大転換 第11部 恋愛が変わる5

 「今日は彼女と一緒に買い物なんです」―。東京・秋葉原の喫茶店で話す男性(34)の交際相手は、高校の後輩で図書委員。つぶらな瞳に人気アニメ声優のような声で実にかわいらしい。しかし、彼の言う“彼女”は隣にいない。正確に言えば彼女とは、彼が手にする携帯ゲーム機の画面に映る存在、2次元の平面世界に描かれた少女キャラクターなのだ。 

 ネット上で「アッシー」という呼び名を使う関東在住の男性会社員(20)は最近、交際していた女性と別れ、今はアニメの世界に関心が集中している。「彼女とのやりとりが面倒になり、徐々にこっち側に寄ってきて…」と苦笑する。 

携帯ゲーム機で恋愛シミュレーションゲームをする女性(共同)

彼女は画面に映るキャラ

「全部受け入れてくれる」

鷲宮神社に「巡礼」し、アニメキャラクターを描いた絵馬を掛ける男性=埼玉県鷲宮町(共同)

 「現実が嫌とかじゃなくて、実際に付き合う人は『友達以上、恋人未満』がいいんです。あまり干渉されたくないし、セックス的な部分も淡泊なので」と自己分析。「全部受け入れてくれる存在が2次元だった」とアニメへの思いを打ち明ける。 

 ゲームに限らず、アニメの登場人物や、テレビ・映画のスターなど、実際に会う機会がないことを前提にした相手への恋。特撮ドラマの主人公に夢中という都内勤務の独身女性(34)は「(好きという気持ちの)根本は同じ」と、普通の恋愛と変わらぬ気持ちを語る。 

 「あこがれとか自分の理想と思っていた人だった。だから好きになる」。しかし「付き合うとか本気で思うわけではないわ。だって画面の中の彼とじゃ結婚できないもの」と笑いながら付け加えた。 

  アニメキャラクターを愛する男女にとって「聖地巡礼」とも呼ばれているのが埼玉県鷲宮町(わしみやまち)の鷲宮神社詣でだ。2007年夏に放送されたアニメ「らき☆すた」の舞台となった架空の「鷹宮町」「鷹宮神社」のモデルとして人気が爆発、遠方から来る人も多い。  

 参拝客の男性は「遊びに来たというより(アニメの主人公の)“かがみ”“つかさ”が住む町に帰ってきたという感覚。だから、ただいまって感じです」と話す。例年9万人だった初詣

での参拝客も、今年は42万人にまで増えた。 

 神社には無数の絵馬が奉納されている。「俺の嫁」と書いた女の子のイラストの脇に「3次元でも彼女ができますように」と書き添えられた絵馬も。3次元は生身の人間の立体世界。イラストを見ていた参拝の男性会社員(33)はつぶやいた。「好きと言っても、しょせんは2次元だから。ふとわれに返りますよ」  

 アニメによるまちおこしに当初から取り組んできた鷲宮町商工会の松本真治(まつもと・しんじ)さん(32)と坂田圧巳(さかた・あつし)さん(36)は「こんなに長くキャラクターや鷲宮を愛してくれるとは」とファンを感謝の気持ちで迎えている。「町は2次元と3次元の境界なんです。キャラクターとファン、町民が共存しているんですね。こんな町、なかなかないと思いますよ」と松本さんは笑う。 

 鷲宮のまちおこしにもかかわってきた人気女性イラストレーター、西又葵(にしまた・あおい)さんは「彼女がいない人でも、キャラクターを好きな気持ちが、気の合う人に興味を持つきっかけになれば」と、ファンの出会いが広がることを期待する。「現実は思い通りにならないけれど、永遠に(2次元に)いる感じでもないでしょう。いずれ恋愛につながる始まりになるのでは」(中村太一郎共同通信記者)

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第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り