大転換 第11部 恋愛が変わる4

 「出会いはまるで光のようです」。結婚を控えた神奈川県の家事手伝い吉田聡子(よしだ・さとこ)さん=(32)、仮名=は小さなパソコンをひざの上に乗せ、ゆっくり打ち込んで見せた。生まれつき耳が聞こえにくく、軽い右半身まひもあるため会話は“筆談”だ。 

 男性と本格的に交際した経験はなく、結婚相談所に登録してお見合いを重ねたが実りはなかった。障害のある人やお年寄りの縁談を手掛ける「横浜ブライダルセンター」に入会したことが「光の出会い」につながった。

車いすの男性の結婚相談に乗る清水光代さん=横浜市内のホテル(共同)

「光の出会い」幸せつかむ

障害の男女、NPOが支援

結婚を控えた吉田聡子さんと大木孝さん(ともに仮名)。会話は小型のノートパソコンで行う=横浜市西区(共同)

 横浜市にあるセンターは、代表の清水光代(しみず・みつよ)さんが2007年2月に設立した特定非営利活動法人(NPO法人)。会員は北海道から熊本まで、11月現在で90人ほど。今年は約20人が相手を見つけて退会した。統合失調症やうつ病など病気を持つ人も受け入れている。 

 清水さんは元養護教諭で、介護ヘルパーの経験を持つ。交流のあった障害者や高齢者の多くは一人暮らしで「結婚やパートナー探しを望んではいけない」と気持ちにブレーキをかけているように見えた。「寂しいだろうな」と感じ「きっかけを作りたい」と起業した。 

 東京都内のエンジニア大木孝(おおき・たかし)さん(44)=仮名=はインターネットで「障害者 結婚」と検索してセンターを知った。「通常の相談所では、健常者同士で話が進むと思った。一歩引いてしまったのも事実」と明かす。会員数約5万人の大手相談所によると、身体障害者手帳を持つと自己申告する会員は、1%未満にとどまる。 

 大木さんは太ももの付け根の骨組織が壊死(えし)する難病「特発性大腿(だいたい)骨頭壊死症」を抱える。大柄で見た目は健康そのものだが、ITバブルで仕事が増え「突き指のような痛み」を10年間我慢した。

 「これ以上は無理」と約2年前に手術、障害者認定を受けた。「痛みから解放され、そろそろ結婚したいと自然に思えた」。お見合い料や成婚料としてセンターに支払ったのは、結婚相談所の相場より少ない約20万円。妻になる女性と出

会え、満足している。 

 吉田さんがセンターの会員となる前に大手の相談所に登録したのは「友達づくりから始めたい」との期待から。5年で約40人と会い「デートの度に思いが膨らむ」高揚感は味わったが、長い交際につながらなかった。  待ち合わせ場所の伝え方が大ざっぱだったり、交際を断るときに自分で相手に伝えるルールがあるなど、耳や足の不自由さをフォローしてくれるシステムがないことに不満を感じたという。 

 婚活ブームの中、障害のある人たちを取り巻く環境は好転していない。内閣府によると、身体障害者の約35%は配偶者がいない。お見合いイベントを主催する茨城県社会福祉協議会は「女性が外に出たがらず、男女比は5対1」と運営の難しさを打ち明ける。  

 一方、センターでは「気持ちが優しい」と障害者との見合いを望む健常者が相次ぎ、清水さんを驚かせた。「通い婚や別居婚といった形式だけでなく、相手を選ぶ基準自体変わりつつあるのかも」 

 9月末、吉田さんは「おおらかさ」が魅力の大木さんから筆談でプロポーズされ、5年越しの婚活を終了させた。出会いから3カ月。式は来年6月に挙げるつもりだ。 

 大木さんは訴える。「パートナーがほしいと思っても、みんな障害のために自分のことで精いっぱいになりがち。一歩踏み出す勇気を後押しする人は多いほどいい」(山口恵共同通信記者)

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第1部 世界が変わる
第2部 生き方が変わる
第3部 日本人が変わる
第4部 資本主義が変わる
第5部 老いが変わる
第6部 働き方が変わる
①迷走する金融資本主義 ①見えてきた「生存」 ①ペンキ塗りの技伝える ①通貨暴落、住宅ローン倍に ①97歳の「出張授業」 ①海に生きる
②オバマに託す夢 ②「貧乏」を逆手に ②安い労働力、国外に求め ②「反資本主義」広がる支持 ②ボランティアで症状緩和 ②半農半X
③変革の裏側で ③女たちのルネサンス ③銀座に香港の「寿司王」 ③モノあふれ、価値観激変 ③バリアだらけで自立促す ③障害者の就労
④過熱した美術市場 ④「障害」を見つめる ④国籍捨て政治家目指す ④低価格車に誇り抱く ④ふれあう「命」支える ④派遣を超える
⑤砂漠の技術者 ⑤農村が都会動かす ⑤言葉の壁越え高校合格 ⑤大学起点に企業集団 ⑤技術が補う身体機能 ⑤面白法人でいく
⑥サムライ流多元主義 ⑥リアルを求めて ⑥ニューカマーが示す未来 ⑥目標捨てず、驚異の回復 ⑥山に生きる
⑦気付けば少数“先住民”
第7部 食が変わる
第8部 感覚が変わる
第9部 まつりごとが変わる
第10部 リサイクルが変わる
第11部 恋愛が変わる
第12部 権利が変わる
①中国ネット企業が養豚参入 ①体験と結び付き記憶に ①旋風過ぎ、残る重圧感 ①下水道から黄金取り出せ ①おせっかいかもしれないが ①裁判が認めた風景の価値
②資源も収入も減る一方 ②体震わす文脈なき歌詞 ②ネット選挙“加速”へ ②バイオ燃料、起点に循環 ②トラブル避けて出会い模索 ②納得して死んでいきたい
③「いただく」を実感 ③体との境界あいまいに ③投票率上がれ、学生奮起 ③鉱山技術で資源回収 ③わが子思い仲介に奔走 ③機関投資家の責任重く
④実態伝えぬ自給率 ④心の在りかの謎が再燃 ④初めて棄権、次は民主も ④大打撃の中古車ビジネス ④「光の出会い」幸せつかむ ④国際化の波、家族観にも
⑤捨てない努力が根付く ⑤想像し、深く感じ取る ⑤共感力失い政権転落 ⑤古民家を離島体験の拠点に ⑤彼女は画面に映るキャラ ⑤吹き荒れる逆風、でも…
⑥1日300錠の“食事” ⑥本をちゃんと届けたい ⑥性を超え、結婚を超えて ⑥“自主カメラ”急増中
⑦栄養の謎に挑む研究者 ⑦長距離ドライブを相乗り