「合併でどのような効果が見込めるのか、十分な説明がない」「既存株主の利益に反する増資ではないか」
年金や投資信託の資金を運用する「大和住銀投信投資顧問」は、投資先企業の株主総会の議案に対し、賛否を検討する会議を毎月開く。スタッフは事業や企業統治に関する資料を集め、企業側にも説明を求めて準備する。11月に株主総会が開かれた14社のうち、8社の役員人事に反対した。
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「おかしな経営をしていたら、真っ先に文句を言うのが株主の役割だ」(蔵本祐嗣(くらもと・ゆうじ)投資調査部長)。議決権をきちんと行使することが、株主としての責任を果たすことにつながると考えており、議案への賛否の比率をホームページで公開することも検討している。
日本の企業経営はこの10年で大きく変わった。昨年秋に世界的な金融危機が起こるまで、欧米系の企業や投資ファンドは潤沢な資金で日本企業に買収攻勢をかけてきた。
国内でも村上ファンドをはじめとする「もの言う株主」が登


場。大株主の立場から、資産売却や事業再編などの改革を経営陣に迫った。多くの企業は重い腰を上げ、株主との対話に乗り出した。
「うちの株は銀行や生保が持っていてくれればいい。あなたと話す必要はない」。外資系の投資信託会社の草分けである「フィデリティ・ジャパン・ホールディングス」の蔵元康雄(くらもと・やすお)副会長は二十数年前、投資先企業のトップからこう突き放されたことが忘れられない。
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企業と銀行などの株式持ち合いも減り、金融機関の顔色をうかがっていれば、経営者が地位を守れる時代は過去のものになった。
国内の年金基金などが、株主総会で役員人事案に反対するのは、いまや珍しいことではない。「コーポレートガバナンス(企業統治)の強化を求める点で、外資系との差はほとんどなくなった」(蔵元副会長)。開かれた経営がトップに緊張感を与え、企業運営の効率を高めるというわけだ。
しかし、多くの企業の株式を保有する機関投資家らが、株主総会の議案を分析し、賛否を決めるのはそう簡単ではない。株主総会での議決権行使を助言する米リスクメトリックス・グループは、日本で株主総会が集中した今年6月には、
約2千社の上場企業の議案を判定したリポートを、世界中
の機関投資家に送った。
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「この議案にはアゲンスト(反対)」。リスクメトリックスの担当者らは都内のオフィスビルの一角で「取締役会への出席率は75%以上か」「社外取締役の独立性を満たしているか」、独自につくった基準に沿って賛成か反対を判断していく。
5月に開かれたアデランスホールディングスの株主総会では、米系投資ファンドが提出した議案を支持し、会社側提案の一部に反対することを推奨。総会の議決はその通りになった。
議決権を行使し、企業に改革を求める個人投資家も次第に増えている。30年以上の投資歴を持つ日本個人投資家協会の木村喜由(きむら・きよし)理事は「企業も個人投資家の主張に耳を傾けるようになってきた」とみている。
だが、わずかな株式しか持たない個人株主の発言力はまだ弱い。「個人の資金を集めている投信運用会社などが、議案の内容をしっかり判断することが、個人投資家の地位を高めることにつながる」(経済産業省幹部)。個人株主や機関投資家の権利行使が優良企業を育てる新たな文化が、日本の企業社会に根付こうとしている。(清木健二、増田健二共同通信記者)


