国境をまたぐ親権トラブルが相次いでいる。国際結婚は増えているのに、夫婦関係が壊れた時にどちらがどう育てるか、ルールが異なるためだ。国際カップルの散らす火花が、日本と各国の家族観の溝を照らしている。
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「子どもを返せ」「親子を引き離すな」。東京・渋谷の繁華街、公園通りに10月下旬、英語と日本語のシュプレヒコールが響いた。元配偶者に子どもを奪われたと訴えるデモ行進。約25人の参加者の半数近くは米国人や英国人の男性だ。
その一人、40代の米国人大学教員スティーブ・クリスティーさんは米国留学中だった日本人の元妻と知り合った。東京で暮らしていたが、夫婦仲は次第に悪化、元妻は4年前、今は中学3年の長男を連れて姿を消した。
それから3年間、居どころさえつかめなかった。元妻が親権者になっており、居場所が分かった今も自由に会うことはできない。「おかしいよ。自分の子どもなのに」
米国では離婚後も双方が親権を持つ「共同親権」が普通だ。だが日本は「単独親権」制で「子は母が引き取る」のが常識とされ、国の統計では離婚による母子家庭の数は父子


家庭の8倍以上。別れた相手に子を会わせない母親も多い。
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日本人の国際結婚は、昨年は全体の5・1%に当たる約3万7千件。30年前の約6倍だ。
こうした中、外国から日本女性が子連れ帰国し、夫が「子どもを奪われた」と訴えるケースが目立ち始めた。米国、英国、フランス、カナダの4カ国とのトラブルは今年5月までで計約160件に上り、誘拐罪で指名手配された女性もいる。
親権問題に対処するため、欧米を中心に「ハーグ条約」が結ばれている。連れ去り先の国は、子を捜して住んでいた国に戻す義務を負う。5月時点で81カ国が加盟しているが主要7カ国(G7)では日本だけ未加盟だ。
福岡県で9月、日本女性が米国から連れ帰った子を元夫が取り戻そうとして逮捕される事件があり、米CNNが大々的に報じて「子ども連れ去り国家」のイメージが広まった。各国の圧力で日本の関係省庁も加盟検討を始めたが、連れ去りの背景に夫のドメスティックバイオレンス(DV)が多いとの慎重論も強い。
日本以外でもトラブルは起きている。昨年は条約加盟国フィンランドから未加盟のロシア国籍の元妻が5歳の息子を無断で連れ帰る事件が発生。フィンランド人の元夫は今年に
なって奪い返し、元妻はフィンランドまで追い掛けて逮捕された。
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逆に子どもを奪われる日本人も。「この子はイランで育てる」。7年前、夫はそう言い残し、東京都日野市のパート女性(54)の元から一人娘(12)を連れて帰国した。
農業研修で来日した夫とは、摩擦が絶えなかった。2人を追ってイランに渡ったが、体調を崩して帰国させられた上、夫に第2夫人ができ、イランに居場所を失った。
イランもハーグ条約に未加盟。娘を取り戻せる望みは薄い。「行かせるんじゃなかった」。女性は今も後悔の日々を送る。こうした泣き寝入りを防ぐため、条約加盟を求める声も増えてきた。
ただ、加盟後も家族観の“国際化”は問われ続けるという指摘もある。
国際結婚トラブルを多く扱う大谷美紀子(おおたに・みきこ)弁護士は条約に賛成だが、現状のまま加盟しても「『やっぱり(母親から離して)戻すのはかわいそう』となり、うまくいかない」と懸念する。「親に会うのは子の権利だという価値観を、日本も各国と共有する必要がある」(高橋伸輔共同通信記者)


