大転換 第11部 恋愛が変わる6

 個人の自由な意思で、人生をともに歩むパートナーを選びたい。さまざまな愛情の形が共存する現在、同性カップルや、結婚を選択しない男女などに対応し、新しい形の「家族」を公式に認める法制度づくりが欧米を中心に進んでいる。 

 「彼と結婚したのは、心身ともに特別な関係であることを感じたかったから」。オランダ最大の同性愛者団体「COC」の会長、バウター・ニーリングさんは、少しはにかんで言った。

パリ中心部の公園を散歩する母子。フランスの女性が一生に産む子どもの数は、欧州トップクラスだ(共同)

性を超え、結婚を超えて

欧米で広がる新制度

25年来の同性カップル、ジャン・ロンジャレさん(左)とアンブロシオ・ダシルバさん=パリ郊外((共同)

オランダ議会は2000年12月、世界で初めて同性間結婚を承認。遺産相続から養子に至るまで異性間結婚と完全に同等の権利を保障した。「彼を夫と呼べるようになり、精神的に満たされた」とニーリングさんは満足そうだ。 

 ユトレヒト大のカタリナ・ブーレ教授(家族法)は、オランダが同性婚を認めた背景には「性的志向による差別は人権侵害で、欧州人権条約に反する」との考え方が国民に浸透していたことがあったと指摘する。 

 今話題になっているのは「女性同士の結婚で生まれた子どもの親権」だ。出産した女性、その配偶者の女性、精子を提供した男性の3人が“親”として1人の子どもに関係する。伝統的な親子の形からは考えにくい問題だ。 

 ただ同性婚は欧州や北米の一部などで認められているものの、宗教的背景などもあってまだまだ少数。代わりに、同性カップルの相続や税控除などの権利をほぼ結婚と同じにする法制度を設ける国は増えている。パートナーと死別した場合の住居や財産問題が生じていることが、法整備が始まった背景だ。 

 内容は国ごとに異なるが、特徴的なのはフランスの連帯市民協約(PACS)だ。18歳以上の2人が「共同生活の枠組み」を契約、扶養や債務を連帯で負うことを義務とする一方、税控除や相続などで結婚とほぼ同じ権利が得られる。 

パリ郊外に住む元映画監督ジャン・ロンジャレさん(64)と

アンブロシオ・ダシルバさん(58)は25年来の同性カップル。2年前、PACSに署名した。「PACSで同性カップルが公的に認められ偏見が少なくなった」と同性愛者団体の活動家でもあるジャンさん。だが「養子を取れないなど問題はある」と同性婚の承認も要求する。

 昨年は14万6千件以上に上ったPACSの契約だが、実は9割以上は異性のカップルが利用している。フランスでは、離婚に伴う手続きは複雑で弁護士費用もかさむ。契約も解消もサインだけで済む上、結婚した場合と同じぐらい節税ができるPACSが魅力的と考える男女は少なくない。 

 パリでアクセサリー店を経営するエロディ・ジョルジュさん(31)は昨年、2年間共に暮らしていたボーイフレンド(36)とPACSに署名した。「ロマンチックじゃないけど節税が理由」と話すジョルジュさんの今の目標は子づくりだ。 

 フランスは女性が一生に産む子どもの数が2・0人(06年)と欧州トップクラス。育児中の休業補償や児童手当の手厚さに加え、嫡出子と婚外子の相続差別がなく、家族の形の選択肢が多いことが高い出生率につながっているとの指摘もある。同年に生まれた子どもの半数以上は婚外子だ。

 「パートナーがいれば子どもを、と考えるのがフランス女性の伝統。安定したカップルと証明したい」とジョルジュさん。男女の愛のゴールは必ずしも結婚ではなくなっている。(舟越美夏共同通信記者)


第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り