつきあえない国が、きち

んと外交をできるだろうか」と問い掛ける。
国会にはほかにツルネン・マルテイ、蓮舫の二人がいる。ヘイズ市議は何人かの外国人から「議員になりたい」と相談を受けた。外国人が増えれば、政治家を目指す人はこれからも増え続けるだろう。「黒人やブラジル系、イラン系が当選すれば、本当の国際化の証しになるんじゃないか」(角南圭祐共同通信記者)


