「自分なりの葬式をしたい」「墓はつくらない」―。葬儀や埋葬の方法を、自分で考え選びたいという人が増えている。地域や寺、葬儀社などに任せ従うものだった“弔いのかたち”は、どう変ぼうしてゆくのだろうか。
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「わたしのときは無宗教で。お墓より、樹木葬にしたいんですが…」。コープしずおか(静岡市)が毎週、開いている「お葬式の学習会」。担当者が最近の葬儀の傾向を説明し終えると、参加した会社員の女性(50)が切り出した。
元気で働き、すでに嫁いだ娘と、息子もいる。これまで葬儀の準備など思いもよらなかったが、今年、夫ががんを患ったことをきっかけに「自分のこともちゃんと考えておきたい」と向き合い始めた。「祭壇はいらない。でも赤いバラやピンクの花を飾って、好きなクラシックの曲を流してほしい」。墓石の代わりに木を植える樹木葬にするのは、墓を建てて「後々、子どもたちに負担をかけたくない」からだ。
同コープの葬祭事業担当、伊藤泉(いとう・いずみ)さんは「少し前まで、こういう学習会は『縁起でもない』とタブーだった。今は毎回、盛況で質問や意見がどんどん出るんです」。参加者は50~60代が中心。夫婦連れも珍しくない。
こうした企画は、各地の自治体や葬儀社などが開き、定員を超え抽選になるケースも。一方、葬儀や埋葬方法などの希望も書き込める「エンディングノート」が広がり、書店に並ぶ。
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散骨や樹木葬への関心も高い。ある宗教法人が2006年、伊豆大島で樹木葬の専用墓地(288区画)を設けたとこ


ろ、すでに約8割が契約済みで、うち6割強は生前予約だという。
「世間体から型通りの葬儀や墓をつくるより、自分が納得できる方法を選びたいという思いを、ひしひしと感じる。死が個人化してきたんです」。葬祭事情に詳しい、日本葬祭アカデミー教務研究室の二村祐輔(ふたむら・ゆうすけ)代表はそう分析。少子化や厳しい家計も、寺や葬祭業者への“お任せ”を許さなくなっているとみる。
そうした傾向の一因となっているのが、葬儀や供養にまつわる金銭面での不透明さだ。
「無断でサービスを追加され、割高な請求書が届いた」「価格表も見せられず、言われるままに契約してしまった」。08年度、全国の消費生活センターに寄せられた葬儀サービスに関する相談は399件と、過去最多となった。
「説明を十分せずに形式的なサービスを提供してきた面もあり、結果的に葬式が劣化した」と二村代表は指摘。お布施
や戒名料の額などをめぐり、寺や檀家(だんか)制度への疑問の声も根強いという。
団塊世代を中心に、葬祭市場で物を言い始めたことも大きい。「個人としての生き方を重視し、無駄なことはしたくないという意識が強い」。家族とごく親しい人だけで行う「家族葬」の相談を受け付ける、都内の特定非営利活動法人(NPO法人)は説明する。
定年退職後、故郷の山梨県南アルプス市に戻った矢崎和仁(やざき・かずひと)さん(66)も家族葬を考える一人。91歳になる母親は10年以上前から、地元のグループホームで暮らし、近隣とのつながりは薄れつつある。自身の現役時代からの付き合いも年々、限られてきた。
「特別こだわりのある葬儀をしたいわけではないんです」。地域の習慣もそれなりに大切にしたい、とは思う。「ただ心がこもった方法を模索しながら、来るべき時を迎えたい。死は自分のものですから」(野沢昭夫共同通信記者)


