商店街や学習塾、公営団地が、犯罪抑止の効果を期待して防犯カメラを自ら設置するケースが急増している。痴漢対策で電車内へ設置されることも決まった。過去にはプライバシーを侵す「監視」の道具として敬遠されたのに、今や人々がすすんで受け入れるようになった防犯カメラは、“見られる”ことを拒絶してきた権利意識の変容をも映し出している。
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福岡県久留米市郊外。のどかな田園風景の中を放課後の小中学生が「至誠塾」に集まった。塾の一室に置かれたモニターに、通ってくる子どもたちの動きがリアルタイムで鮮明に映し出される。録画装置もあり、マウス一つで過去の映像が再生できる。
生徒を犯罪から守ろうと5月にスタートしたシステムだが、塾長の水野順二(みずの・じゅんじ)さん(31)は「物音がしたときにモニターを見る程度。さかのぼって確認したことはない」。トラブル自体がなく、防犯効果があったかどうか、確かめるすべはない。
カメラを設置したのは大阪市中央区の「フィールドワークス」。同社が飲料メーカーと契約を結び、自販機の設置金や売上手数料でカメラの取り付けや運営の費用を支出する「等価交換方式」だ。オーナーはIDとパスワードを受け取り、ウェブ上で映像を確認する。
北海道から沖縄県まで、据え付けたカメラは既に600台を超える。古閑大樹(こが・だいき)社長(30)は「犯罪の増加や多様化に保護者や住民は不安を感じている。 リーマン


・ショック以後の不景気の中だが、かかるのは電気代だけ。設置が当たり前になった」と指摘する。
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警察庁によると、今年3月末までに全国の警察が設置した防犯カメラは全国10都府県で363台。東京・歌舞伎町など路上での犯罪が頻発する繁華街が中心だったが、同庁は6月、来年から住宅街での設置を試験的に始めることを決めた。
全国15地域を選び、管理や運用は住民の防犯ボランティアに委託。「プライバシー侵害の懸念や犯罪抑止への実効性などの問題を住民自身で議論してもらう」と抵抗感に配慮する。
一方、電車内への設置の動きは急だった。警視庁と3県警が10月下旬に首都圏の鉄道各社に要請したのに対し、JR東日本は埼京線の一部へ年内にも設置することを決めた。痴漢対策が目的なら、利用者の反対は小さいと見切った上で要請したとの見方も出ている。
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「カメラがあるとは知らなかったが、何も悪いことをしないから、撮られることに抵抗はない」
アーケード街に食肉店や魚屋、衣料品店が立ち並ぶ福岡市中央区の唐人町商店街。常連客の主婦(56)は2台の防犯カメラを見上げた。
72店舗が加盟する商店街振興組合は、周辺で空き巣被害が多発したのを理由に導入。事前の組合員アンケートでは「常時監視するのか」と危惧(きぐ)する声もあったが、設置後の反応は「特にない」。
管理する同組合の水戸川高士(みとがわ・たかし)理事は「何かあった場合の確認のため。しょっちゅうチェックすると、プライバシーを侵害していると思われかねない」と強調するが、8月にあったひったくり事件では、警察の求めに応じ犯人とみられるバイクの映像を任意で提供した。
「監視社会を拒否する会」の共同代表を務める田島泰彦(たじま・やすひこ)上智大教授は「適正運用のチェックや情報公開が担保されなければ、悪用の可能性がある」と指摘。「自ら『統治側』に傾くのは深刻だ」と住民側に警鐘を鳴らした上で「そうした議論が受け入れられない現実もある」と付け加えた。(吉田豊共同通信記者) =完=


